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黄泉がえりの東條英機  作者: 広田昭和
66/81

第66夜 南遣艦隊

「東條閣下、ご機嫌はいかがでありますか。」


「頗る良い。」


「それは、良かったであります。」


「最近は、随分と事務的になっているね。私の話は面白くないかね。」


「そんなことはありません。興味深くきいております。」


「それでは、話すぞ。」


「どうぞよろしくお願いいたします。」


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 昭和17年1月15日02:10。南部仏印カモー岬沖100km。大日本帝国海軍南遣艦隊は、北緯7度32分、東経106度86分の作戦地点Eに差掛っていた。

南遣艦隊旗艦 巡洋艦最上の艦橋。


「艦長、間もなくE地点1カイリ前です。」


「了解。転舵する。針路320度。」


「針路320度。面舵15。ヨーソロー。」


「針路320度。面舵15。ヨーソロー。」


操舵手が舵を切る。5分経過。


「針路320度。面舵15。ヨーソロー。」


 操舵手が舵を元に戻し、報告する。

 艦長曽爾章大佐が航海士に注意する。


「これより敵航空勢力圏に入る。対空警戒を厳にせよ。」


「対空警戒厳にせよ。」


 すでに、フィリピン沖から対潜警戒は採っている。


「果たして、インドミタルはいますかね。」


 参謀長澤田虎夫少将が言った。後から来るシンガポールに向かう第一航空艦隊のことを言ったのだ。


「いる方にビール10ダース。」


 小沢治三郎司令長官が賭けを誘った。


「それでは、私はいない方に1ダース。」


「お二人とも好きですな。」

 

 艦長曽爾が呆れた。

 南遣艦隊(司令長官小澤治三郎中将)は、南方作戦を完遂するために編成された艦隊である。今回は、陸軍と海軍の協定によりマレー上陸作戦の陸軍輸送船を護衛する任務を与えられた。

 南遣艦隊は、E地点を15日02:13通過。

 その編成は、巡洋艦5隻、駆逐艦10隻、巡洋艦香椎、海防艦占守、特設砲艦金剛山丸、掃海艇2隻、潜水艦2隻 計22隻。

 陸軍輸送船隊:シンゴラ上陸部隊(第五師団主力):竜城丸他9隻、パタニー・タバー上陸部隊(第五師団安藤支隊):宏川丸他5隻 コタバル上陸部隊(第十八師団侘美支隊)淡路山丸他2隻、合計19隻

 

 第一航空艦隊は、E地点を15日23:30通過。

 第一航空戦隊(南雲忠一司令長官直率)の編成:空母赤城・加賀、第五航空戦隊(司令官:原忠一少将)空母瑞鶴・翔鶴蒼龍・飛龍、第3駆逐隊:汐風・帆風、第三戦隊:戦艦金剛・榛名・比叡・霧島、第16戦隊:足柄・長良・球磨、第17戦隊:厳島・八重山・辰宮丸 第5水雷戦隊:名取 第5駆逐隊:朝風・春風・松風・旗風 第22駆逐隊:皐月・水無月・文月・長月、第1潜水隊:伊15・伊16・伊17、メルシン上陸部隊(第14軍):崎戸丸(9245t)、相良丸(7189トン)、讃岐丸(9246トン)、讃岐丸(9246トン)、粟田丸(7398トン)、長良丸(7149トン)合計34隻 

 

 この日、13:30頃、英大型機1機が輸送船団に接触偵察を開始した。

陸軍第22航空戦隊の1式戦闘機(隼)がなんとか撃墜しようと負ったが逃げられた。

この空中劇を見ていた澤田参謀長は、直ちに全艦隊に通報した。


「英空軍はわが艦隊を捕捉した。英空軍及び英艦隊の攻撃の可能性大。」


 艦隊ににわかに緊張が走った。

 上空には、南部仏印のフーコク島から海軍第22航空戦隊の96式陸上攻撃機が掩護している。

1月15日17:55、シャム湾中央。この日のコタバル海岸の日の入りの時間:18時9分。そろそろ日没である。


「艦長、1海里でG地点です。」


「了解、針路180度。」


「針路180度、面舵15度。」


 北西に針路を採っていた南遣艦隊は、巡洋艦最上を先頭に順次回頭を始めた。


「針路180度。」


「見張員、まもなく台南空の上空掩護は終わる。上空異常ないか。」


「上空異常なし。」


「艦長、コタバル海岸より距岸30km達着は、何時になるか。」


「航海士」


「0600丁度であります。」


 G地点で、シンゴラを目指す山中中将師団長の座乗する竜城丸他9隻と巡洋艦鈴谷・軽巡洋艦川内・駆逐艦磯波・浦波・敷波・綾波、パタニー・タバーを目指す第五師団安藤支隊の宏川丸他5隻と巡洋艦熊野・駆逐艦叢雲・東雲・白雲、コタバルを目指す第十八師団侘美支隊の淡路山丸他2隻と巡洋艦最上・三隈・駆逐艦吹雪・白雪・初雪・巡洋艦香椎・海防艦占守・特設砲艦金剛山丸・掃海艇音羽丸・掃海艇留萌丸・伊123・伊124 これらがそれぞれ分岐して目的地を目指した。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 もうじき就寝の時間ですから今日はここまでとしましょう。

 続きはまた、明日、お話します。おやすみなさい。



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