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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第4章 セントフィル都市連合編 ~俺もそれなりに強くなります~
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第86話 第4の聖獣 ユニコーン

 



「では、保有者(・・・)

 カカカカカ

 死ね」


 え?


 俺は何も動けなかった。

 動いたのは、ユニコーンとレイだ。


 言うなりユニコーンは

 口から火の弾を放つ。


 一方レイは

 ユニコーンの言葉を聞き終えるより先に、

 距離を詰めるために踏み出す。


 高速で飛来する火の弾を

 レイが切り捨てる。


 そのまま、

 2歩で距離を詰め、

 ユニコーンに斬りかかる。


 ユニコーンはレイの剣を

 器用にその大きな角で受け止めた。


「カカカ

 やるな娘

 だが、なぜ斬りかかれる(・・・・・・)?」


「何を意味の分からないことを言っている!?」


聖獣(・・)である我を前にして

 なぜ!?」


 ユニコーンはレイとの会話をするというより

 自身に問いかけているように言う。


 つばぜり合いは、

 一端両者が後方に下がることで解消された。


 しかし、

 聖獣とレイの持つそれぞれの疑問は解消されない。


 レイが、おそらく遠距離からの攻撃をしているのだろうか。

 時折ユニコーンのいる付近の地面が(えぐ)れる。

 少しずつ両者は距離を立ち位置を変えていく。


「ナツキ、下がっていろ」


 レイの言葉に素直に従う。

 俺ができることはない。

 レイの速さに対応しながら援護するのはさすがに無理だ。


 しかし、

 このユニコーンは俺に死ねと言った。

 ということは、

 そう言うことなのだろう。


 恨まれる覚えはないが、

 とにかく敵であることには間違いない。


 ならば、倒さなくてはならない。


 戦いを見守りながら

 何もできない、

 足手まといにしかならない

 自分を情けなく思った。




 ***********




 ナツキが離れたことを確認したレイは、

 意識を目の前の敵にのみ絞る。


 一歩踏み出し――

 加速、

 ――さらに一歩――

 加速


「【晴風(はれかぜ)】」


 鋭い剣撃が飛ぶ。


 ユニコーンは危なげなくそれを躱した。


 ナツキに対する明確な殺意

 それを確かに感じ取ったレイは、

 本気でユニコーンに斬りかかる。


 10連撃――

 以前とは一線を画す速さの斬撃が

 右から左から

 上から下から

 ユニコーンへと襲い掛かるが、

 ユニコーンは器用に角でそれらを弾いていく。


 その連撃をもってしても

 ユニコーンの角には

 傷一つつかない。


 またしても両者はつばぜり合いになる。


「なぜナツキを狙う!?」


「カカカ、

 邪魔立てするな

 ヒトの娘よ

 さすれば貴様の命はとらん」


「質問に答えろ!」


「カカカ

 強情な

 それにしても我の“言葉(・・)”にも従わぬか」


 会話は不毛だと判断したレイは

 ユニコーンの腹部へ強烈な蹴りを入れる。


 が、纏っている炎が、

 その蹴りを止めた。


「ッチ!!」


 ユニコーンに“接触”した瞬間、

 ユニコーンは衝撃を受けたように固まった。

 そのまま動かない。


 その間に、数歩下がる。

 レイの足は

 赤く焼けていた。


 レイはすぐに剣を構え直す。

 が、ユニコーンは未だ立ち尽くすだけ。


 いっこうに動こうとしない。

 そしてユニコーンは

 口を開いく。

 出てきた言葉は震えていた。


「カ、カ、カ、

 まさカ、

 まさかそんなことがあるのか!?

 いや、あるのだろうな…………

 カカ」


 焦点が定まっていなかった目が

 次第に輝きを増す。

 その眼に映るのは、

 レイだ。


 敵を訝しみ、レイは一層警戒する。


「カカカカカカカカカカカカカカカ!!!!!!!!!!!!!

 継承者(・・・)までこの場に揃うカ」


 先ほどまでナツキにのみ向いていた殺気が、

 明確に自身に向いたとレイは感じた。


 それ自体は悪くない(・・・・)

 このユニコーンはおそらく強い。

 ともすれば、最悪の事態が考えられる。


 その際は、ナツキのみ逃がせればいい。

 そんなふうに考えていた。

 考えがレイの中にはあった(・・・)


「そうか、そうか

 継承者――

 何年ぶりカ」


「訳の分からない事を!!」


 剣撃は角で防がれ、

 蹴りは炎で防がれた。


 苛立つ頭を冷静に、

 次の一手を模索する。


「カカすべてに合点がいった

 なぜ貴様には“()”が通じないのカ?」

「なぜ貴様はその男を守るのカ?」

「なぜ貴様は後ろの男と共に戦おうとしないのカ?」


「カカカ、

 それは貴様が継承者(・・・)だからだ!」


 そう言ってユニコーンは、

 レイを、レイの瞳を見つめる。


「ああ、

 継承者(・・・)は皆同じ“()”をする

 思い出してきた

 カカカ

 その()、確かにそうだ」


 人でいえば、にやりと笑うが適切だろう。

 ユニコーンは白い歯を見せながら、

 レイを品定めするように見続けた。


「カカわかるぞ

 貴様、その男を守っておるのだろう」


「……」


「なぜだ?

 理由が言えるカ?」


 理由――

 助けられた恩を返している。

 守りたいと“心の底(・・・)”から想っている

 それで十分

 それ以上でもそれ以下でもない


 そんなこと言われるまでもなく――


「守りたい

 そうではないカ?」


 ――心が読まれた!?

 いや、今の立ち位置を見れば、

 少し考えれば、誰にでもわかることだ。


 そう言い聞かせ、

 レイは自身を落ち着かせる。


継承者(・・・)は皆口を揃えてそう言う

 過去例外はない

 カカカ

 それが、ティアマト因子(・・・・・・・)の影響であるとも知らずに」


「……ティアマト……いんし?」


 聞きなれない言葉は、

 しかし、レイに懐かしさ(・・・・)を抱かせていた。


「それを受け継ぐ者は“保有者(・・・)”を守る

 それが身体に刻み込まれている。

 そうだな、“使命”とでも言い換えようカカ」


 レイは、ある単語に反応した。

 無意識に反応してしまった。


 それは、

 剣を学び始めるきっかけにもなった

 あの出来事でも言われた言葉だ。


 それをユニコーンは見逃さない。


「カカカ、

 “使命”に思うところでもあったカカカ」


「……セシリアはお前とは違う」


 冷静に、レイは言ったつもりだった。

 しかし言葉は少し震えている。


 たまたま同じ言葉を使われただけ。

 それだけだ。

 そうレイは納得しようとする。


 だが、それはレイにさらなる混乱をもたらす。


「……セシリア……

 ああ、

 カカカ

 あやつカ

 確かにセシリア・オルト・ハーメリック

 ヒトの救世主なら貴様のその片鱗を感じ取っていても不思議ではないな

 カカカ

 奴はヒトの中でもっとも我々“()”に近いからな」


 セシリアがハーメリック!?

 それに救世主とは確か八大英雄の一人“勇者”の別称だ。

 なら勇者ハーメリックがセシリアだと!?


 そんなバカな!



「これで分かったであろう

 貴様にその男を守る明確な理由などあるわけがない

 カカカ

 因子によって貴様はその男を守る

 そう意識させられているに過ぎない。

 貴様も思い当たる節があるのではないのか?

 その男を死んでも守りたいと急に思い始めた

 そのようなことがな」


「なにをいっている?

 私は……

 ナツキのことが――」


「好きか!?

 あのような冴えない男を!?

 貴様の様な娘が!?

 不釣り合いにもほどがあろう

 カカカ」


「……」


異物(・・)に、保有者(・・・)に、継承者(・・・)

 カカカ

 これで我も神獣へと至れるであろう

 カカカ

 愉快愉快

 カカカ」


 混乱する頭を抑える

 今は目の前の敵に集中しなければならない。


 レイが剣を握る手に力を入れる。


「カカカ

 真実を知っても挑んでくる

 ティアマト因子の継承者は皆そうであったな

 これも因果カ」


 ユニコーンの纏う炎が勢いを増す。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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