第75話 兄妹の再会
先生、
リーナ先生は“リア”と
リアと確かにそう言った。
リア――それは俺の知るリアと同一人物なのだろうか?
「その、
もしかして、
帝城でメイドとかしてたりすることってありませんか?」
言葉がおかしくなったが
構うことはない。
「帝城か
それはないな」
「おおっ
ってレイ!?
いつから?」
背後からの声に振り返れば、
真後ろにレイがいた。
「いや、さっきからいたぞ」
え?全く気が付かなかったよ
気配消すのやめてよ
心臓に悪いからね
「帝城、
つまりガイナス帝国の城ということだな?」
「う、うん」
そういうことになるかな
皇帝陛下も住んでいたみたいだから
「ならありえんな
感応者が仮に制御を覚えられたとしても
高位の魔法師ならば一瞬で見破れるだろう」
そういうものなのか。
「それにリアという名前は珍しいわけではないしな」
ぬか喜びさせてしまっただろうか?
リーナ先生をみると
別段気にしている風ではなかった。
「す、すみません」
「いえ、大丈夫です
何かあればお願いしますね」
「はい、もちろん」
後ろ髪をひかれながらも、
レイとシーナとテントを出る。
「あ、レイ
シンは?」
レイが来たということは
シンも来ているのか?
「そこに寝かせてある
かなり疲れていたみたいだからな」
「シン兄!!」
こらこら
そんな走ったら危ないぞ。
シーナは寝ている兄にダイブ。
シンも何事かと起き、
シーナがいることに気が付いた。
「シーナ!!」
「にいぢゃん」
いや~感動だな
辺りの騎士や少女が何事かと二人を見ている。
まぁ今くらいは好きにさせてやろう
近づいてきた騎士に平謝りをしながらそう思った。
**********
ナツキとレイと別れたセシリアは
世話係の女性――サシャに尋ねた。
「どう?」
「今回摘発が7か所
いずれも感応者の密売が確認されています
他には禁止薬物、武器や貴金属類です
密売人等は合計28名拘束、11名死亡」
「感応者は?」
「合計25名保護です」
今回の摘発は感応者を助けるためのものではない。
セシリアにとっては、
ユリアを売買しようとした
真の黒幕を暴くための手段の一つに過ぎなかった。
「裏は取れそう?」
「厳しいかと。
全ての感応者とユリア様の最終的な行先が
全てフェニキア州であることは掴めますが……」
「その後?」
「はい、
フェニキア州とシェルミア王国とのつながりが証明できません」
「っち
フェニキアなんてシェルミアの属国のようなもんじゃない」
大きく動いて何もつかめなかった。
これはマズい。
いや、なにもつかめなかったわけではない。
真の黒幕が99%シェルミア王国だということは分かっているのだ
ただ証拠が足りない。
「ユリアは国に帰すわ
あんな国でもここよりはマシよ」
「はい手配します」
「護衛は私が探すわ
他は信用できないから」
今回の一件にしてもそうだ。
エルタニア王国の護衛程度では
護衛が務まらない。
「シェルミアの様子は?」
「西方で動きがあったようです
詳細は掴めていませんが」
シェルミア王国では
約半年前にクーデターが起きていた。
その際、第一王子がクーデターに巻き込まれ危うく死にかけたらしい。
他にも第三王子が襲撃され行方不明、第3王女、第4王女も同様だ。
これら3人は第一王子派といわれる陣営に与している。
公にされていないが、第一王子と第二王子で
どちらが後を継ぐのか水面下ですでに継承争いが始まっている。
クーデターは
現国王に不満のある騎士や国民が
主導したと言われているが
実際は第二王子陣営の差し金だろう。
第一王子の暗殺に失敗し、
その後事態は膠着状態らしいが
今後どうなってくるのかわからない。
そんな国のことはどうでもいいが、
問題はセシリアにとっての兄、ユリウスのいる部隊が第二王子陣営に近いということだ。
感応者や武器などは布石の一つだろう。
そしてユリアやユリウスは
セシリアへの交渉材料の一つかもしれない。
「潰すか」
「セシリア様、
短絡的な思考はおやめください」
「っち」
そんな話をしていたとき
ナツキの助け出した少女と身内だろう少年の歓喜する声が響いた。
「感応者はどうするの?」
「ランデン州のエルタニア王国駐屯地で預かることになりますが」
「そう
今回の感応者は合計24名
いい?」
「それは――
いえ、わかりました」
「ユリアと一緒にエルタニアに行ってもらおうかしら
ナツキと相談ね」
他人を気にするセシリアは久しぶりだ。
サシャはそう思い、セシリアの提案に従った。
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おはよう、諸君
いい朝だね
ん?もう昼過ぎだって?
そんな細かいことは気にしないさ。
思えばイリオス州に来てからまだ二日しか経っていないのだ
2日しか経っていないのにもう数週間過ごした気分だ。
何より濃すぎた2日だった。
なぜ気分がいいのか
それはシンとシーナのことだ。
なんとあれからセシリアが
自分の妹とエルタニアとかいう国に来ないかと誘っていた。
エルタニアってどこ?って話だが、
とにかく助かるらしい。
エルタニアよりさらに東の方にアスナ共和国という国が
あってそこにセシリアの知り合いの魔法師がいるそうだ。
なんでも超すごい魔法師らしい
その魔法師に魔力制御の仕方を学んでみたらとも話していた。
初めは俺もついて行こうかと思ったが、
セシリアに止められてしまった。
彼らには彼らの人生があると。
まぁなんにしてもよかった。
他の感応者の方もエルタニア王国駐屯地で暮らすそうだ。
エルタニアっていい国だな。
そしてさらにうれしい話が!!
なんと今回の密売の摘発で報奨金を受け取った。
レイが驚く金額からしてかなりの額だろう。
いいことをするって気持ちがいいね
これで暮らしに余裕ができるってもんだ
いや働くよ
しっかり働くけどさ
もっていて悪いものじゃないだろ!?
このお金は、本当は
密売されていた感応者を保護という形で保有することができたエルタニアの“気持ち”であった。
正規で購入するよりもかなり安く感応者を手に入れられたことに対する“お礼”である。
セシリアの色も入ってかなりの額になったというわけだ。
しかし、そんなことを知らないナツキは
小金持ちになりウキウキであった。
知らないとは罪である、
ナツキが気が付くのはまだ先の話だ。
今日は午後からセシリアの紹介で
魔法学校に行くことになった。
シーナはもう少し検査があるみたいだ。
シンは当然シーナと一緒。
晩飯は一緒に食べる約束をしたから
その時に会えるだろう。
というわけでまずは学校だ。
俺がこの国や魔族のことを知りたいとセシリアに話したら
そう言うことは学校で聞くのがいいと言われた。
おお、学園編開幕か!?
と期待したがそんなことはない
各学校では、カリキュラムに奉仕活動というのがあるそうだ。
学校で学んだことを生かして社会貢献をする時間。
これが各学年決まっているらしい。
よって専門家ではないが、
学生にいろいろ教えてもらえる仕組みがあるらしい。
それを利用してはどうか?との提案だ。
俺は喜んで賛成した。
セシリアの知り合いの子を紹介してもらえることになった。
イリオス州立中央学校
俺たちはそこへ向かった。
お読みいただきありがとうございます
今日も晴れ




