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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第4章 セントフィル都市連合編 ~俺もそれなりに強くなります~
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第74話 感応者

 



 イリオス州

 エルタニア王国保有の会館


 話せばわかる!

 これが一番大事



 セシリアが呼んできたという騎士と一緒に

 体育館のような場所にやってきた。

 時刻は明け方。

 空がうっすら白み始めていた。

 たぶん5時くらいだろうか

 時計が欲しいな。


 ここまでの騎士や周りの様子から

 今いる国と、騎士の所属している国は違うようだった。

 とするとここは大使館のような場所なのだろうか?



 ともあれ、ここで今、

 俺は簡易ベッド作製のお手伝いの真最中。

 レイはシンを呼びに行っている。

 セシリアは騎士の人たちとどこかへ行ってしまった。

 あとでしっかりお礼を言わないとな。


 捕らわれの少女は一箇所に集められていた。

 体育館の奥で座っている。

 唯一の例外はシーナだけ。


 シーナはというと

 俺から離れない

 のでおんぶしている。


 これが実は結構な重労働。

 俺は自慢じゃないが肉体派ではない。

 アニメと漫画を愛するインドア派なのだ。




「よし、完了だな」


 最後のベッドを作り終えた。


「あのーっと」


 振り向きつつ、

 騎士の人を呼ぼうとすると

 女性とぶつかりそうになった。



 小走りの女性は俺に目もくれず、

 奥の少女たちの下へ直行。


 危ないなぁ~

 俺はともかくシーナに当たったら大変だ。

 まぁこんなところで少女をおんぶするな

 と言われれば反論のしようがないが。


「リーナ先生、

 まずは仕事お願いしますよ」

「ちょっと待ってもう少し」


 リーナ先生と呼ばれた女性は、

 少女を一人ずつ観察しているようだ


 あの女性は医者なんかな?

 白衣着ているし。

 ならなおさら仕事をしてほしい。

 いやじっくり見ているのは、

 もう仕事の内なのかもしれない。

 ヤバそうな子から先に治療、的な感じかな



 少しして簡易テントの中で一人ずつ医師による診察が始まった。

 シーナの順番は最後だ。

 集団から離れた場所にいたからだろう

 悪いことをしたな


「次の方」


「は~い」


 返事はもちろん俺だ。

 いやシーナが離れてくれないのだ


 決して少女の診察を覗くとかそういうのではない。

 神に誓って!


「えっと……」


「あ、どうも

 よいしょっと

 お願いします」


 シーナを先生の前の椅子に座らせた。


「大丈夫、外で待ってるから」


 テントの外に出ようとするも袖をつかんで離してくれない。

 参ったな。

 モテキがこんなところで到来とは(笑)


「大丈夫ですよ

 目を閉じていてください」


「あ、はい」


 そうだな。

 確かにそれで解決だ。


 待つことしばし。


「終わりました。

 身内の方ですか?

 足や腹部に打撲と内出血が数か所ありますが、

 命に別状はないでしょう

 治癒魔法をかけておきますね」


 おお、この世界の医療技術は

 どんなもんかわからないが、

 診察の後、魔法ですぐに直せるのはいいな。



「ありがとうございます

 でも身内じゃありませんよ

 たまたま知り合った少年の妹だっただけでして」



 はははっと笑って話したら

 それはもうたいそう驚いた的な表情をされました。

 いや、先生、

 女性がそんな口を大きく開けるモノじゃありませんよ


 てかなんかへんなことを言ったのだろうか?


「えっと、あの~

 変なこと言いましたか?」


「あ、あなたはその子が感応者とわかっていて……」


 ここでいつもなら

 もちのろんですよ!

 と言っていたのだが、

 ちょうど今はレイもセシリアもいない。

 これはチャンスなのだ!


「あの!

 実は不勉強でして感応者について詳しくお願いします!」


 日本式オジギ

 90度で頭を下げ、

 お願いをした。


 先生とシーナに不思議そうな顔で驚かれ、

 そのあと先生には出身を聞かれた。


 山奥で人がいなくて、最近都会にやって来た的な話をして

 ようやく先生から“感応者”について教えてもらった。




 感応者

 感応者と呼ばれる子供が誕生し始めたのは

 今からおよそ20年ほど前のことだそうだ。

 これには諸説あるらしい。

 でも一般的には第2次人魔大戦の最中だと言われている。

 当時は

 神に愛され過ぎた子供

 魔の呪いを受けし子供

 などと呼ばれていたそうだ。



 感応者の特徴は

 莫大な魔力量、

 圧倒的に低い魔力抵抗、

 高い魔力呼応性、

 そして女の子

 この4点だ



 生まれながらにして通常の100倍から

 時には1万倍の魔力をその身に宿して生まれてくるそうだ。


 そして、圧倒的に低い魔力抵抗。

 これは他者への付与魔法の効果が半減しないことらしい。

 そういやイブさんが言ってたっけな。

 人にはそれぞれ固有の魔力波長があって

 その所為で他人の魔石の魔力を使うと効果が下がるって。

 つまり感応者の魔力は誰でも使えるオールマイティってことか。


 そして魔力呼応性。

 これは魔法との親和性が高いゆえ、

 魔物を引き付けやすいらしい。


 最後に感応者はみな性別が女だそうだ。

 そして少女が多いのはだいたい5歳までには捕らえられるため。

 最前線に出るため戦死する者も多いとか。





 ここからはあまり気分のいい話ではなかった。

 この性質に目を付けたのが人類連合であり、教会だ。

 第2次人魔大戦の終盤、

 各国が疲弊し消耗する中、

 3歳の感応者が身体強化の魔法をある騎士団にかけたそうだ。

 するとその騎士団は魔族と苦戦しながらも戦えたそうだ。

 この話はすぐに連合の中で広まり、

 感応者狩りが始まった。


 時を同じくして、

 教会が宣言を出したそうだ。


 感応者はヒトに非ず、

 神から与えられし人類の武具、

 魔に染められし悪鬼、

 人を高みへと導く使命を負った亜人


 そのようにして世界に広まったそうだ。

 教会とは神の御使い、神託を預かる機関らしい。

 宗教とは違うと説明されたが、

 いやそりゃ宗教だろ。

 まぁ置いておく。


 そんなわけで感応者は

 今でもヒトではなくモノとして扱われているらしい。

 なんとも理不尽なことだ。



「なるほど、よくわかりました

 いや~悩んでいたことがわかってすっきりしました。

 気分はあまり良くありませんが……」


 そう、問題はシーナだ。

 今でも感応者は対魔族戦においての切り札として

 人類連合が全保有権を有しているらしい。

 教会が全感応者の保有権を持っていて、

 それ貸与しているカタチだそうだ。


 いやそもそも保有権ってところからしておかしいのだが。


「シーナをどうにかする方法はありませんか?」


「……あなたは身内ではないのよね?」


「ええ」


「身内なら一緒に逃げる

 それ以外なら見捨てるしかないわね」


 見捨てるか……

 それにしてもこの先生は結構まともだ。

 騎士の人やここに来るまでにすれ違った街の人の様子を思い出す。

 それは悪意のあるかのような目つきで少女たちを見ていたのだ。

 話を聞いた今だからこそ、その理由がわかる。


「ありがとうございます

 少し考えてみます

 いや~それにしても先生がまともそうな人で安心しましたよ」


「えっ?

 私が……まとも?

 初めて言われたわ」


「え?そうなんですか?」


「私はどちらかといえば、

 おかしい部類の人間よ

 身内に感応者がいたってだけの話」


「身内ですか?」


「ええ、娘がね。

 6歳のまで育てられたんだけど、

 ある日、騎士に奪われたわ


 もう少しだったのよ

 あともう少しで魔力制御ができて、

 それで――」


 悲痛そうに淡々と先生は話した。


 感応者は魔力量が多いゆえに

 魔力がかなり漏れ出るらしい。

 魔力をコントロールできる6、7歳になると

 その量をゼロにはできないもののかなり抑えられるらしい。

 娘さんもあと少しだったそうだ。

 先生はある日急に娘さんの魔力を感じなくなり、

 あと少し、そう喜んでいた矢先に

 村にどこぞの騎士団が来て、娘を攫われたそうだ。


 なんて理不尽な世界なんだろう。


「それは――」


 言葉が続くはずがない。

 俺が何を言っても軽い言葉にしかならない。


「私はまだあきらめていないわ

 必ず娘を探し出す」


 頑張ってください

 この言葉は違うな。


「俺に、

 出来ることがあれば言ってください

 出来る限り協力します

 そういえば娘さんの名前はなんて言うんですか?」


「ありがとう

 貴方に心から感謝を」


 両の手を顔の前で組み一礼。

 こちらの世界でのお礼のポーズだろうか?


「娘の名前はリアです」




 先生、リーナ先生はそう言った。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ


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