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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第4章 セントフィル都市連合編 ~俺もそれなりに強くなります~
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第70話 俺と人さらいと感応者 前編

 



 最悪だ。

 天気の話でも体調の話でもない。

 気分の話だ。


 俺は結局、

 いろいろ考えてしまって寝れなかった。


 亜人、魔族、黒人、ヒト

 よくわからない。


 そして、

 あの広場でのことを思うと今でも吐き気がする。


 そんな俺を見かねて、

 レイは提案してくれた。


 郊外を歩いてみよう、と。


 俺もそれに賛成した。

 いい気分転換になるだろう。


 こんな気持ちでハローワークにいっても仕事なんか手に付きそうにない。

 面接で落とされるのが関の山だ。

 面接があるのかはわからないが。



 待てよ、2人で郊外をただ歩く。

 これはまさかアレか!?

 俺には縁がないと思っていたアレか!?

 そう、デートだ!


 そう考えると気分が盛り上がってきた


「ナツキ、行こうか」


「おう!」


 宿を出て、郊外に向かって歩き出す。

 すると香ばしい匂い俺を刺激した。

 宿の斜め向かいの屋台からだ。


「あっ」


「ん?どうした?」


「いや、

 そういえば何も食べてなかったなって」


 空腹を感じる。

 まぁ、いいことだ。


 売店で串焼きのようなものを買った。

 もちろんレイの稼いだお金だ。

 うん、早く働かないとな……

 レイに愛想を尽かされるまえに


 相変わらず人の多い通りを歩きながら、

 アツアツの串焼きを頬張る。


「美味い!」


 なんというか初めての食感だ。

 弾力があって

 噛めば噛むほど味が出てくる。


「ナツキはこういうの初めてか?」


「ん?」


「魔物の肉だ」


 ……まぁ、郷にいては郷に従え

 美味いものはうまいのだ




 ****



 ラルフ山のすそ野に来た


 もう少し西に行けば、イリオス迷宮があるらしい。

 ぜひ行ってみたいものだ。


 東に行けば、ニーサ州という別の都市がある。


 芝生の上に寝ころぶ。

 昼前で、辺りに人は見当たらない。

 ときどき馬車が通るくらいだ。


 時折、いい感じに風が吹き抜け、

 太陽は爛々と輝いている。

 夏のような日差しだが、

 じめじめしているということはなく過ごしやすい。


 大の字になり、

 レイと他愛無い話をしていると、


「血のにおいがするな」


 ほう。

 レイにはそんなこともわかるのか。


 緑のいい匂いしかしないけどな。

「どこらへん?魔物かな?」


「向こうからだ。

 こちらが風下になっているからな」


 ということで見に行くことになった。

 本音はあまり行きたくない。

 昨日の今日で“血”はもう見たくないからな。


 でも、手負いの魔物が人を襲ったりしたら大変だ。


 歩くこと10分ほど。

 すそ野と森の境目付近。

 このあたりでも魔物はでるらしい。

 やはり手負いの魔物か!?と思ったが違った。


 木にもたれかかるように少年がいた。

 額からは血を流している。



 レイが素早く駈け寄る。

「生きているようだな」


 少年の身体を看ているようだ。

 少年はみすぼらしい服――

 否、布を羽織っているような状態だった。


「ひどいな

 腹部に大きな痣ができてる

 骨が折れているかもしれない」


 少年は重症だった。


「レイ、その……」


 俺は、できればこの少年を助けたい。


 魔石はいざという時のために道中で購入していた。

 もちろん多くはない。

 それに使えば壊してしまうということも変わらない。


 でも、見捨てるのは違うような気がした。


 いろんな人に助けられてきた。

 それを自覚してからは、

 出来る限りは人助けをしたいと思っている。

 ただ、できることとできないことは十二分に承知している。


 ここは異世界だ。

 いつも他人を心配する余裕のある場所じゃない。



 でも

 目の前にいる助けられる人は助けたい。



「ああ」


 一言。

 レイは頷いてくれた。


「ありがとう」


 さっそく

 少年の身体に手を置く。


 使うのは今まで使い慣れた魔法だ。


 《回復魔法》


 少年が淡い光に包まれる。


「ん?」


 淡い光は、少年の全体(・・)を包み込む――

 はずだった。


 が、淡い光は、次第にその輝きを失っていく。


 見れば、少年の傷は、

 良くは、なっていた。


 が、完治ではない。

 光に包まれた範囲のけがは治っているが、

 包まれなかった範囲の痣や出血はそのままだ。



 魔法が十全に働かなかったのだ。

 これは以前に経験がある。

 魔法で火球を作った時だ。


 俺は案の定、

 魔法使用の副作用に襲われ、

 身体が動かせなくなった。


 少年の隣で空を仰ぎつつ、考える。


 魔法のことについて。


 あれから火球をもう一度作り直すことはしてはない。

 MPのようなものならもう回復しているだろうから使えるのだろうか?

 それとも回数制限があるのだろうか?

 はたまた別の条件のようなものがあるのか?


 なんにしても魔法が使えなくなりつつあるかもしれない。

 これは問題だ。


 思えば、この世界の魔法についても全く知識がない。

 魔法のことはイブさんに聞いたきりだったからな。

 早いとこそういった知識を仕入れないと。

 そうそう厄介事に巻き込まれないとは思うが。


 魔法について調べること

 これを今後の大きな活動方針のひとつとしよう。




「んーがっ!

 げほっげほっ」


 おお、少年が目覚めたようだ。


 周囲に魔物などがいないか確認していたレイもちょうど戻って来た。


「少年、大丈夫か?」


「え、は、はい」


 美少女レイさんの問いかけにはさすがの少年も赤くなってるな。


 とりあえず、

 しゃべるのも億劫な俺は、

 2人の話を聞くことにした。

 だいたい身体は動かせるまでにはなったが、

 だるさは抜け切っていていない


「こんなところでなぜ倒れていた?」


「あ!!

 い、妹を!妹を取り返さないとッ!」


 少年は立ち上がろうとするが、

 うまくいかない。

 どうやら俺の回復魔法の範囲に足が入っていなかったようだ。


「人攫いか?」


「妹が、感応者で、

 いきなりあいつらが襲ってきて――」


 よくわからないフレーズが出てきた。


 “かんおうしゃ”


 完王者!?いや感応者かな。

 まぁ置いておいて、

 どうやらこの少年は妹を攫われたらしい。

 誘拐事件だな。


 悲しいかな、

 異世界では日常茶飯事のようだ。

 なんてたって、

 俺も攫われたことがある。

 自慢じゃないがな(笑)


「感応者か……」


「妹を――

 シーナを助けないと」


 少年は拳を地面に打ち付け、

「クッソ」

 涙が頬を伝って落ちた。


 気持ちは分かる。


 俺もレイを取り戻せなかったらと考えると――


 どうしようもない気持ちが沸き上がってくる。



 何か声を掛けないと、

 俺が口を開こうとすると

 レイに先をこされた。


 まぁレイなら優しく慰めてくれるかな

 だが、俺の小見とは裏腹に――


「感応者なら仕方ない

 あきらめろ

 きっと人類の役に立つにはずだ

 兄として胸を張れ」


 え?

 どういうこと?

 おい!?おい!?

 人類の役に立つ?

 胸を張る?


 あきらめる?


 あき……らめる?


 秋?らんめり?


 意味が分からん


 レイがあきらめろと言ったのか?

 本当に?

 妹を攫われた兄に対して!?


 まさか……

 妹だぞ

 肉親だ


 意味が分からん



「ちょ、ちょっと待ってレイ

 どういうこと?

 いや、人が攫われたのに……」


「感応者は感応者の時点で人ではない

 だから――」


「いやいやいや!

 待って!」


 大きな声が出てしまった。

 レイからその続きを聞きたくなかった。


 人でなくなる?

 兄にとって妹は妹だろ


 俺にも(スミレ)がいる。

 きっと今頃は行方不明の俺を心配しているかもしれない。



「……人が人でなくなるとか

 おかしいよ

 いや常識だとしてもさ

 その、感応者がイマイチよくわからないけど

 それでも、この少年の妹は妹だ

 妹ってのは兄にとってかけがえのない大切な存在でな

 いやもちろん家族的な意味でだけど

 あと、えっと人にはな基本的人権とかいうものがあって――

 それは誰しも生まれながらに持っていて――――

 それらが国とか人に保障されていて――――」


 自分でも何を言っているんだかわからない

 最後のほうは社会の教科書を思い出しながら。

 あの時もう少し勉強しておけばと思いつつ。

 この世界で人権など通用しないことも知っている。

 異世界には異世界の常識がある

 それは分かっているけど


 でも、

 それでも

 それでもだ!

 レイに、

 そんなふうに“人”を見てほしくない。

 これが俺のエゴだとわかっていても……


 次第に口をつぐんでいた俺にレイは一言。


「わかった」


 そして、少年に向き合って、

 頭を下げた。


「すまなかった

 先ほどの発言は撤回する」


「いい、みんなそう言うから……

 もう慣れた」


 中学生くらいの子供が

 そんなことに慣れるなよ


「名前はなんていうんだ?

 あ、俺はナツキだ」


「シン」


「そうか

 よろしくな、シン」


「レイだ

 シン、ナツキ行くぞ」


 ん?行く?

 えっとどこに?


 顏に出ていたのだろう

 レイは不思議そうに尋ねた


「シンの妹を助けに行くんだろ?」


「「え?」」

 俺もシンもびっくり、

 声がハモった


 んんんん?


 あーー

 先ほどの会話を脳内再生する。

 OK、OK

 さっきの俺の話を

 俺が妹さんを助けたいと解釈したのね

 OK


 もちろん俺も助けたいさ

 当然さ。


 でもね


 できることとできないことがある。

 あるのだが――


 少年は驚いたような、

 それでいて目の端に涙がたまっている

 そんな表情をしていた


 人さらいの連中と一戦……

 今更嫌だとは言えん。


 乗り掛かった船だ

 それにあまり悲観はしていない。

 セントフィル都市連合に来る途中、

 何度か山賊に襲われる度、レイは無双した

 俺のパートナーは強いのだ。


「お、おう。

 行こう」


 と思いつつも、穏便に済みますように

 そう俺は祈りながら、

 レイとシンとイリオス州に向かって歩き始めた。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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