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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第4章 セントフィル都市連合編 ~俺もそれなりに強くなります~
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第69話 セシリア・オルト・ハーメリック 後編

 



 連合軍選抜隊駐屯地


 エルタニア王国選抜隊駐屯区画

 中央指令部所


 現在、その場では、

 上級将校による作戦会議が行われていた。




「――――であるからして、

 総攻撃の時期は早いに越したことはない!」


 円卓に座る騎士や魔法師、役人が意見を言い合う。



「しかしですな、どの国も後進の人材育成の真最中」


「さよう、先の大戦の被害が大きすぎますな」


「しかし、それでは機を逃すことになる!!」


「先発隊は冒険者や傭兵に任せれば?」


「いっそ少数精鋭というのは!?」


「英雄の半数がすでにこの地を離れている。

 難しいだろうな」


「なんにしてもシェルミア王国次第というところでしょうな」


「確かに

 あの国が頷かなければ、

 連合軍は首を縦に振りませんからな」


 会議は紛糾していく。



 ********


 ちょうど同じ時刻、

 その中央指令所に1人の女性が向かっていた。


「どきなさいッ!」


 指令所の門番を一声で黙らせ、

 強引に扉をあけ、中へと進む。


 すれ違う人には、

 その殺気を放ち、

 通路を強制的に譲らせる。


 そして、奥の部屋。

 扉の前には騎士が2人いたが、

 構わず、強行突破。


 バンッ!!


 扉が大きな音を立てて開かれた。


「なんだ?」

「どうした!?」

「何事だ!?」


 会議中の役人は慌てる。

 一方騎士や魔法師は、落ち着いている。


 まるで何があったのかわかっているように。

 実際、凄まじい殺気を放つ高魔力の塊がやってくるのを感じていた彼らは、

 それが勇者のモノであると予想していただけであったが。



「これは!

 どういうこと!?」


 その人物、セシリアは机の上に一枚の紙を叩きつけた。

 それは先ほど、部下から届けられた一枚の書簡だった。


 その衝撃で円卓は半壊する。


「ユリアが売られたってどういうこと!?」


 凄まじい殺気で数人の役人はすでに気絶していた。

 口から泡を吹きながら。


「どう……とは……

 えっとですな……

 書簡の通りでしてな……」


 セシリアが受け取った書簡には

 以下のようなことが簡潔にまとめられていた。



 ユリア・バレック

 セントフィル都市連合への道中

 山賊の襲撃を受け、行方不明

 複数の売人より、ユリア・バレックが

 売買された可能性が高い

 すでにランデン州を()っているものと考えられる

 継続の捜索は困難

 理解されたし




「理解できるわけないでしょ!!」


 再び拳で円卓を叩きつける。

 今度は全壊した。


「勇者殿落ち着かれよ」

「それはいつの話ですかな?」


「10日前よ」


「ならば、まだ間に合いましょう」

「勇者殿ならば」


 落ち着きを払っていた老年の騎士と魔法師が

 勇者と話す。


「そうね。

 なら今から行くわ」


 踵を返し出ていこうとする勇者に

 役人は待ったをかけた。


「それは許されん!

 今、この地から勇者がいなくなるのは問題だ!」


 勇者は、セシリアは振り返る。

 その瞳からは熱が失われていた。


 周囲の温度が数度下がる。

 そんな感覚に騎士や魔法師は置かれた。


「あなたたちに許される必要はないわ」


「ハーメリック殿!

 勇者としての自覚を――」


「今ここで“勇者”をやめてもいいのよ」


 腰の剣に手をかける。

 周囲の魔法師や騎士も臨戦態勢となった。

 ある者は魔法の準備を、

 ある者は剣の柄に手を添える。


 セシリアと戦場を共にしたことのある者ならだれもが理解していた。

 この少女はいつだって本気であると。



「な!?

 今は人類が勝てるか否かの瀬戸際だ

 魔族が大人しくなったといっても、

 いなくなったわけじゃない」


「知ったこっちゃないわ」


「勇者殿!聞き分けてください

 よいではないか

 農民出身の娘一人くら――」


 セシリアの剣が鞘より少し出る。

 と同時に


 カチン、


 と鞘に収まる。


 一連の動作から生まれた斬撃が

 役人めがけ、一直線に向かう。



 いつの間にか役人とセシリアとの間に老年の騎士が割って入り、


「東海流秘技【水流】」


 セシリアの斬撃を、

 東海流の技を使いギリギリで受け流した。



 一瞬で今の出来事が起きた。

 これを理解できたのは、

 最前線に赴いたことのある人間だけだ。


 役人たちは何が起きたのかわからない。


 そして、

 当の役人は後方の壁にできた大きな斬り跡を見てようやく悟る。


 今、自分は斬られたのだと。

 そして目の前の騎士に助けられたのだと。


「ひっ」


 役人は崩れ落ち、

 そして失神した。



「勇者殿、

 休暇を申請してはいかがですかな?」


「休暇?」


「ええ、貴女は働き過ぎている。

 数ヶ月休暇を取ったのち、

 再び連合軍に合流するというのはどうですかな?」


「なら、そうしておいて」


 騎士や魔法師はほっと一息つく。

 誰しもあんな化け物と戦いたくない、

 そんな思いで心中一致していた。




 老年の騎士の提案により、

 対外的には勇者は休暇を取り、

 戦線を一時離脱したということになった。



 セシリアはユリアを探しに、

 セントフィル都市連合へ向かった。




お読みいただきありがとうございます!

今日も晴れ


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