第66話 迷宮と魔法研究の都市 “イリオス”
現在、俺こと相沢ナツキは、
現在セントフィル都市連合という国に来ている。
いきなり異世界に召喚され、
気が付いたら奴隷に。
危機を脱したと思ったら
今度は領主に喧嘩を売るという
超ハイパークレイジーハードモードな異世界生活を送ってきた。
領主に喧嘩とか、
もう、どうかしてるとしか思えない。
でも、後悔はしていない。
なぜならば!
そう!
隣にレイがいるからだ!!
あれから1ケ月、
俺とレイは一緒に旅をした。
ラープの街を脱出した直後のことは、
実は、あまり覚えていない。
レイにお姫様抱っこされて、
それはもう男としてはどうなの!?って感じだったが、
問題はその後だ。
俺は高熱で寝込んでしまったのだ。
数日間意識が朦朧としていたため、
あまり覚えていないのだ。
レイの話だと、
おそらく魔石の使い過ぎによるものだろうってことだ。
確かにあの一日でバカスカこれでもかというほど魔石を使った。
使い過ぎた魔石&お金に関してレイに謝ったら
構わない。また貯めれば済むことだ、と。
なんと男前なんだろう。
とにかく後遺症&副作用で俺は数日間使い物にならなかった。
もともと俺はこの世界の人間ではないので、
魔力とやらに身体が慣れていなくても不思議ではないな。
帝国でも似たようなことを言われたような気がするし。
ただ、結果として、またお荷物に逆戻りしてしまった。
なんとも情けない。
それから俺が回復するのを待って、旅が始まった。
ルマグ王国からできるだけ離れるために
東へと歩みを進めることとなった。
レイに育った街を離れることについて一度聞いたが、
笑いながら心配ないと言ってくれた。
生まれた国ではないし、
遅かれ早かれ街から出るつもりだった。
それにあの領主のもとにいるくらいなら一人で出ていった、と。
そして、ここが一番のポイントなのだが、
レイは確かにこう言った。
満面の笑みで!
ナツキと一緒にいられてうれしい、と。
これはもう、そういうフラグだよね!?
よし、レイとしっかりお話しよう。
そう決めて、
……それから丸3日レイの顔が見られなかった。
俺はどうやらピュアハートな持ち主らしい。
下手なことはすまい。
とりあえずそういうことは先送りにすることにした。
決してヘタレているわけではないと言っておこう。
道中、レイが魔物を倒し、
その素材を売って、衣服やその他雑貨を揃えていった。
俺は最低限の旅支度のような装いだったが、
レイはドレス姿だ。
この格好で旅をするわけにもいかず、
早々に服を買いそろえる必要があった。
街道上には宿場や食事処が点在しており、
余裕があるときは泊まったりもしたが、
ほとんどが野宿&自炊だ。
野宿では、交代で見張りをしつつ、
異変があれば、レイを起こす。
魔石のない俺は戦力外だからな。
途中、
シェルミア王国とセントフィル都市連合のどちらに行くか迷ったり、
山賊に襲われそうになってレイが無双したり、
レイの傭兵時代の話を聞いたり、
セントフィル都市連合のクレタ迷宮を観光したり、
と道中いろんなことがありながら、旅を続けた。
そして1か月かけて現在セントフィル都市連合イリオス州にたどり着いた。
セントフィル都市連合に来たのには3つ理由がある。
まず、仕事が多い。
人魔大戦が終わったといってもすぐに連合軍が解散とはならない。
つまり、人がたくさんいるということだ。
それだけ需要が生まれる。
そこで俺は真面目に働こうと思っている。
次にこの国が学問の国といわれているからだ。
学問においてこの世界の最先端がこの国だ。
そう、もともとの目的、この世界について知るということができると考えた。
大沢や葉山たちに送る情報もすぐに集まるだろう。
あいつらは無事にやっているだろうか!?
まぁ大丈夫だろう
最期に迷宮がある。
迷宮だ!
迷宮だぞ!
男なら胸躍るだろう
俺は現実主義者だから、チートもなしに迷宮に潜るつもりはない。
だが、なんとこの世界の迷宮は観光の名所となっていた。
クレタ迷宮とやらに道中遊びに行ったが、
あれはアトラクションだった。
某US○のような感じだ。
もっとも、襲ってくる魔物は本物。
護衛の男たちの持つ剣も本物。
最高にワクワクした。
レイが帰りがけ、いつか一緒に迷宮に行こうと言っていた。
少し鍛えるかな……
今のままでは厳しい
と、そんな理由からセントフィル都市連合へとやって来た。
そして次にどの州にしようか迷った。
なんでも他国の軍が駐屯している州もあるみたいで、
さすがにそこは避けることにした。
ある程度の大きな州で、他国の駐屯がない。
そして迷宮があり、仕事が多い。
この条件に当てはまったのがイリオス州。
俺の新しい生活の始まりだ!!
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セントフィル都市連合―イリオス州
ラープの街のように城壁で囲まれているわけではない。
気が付いたらもうイリオス州だった。
そんな感じだ。
明確に州の区別があるわけではないらしい。
木造、石造の平屋が多いが、
時には数階建ての建物や
日本の田舎のを思わせるような家屋も立ち並んでいる街並み。
建物の色が統一されているのか、
肌色が多かった。
ちなみに屋根はなぜか全てオレンジ色だ。
ラープの街と違う点と言えば、
とにかく人が多いということだ。
気をつけないとすぐにレイと離れてしましそうだ。
「ナツキ、あそこだ」
「ああ、あれか」
レイの指さす先に
イリオス州の中で最も高い建物がみえる。
イリオスタワー。
俺が勝手にそう呼んでいる建物。
その下で、いわゆる職業あっせんが行われているらしい。
出稼ぎにきた者はまずあのタワーを目指すとか。
「ナツキはどんな仕事をするんだ?」
「そうだな……」
このやり取りは、前にもしたような気がする
確か、ラープの街へ着く前だったか……
そんなことを懐かしく思いながら俺は仕事について考える。
リーフスティのような飲食もいいが、
出来れば、高給取りな仕事がいいな。
日本での知識を生かして
内政チートとかもいいかもしれない。
まぁもっとも俺は理系で、
実のところ参議院と衆議院の違いすら分からんが……
高給そうな仕事で俺ができそうなもの……
小中学生の学習指導とかならいけそうだな。
「ん?
あれってなんだろ?」
前方――多くの人の歓声が聞こえてくる。
広場みたいなところで人が集まってかなり騒いでいるようだ。
お祭りでもやっているのかな。
「ああ、あれか
おそらく、公開処刑だろうな」
「え?」
こうかいしょけい?
後悔……
ではないな。
つまり、広場で人が処刑されている。
それが公開されている!?
そういう認識であっているのか?
ここは異世界
ここは異世界
日本との違いを突き付けられ、焦る俺。
だが、ここは異世界だ。
日本ではない。
日本の常識は、ここでは常識でない。
この世界で暮らしていくなら、
無駄な危険を避けるためにも”常識”は
一刻も早く身につけたいところだ。
よし、落ち着いてきた。
「人の処刑はあまり見たくないな」
やっとのことでそう、
レイに言葉を返すことができた。
「いや、人ではないな。
今行われているのは魔族と亜人の処刑みたいだな」
近くの看板を見ていたレイがそう、教えてくれた。
魔族、亜人
つまり、角が生えてたり、翼があったり、
猫耳が付いてたり、尻尾があったりそういう種族のことだろう。
「どうする?」
レイの問いかけに詰まる俺。
異世界に来てから、
いわゆる獣人とか魔族とかそういった人を見たことがなかったはずだ。
人と言っていいのかわからないが……
処刑を見たいわけではないが、
魔族や獣人とかは見てみたい。
不謹慎なことかもしれないが。
でも、これも”異世界を知る”ことにつながるだろう。
魔族が”悪”という認識は、
どうやらこの世界ではごくあたりまえらしい。
帝国に然り、ラープに然り、セントフィル都市連合に然り
その”悪”とやらをちょっとみるだけでも、
その一端を感じ取れるかもしれない。
「ちょ、ちょっとだけ覗いてみようかな」
俺は結局、少しだけ、
それを見てみることにした。
このときは知る由もない。
この”異世界”は、
俺の想像している”異世界”とは、
異なるということに。
そして、それこそがこの世界の”真実”への一端であるということに。
お読みいただきありがとうございます
今後ともよろしくお願いします!
今日も晴れ




