SS リアと小さな魔法使い
本日更新は
キャラ投票1位のリアのSSになります
(SSっぽくないかもしれませんが((汗)
リアと小さな魔法使い ~お主、ワシのメイドになれ!!~
ある村はずれの一軒屋。
まわりは森で囲まれ、村の住人の多くが知らない、
そんな場所。
いつもその家から外を眺める少女がいました。
「おそとにいきたいなぁ~~」
「リア~
ご飯、手伝って~~」
「うん!」
その少女、
リアは今年で6歳になりました。
「ねぇねぇ!!
ママ!!
おてつだいしたら
おそとあそびにいってもいい??」
「しょうがないわねぇ~
ご飯の後、少しだけよ」
「やったーー!」
リアははりきって、お手伝いを始めました。
いつもお手伝いをしているので、
野菜を切ったり、お皿を並べたりするのはお手の物。
日が沈み、その日も夜がやってきます。
ご飯を美味しく食べ、
お腹いっぱいになったリアは外に出かける準備をしていました。
「おくつはいて
ぼうしをかぶって」
「リア、お庭から出たらダメよ
いい!?」
「うん!
わかった!」
村はずれにあるその家は、
小さな畑を持っていました。
そこで、貧しいながらも
リアと母は2人の生活を送っていました。
母は少しの回復魔法を使えたので、
それを村に役立て、その見返りとして
村から家畜用の麦を少し分けてもらっていました。
その麦と畑でとれた作物でぎりぎり二人分の食料がまかなえていました。
2人での生活は、
季節によっては
明日の食事にも困る日々もありましたが、
それでも二人は精いっぱい楽しく、幸せに暮らしていました。
しかし、家の窓からリアを眺める母の目には、
光るものがありました。
「ごめんなさい
リア
でも貴女だけは守ってみせるから」
のびのび、遊ばせたい。
同い年の子の友達を作らせてあげたい。
昼間村を歩かせたい。
一緒にお買い物をしたい。
たくさん、たくさん
リアと一緒にしたいことがある。
リアにさせたいことがある。
でも、それらが叶わないことは知っている。
せめて、
あの子が悲しい想いをしないように。
あれこれいろんなことに想いを巡らせていると、
時間は過ぎ、
いつの間にか、
母はうっつら、うっつら船をこぎ始めていました。
****
「おほしさまがきれい」
リアはひとしきり走り回った後、
地面に寝転がって空を見上げた。
リアは星を眺めるのが好きだった。
夜空に輝く星々。
今にも降りかかってきそうな星を眺めながら
メロディーを口ずさんだ。
「ふ~~んふふんふ~~ん
ふふう~ふん」
リアは歌をほとんど聞いたことがない。
母が寝るときに口ずさむこのメロディーしか知らないのだ。
「あっ!!
おほしさまがおちてきた!!」
空に輝く星の一つが森へ落ちてきた。
そうリアには見えた。
「たいへん!
ママーーー」
リアが家に戻ると、
母は寝息を立てていた。
日々頑張っている姿を目にしているリアは考える。
むーーー
!!
リアがおほしさまをみてくるの!!
靴を履き、ポケットに干した野菜と木の実を詰める。
「ママ!
いってくるー」
リアは、手のひらを握りしめ、
夜の森の中へ走っていった。
*****
「く~~~~
場所を間違えたの~~
ワシとしたことが……」
森の開けた場所、
土ぼこりが収まる。
悪態をつきながら、
ほうきを手にむくっと立ち上がる。
背丈は持っていたほうきより小さい。
「むむむ
取り合えず寝るかの~」
ふぁ~~と欠伸をひとつ。
その場に寝転がる。
満点の星空を眺めていると――
「あーー」
少女の叫び声が聞こえてきた。
「なんじゃ?
さわがしいの~~」
「おほしさま??」
「ん?
ワシかの?
ワシは魔法使いじゃ!!」
「わし?
わしさん?」
「ワシはワシじゃ
お主こそ誰じゃ?」
「リアはね!
リアっていうの!」
母以外の人間と会話することなど
今まで記憶にないリアは、
目を輝かせて魔法使いに詰め寄った。
「ほぉ~
……リアかの」
魔法使いは目を細めてリアを見つめた。
その眼差しには、
憐れみが含まれていた。
この子も犠牲者じゃな
可哀想にの~
「リアは今、何歳なんじゃ?」
「リアは6さいなの!」
「そうか」
6歳……
おそらく大切に育てられたのだろうな
6歳まで育てるのはそうとうな苦労が伴っただろうにの
「わしさんはなんさいなの?」
「わしさん……
まぁよい
ワシは500歳じゃ!
どうじゃ、すごいじゃろ!?」
「うそつきはだめってママがいってたの!」
「ウソじゃないのじゃ!」
「リアとおんなじくらいなのに?」
魔法使いの見た目はリアとそう変わらない。
リアは不思議そうに魔法使いを見つめた。
「そうじゃ!
なんてたってワシは魔法使いじゃからな!」
「おほしさまじゃないの?」
「ん?
ああ、魔法使いは空も飛べるんじゃぞ!」
「おそら?
すごーい!!」
「どうじゃ?
魔法使いになりたくなったじゃろ?」
「うんん!
リアはね
めいどさんになりたいの!!」
「メイドかの?
どうしてじゃ?」
「ママはね!
めいどさんだったの!
リアもめいどになるの!」
「ならお主、
ワシのメイドにならんか?」
「リアはね
かっこいいひとのめいどさんになるの」
そういってリアは楽しそうに笑って、
魔法使いの隣に腰を下ろした。
それからしばらく、
たわいない話を続けていると――
ぐぅ~~~
「そういえば、なんも食べてなかったの~~」
魔法使いはお腹を押さえて、
ため息をついた
「おなかすいてるの?」
「そうじゃ
魔法使うのも体力がいるからの~」
「これ!!」
リアはポケットから木の実を差し出しました。
「たべるぅ??」
「よいのかの?」
「うん!
いっしょにたべるの!
リアもおなかすいたの!!」
それから2人はリアの持ってきた
干した野菜と木の実をわけあって食べました。
「リアはまだまだ子供じゃの~」
リアは食べ終わると
すぅーすぅーと
寝息をたてて
ねむってしまいました。
「やれやれ、
どうするかの~~」
この子はまず間違いなく、
母親には内緒でやってきたのじゃろうな
この子には、
この世界は残酷すぎるの
せめてあとすこし、
未来に生まれてくればの~
平和な世界になったじゃろうに
いや、ワシがそうするのじゃ
こういう子供たちが生きてゆけるように!
魔法使いはいつの間にか、
強く手を握りしめていた。
ふぅ~と一息、
魔法使いは何かを思いついたような
爛々とした瞳をリアに向けていた。
「試してみるかの~~」
親指を噛み、
血を滴らせる。
血を滴らせながら、言葉を紡ぐ。
「『理に背き、理を欺く
摂理を身に受け、摂理を支配せん』」
滴る血液は、そのまま地面に落ちることはなく、
空中で静止し、
その後、空中を漂い始める。
「『万物の素なるは空・火・水・土
水火なるは雷
土水なるは木
空土なるは鉱
火空なるは風
全素をもって知を掌握せん
知の前理なるは光
知の後理なるは闇
全知をもって光闇を制約せん』」
漂う血液はリアを中心にして、
言葉に呼応するように波打ち始める。
「『万物の素よ
魔の下より
我が支配に下れ
摂理より外れし全知
理を欺き、全素を改変せよ』」
漂う血液は爆ぜ、
リアに吸い込まれてゆく。
「んんッ!!」
リアの身体は一度大きく痙攣し、
その後、何もなかったかのように、
再び、リアは寝息をたてはじめる
「一宿一飯の恩義じゃ
あり難く受け取れ
リアよ」
そう言って、
魔法使いはリアを抱え、
遠ざかる大地を後ろに、
空の旅を始めた。
*****
「んー
あっ!
ああーーー!!」
「こ、これ
騒ぐでない」
「すっごーい!
おそらとんでるの??」
「そうじゃ!
ワシは魔法使いじゃからな
こんなこと造作もないわい」
「すごいすごいすごい!!!
おほしさまがちかいの!!
おそらがふってくるの!!」
「リアよ
このことは母には内緒じゃぞ」
「ええーー
どうして?
ママにもおはなししたい!」
「母は心配するじゃろうに
内緒にしとったらまた空を飛ばせてやるぞ!」
「え?
ほんとー??
ないしょにする!!
またおそらとびたいの!!」
「そうか、そうか
おっ」
上空から、
村の外れに一軒屋がみえた。
「リアよ
あれがお主の家かの??」
「うん!」
魔法使いはそっと家の裏手に降り立った。
「もういっちゃうの?」
「ああ、親友との約束があるからの
安心せい。今度はもっと長く飛んでやるからの~~」
「うん!
またね!」
家に入っていくリアを見送りながら、
魔法使いは、再び空に上がる。
親友の待つ地、
ロキセ公国へと行くために。
家へと帰ったリアは、
まだ寝息を立てている母を起こさないように、
ひとり眠りについた。
以後リアは、魔法使いとの約束を守り続ける。
しかし、夜空をもう一度飛ぶという約束は未だはたされてない。
お読みいただきありがとうございます
第4章開始は来週の予定です
今日も晴れ




