第7話 異世界を知ろう 前編
翌朝
「ああ~~」
俺はベッドの上でうなる。
身体の重いこの感覚は、まるでインフルエンザのよう。
昨日の頭痛はこの前兆だったのだろうか?
今日はこの世界についての諸注意などをレクチャーしてもらえる予定だった。
そう予定だったのだ。
俺は、いや、クラスのおよそ半数は、寝込んでいる。
異世界召喚の副作用というやつだ。
マジしんどい。
そんなわけで、俺は休んでいる。
こんな状況なので、今日は休日になり、明日もしくは明後日からレクチャーを始めるそうだ。
クラスの何人かは帰りたいと言って兵士やメイドに詰め寄ったらしいが、日咲さんが宥めたそうだ。
さすが日咲さん。
姫の称号は伊達じゃない。
どう伊達じゃないのかは分からんが……
「相沢様、お水をお持ちしました。」
俺の世話をしてくれるのは、昨日に引き続きロリメイドさん改めリア。
なんでも11歳から働いてるらしい。
さっき知ったことだ。
「はじめましてリアと申します
よろしくお願いします」
「ご丁寧にどうも
相沢夏希です
てか若いですね」
「歳は13です」
「マジか
い、いつからメイドを?」
「メイドは11の時からです」
11歳、俺は何してたっけか!?
こんな感じの自己紹介だった。
現在13歳……いや中1かよ。
「ありがとう、リア」
リアから水をもらい、飲み干す。
この症状は魔法では治せないらしい。
ということで、この世界の飲み薬を飲んだのだが、これがクソマズい。
中国の漢方みたいな感じかな?
よくわからんが、とにかくまずい粉を飲む羽目になった。
粉が口の中で溶けた時は死ぬかと思ったほどだ。
「リア、クラスのみんなは?」
「体調を崩されている方は自室で、それ以外の方は庭園で散策をしていらっしゃいます。
また、昨日体調を崩された方は皆さん快方に向かっているそうです。」
そうか。
それは良かった。
俺も今日寝てればよくなるだろう。
意識が遠のく。
ナツキが寝た後、リアはそっとその場を離れた。
****
夕刻
腹が減った。
自分のお腹の音で起きたのでは!?
と思うほど腹が減った。
ぐっすり寝たおかげか、体調は良くなっていた。
ベッドから起き、テーブルの上にある水を飲む。
部屋は六畳ほど。
ベッドに机に椅子。
かなり簡素な作りだ。
コップは金属製。
少なくとも金属の加工技術もしくはそれと同等のことができる魔法が存在するようだ。
すっきりした頭でいろいろ考える。
これからのことだ。
どうにも、俺は一般人……つまりチートなしの無能だ。
属性が無いという話なので、
もしかしたら一般人以下なのでは!?と俺は心配していた。
さらにステータスに、俺以外は異世界人という文字が入っているらしいが、俺のプレートに、そんなことは書かれていない。
つまり異世界人とすら認識されていない。
ここから生き抜くためには、どうするか?
ひとまず、情報が欲しい。
はっきり言おう。
元の世界に帰りたい。
チートなしの無能転移は、面白くない。
というか命が危ない。
ドキドキ、ワクワクの冒険とか言ってる場合じゃない。
それは余裕あるやつの言い分だ。
ひとまず明日を生きるために今日頑張ろう。
ナツキはひとり決意を新たにした。
「ぐ~~~~~~」
うん、昨日の昼から食べてない。
行動方針1
飯を食う!!
ちょうどリアが入って来た。
俺は食事がしたい旨を伝えると案内してくれるとのことだ。
リアの案内で廊下を歩いて、食堂へ。
相変わらず豪華な廊下を進んでいく。
謁見の間とは、別の大きな広間に2組の全員が集まっていた。
もしかして俺が最後?
体調不良になったクラスメイトも俺を含め、だいたいよくなったみたいだ。
よって今日の夕食は全員でとることに。
「「「おおお~~」」」
出てくる料理、料理。
ものすごい豪華だ。
デカい肉。
色とりどりの野菜
スープやパン。
見たことのない料理が次から次に出てくる。
「それでは皆様方。お召し上がりください。」
料理長の声でメイト諸君は食べ始める。
「うめぇ~~」
「おいしいぃ」
「これすげぇ~」
「んんもぐもぐ」
体調のよかった連中は、中庭を散策していたらしい。
その散策組の昼は、サンドイッチだったらしく、本格的な料理は全員、初めてだ。
料理長が料理の解説をしているが、誰も聞いていない。
俺も肉がどこ産地で、何の肉をどう調理したとかまで聞いていたが、
はっきり言ってよくわからんかった。
ので、もう聞いていない。
今は食べたいのだ。
しっかりデザート(ゼリーみたいなもの)も食べて晩餐が終わる。
この後は、異世界の諸注意を行うみたいだ。
時刻は19時くらいだろうか?
外がまだうっすら明るい。
男女別で集められた2組は、今後勇者一行のサポートをする人をそれぞれ紹介された。
そして、その人らの話を聞くことになった。
元騎士団の兵士らしく、陛下の覚えもよく今回世話役に任命されたとか。
「まず、皆さんの身体はまだこの世界に慣れていません。
そこでいくつかの注意があります。」
最初に言われた注意事項は次のようなものだった。
この注意事項の原因は、“魔力”にある。
転移してきたクラスメイトには大なり小なり魔力が身体に宿ったらしい。
それがしっかり定着するまでは、身体や魔力が不安定な状態になっている。
はじめの1ケ月間は生肉や生魚、魔物の肉などは禁止、命にかかわるような戦闘の禁止。
なんでも身体がこちらの世界に馴染まないと回復魔法の効き目が悪いそうだ。
また、この城の外部に出ることの禁止。
他国の間者もいるということなので不用意に外に出るなというとこだ。
最後に性的接触の禁止、これは1年ほどだそうだ。
また、キスなどの行為も極力控えてほしいとのことだった。
そういう行為によって抵抗力が著しく下がり、軽い風邪で命を落とすみたいなことがあったという文献が残っているらしい。
高山先生がぽつりと言った。
「感染症だな」
さすが保体の教師だけあってそういう知識もあるのかと感心した。
確かに異世界の感染症・・ありそうだな。
また、魔力の不安定期であるはじめの半年から1年はそう言った行為で魔力を失うこともあるらしい。
これにはクラスメイトも驚いていた。
俺と違ってチート持ちの連中からしたら死活問題なのだろう。
うっかりしちゃって、無能になりました。
とかシャレにならん。
今日はこのくらいで解散になった。
明日から午前は勉強、午後から自由というスケジュールで約1ヶ月過ごすことになるらしい。
勉強では、帝国の歴史や他国や魔族の非道な行いの現状が説明されるらしい。
あと謁見の間で座席の右側にいたメイドさんがそれぞれ専属の使用人になる。
女性陣にはイケメン執事が用意されていて、今日顔合わせらしい。
それで別行動だ。
「おかえりなさいませ。」
部屋に戻るとリアがベッドメイキングしていた。
「ありがとう、もう大丈夫だよ。
そんなにきれいにしなくても気にしないし。」
「いえ、お気になさらず……」
ん?
リアの表情が硬い。
「どうしたの?」
「そ、その……今日はよろしくお願いしますですですぅ」
そういってリアは……
…………脱ぎだした。
お読みいただきありがとうございます
今日も晴れ