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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第3章 ルマグ王国編 ~俺はラープの街で大切なことを学びました~
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第63話 脱出 後編

 



「逃がすわけには行かんの」


 視界の少し回復したレグルスは、すぐさま追跡行動に移る。


「ん?」


 会場の開け放たれた窓から身を乗り出し、

 違和感に気が付く。

 2重の壁、

 その内壁と外壁の間をナツキたちが走り去る姿を視界にとらえていた。

(正確には走っているのはレイ一人だったが)


「結界が切れとるな」


 外に張り巡らされているはずの結界が、

 ナツキたちの逃走方向のみ解除されていた。


「仕方ないの」


 結界で動きを止められないとなると、

 実力行使以外には選択肢はない。

 晩餐会の会場では、“手加減”せざるを得ない状況だった。

 周囲に多くの人がいたため、

 動きが制限されていたのだ。


 だが、今その心配はない。


 レイ以上の速さで、内壁の上へたどり着く。


 ちょうどその時、ナツキたちは2重の壁の外壁を越えようとしていた。


 右手から自身の剣へ魔力を送り、

 居合の構え。


 爆発的に魔力を高め、

 抜剣。


「西風流奥義【神風】」


 透明の斬撃が、指向性を持って、

 一直線に突き進む


 一撃で、

 確実に、

 この攻撃は、会場でナツキが受けた攻撃の上位互換である。



 ********

 以下閑話


 西風流剣術は、大陸西側で発達、発展した流派である。

 大陸西側では、一体あたりの魔物の強さこそ低いものの、

 数で押してくることが特徴の一つである。

 それに対抗するため、

 遠距離からの攻撃手段を確立した。

 それが、剣戟や斬撃を、魔法を利用することで飛ばすというものであった。


 他に大きな流派としては北帝流(通称帝国流剣術)、聖教流、東海流などがある。

 北帝流はガイナス帝国を中心に、

 聖教流はシェルミア王国・教会を中心に、

 東海流は大陸東側を中心に、

 それぞれ発達・発展している。


 八大英雄の中では、

 勇者は東海流、

 剣聖、武匠、聖女は聖教流と言われている。


 また、南半球の大陸は純度の高い鉱物資源の不足で、剣術は発達しなかった。

 そのため剣術より体術や魔法を重視していたと言われている。


 以上閑話

 ********




 ナツキたちが壁を乗り越える寸前で、

 それは2人に直撃する。


 ――そのはずだった。


 しかし、

 レグルスの放った【神風】は、

 その距離を延ばす前に殴り消された。


 天空より飛来した男の拳によって。


「やれやれ、7年ぶりじゃな」


「いや、8年だな。

 対帝国同盟の対策会議以来のはずだ。

 もっとも7年前こそこそ成り行きを見守っていた腰抜け共は違うだろうがな」


「……

 どいてくれんかの?」


「お断りだ」


 ――瞬間、


 レグルスの腕がぶれる。

 残像を幾重にも残す連撃。


「【連風神斬】」


「【一拳】」


 その男――店長は、

 迫りくる高速の斬撃を一撃の殴りで霧散させた。


「【光閃】」

 指向性の高速の光が飛ぶ。


「【波拳】」

 拳を突き出すことで空圧を飛ばし、

 高速で飛来する光は相殺された。



「相変わらずの化け物じゃな

 さすがロキセの守護神と呼ばれただけはあるの

 して、なぜ庇う?」


「そりゃナツキくんだからね

 応援しないと!」


 う~~ん、と伸びをしながら女性が近づいてくる。


「……イブ・サータンかの」


「正解!」


 あははは、

 と笑いながら店長の近くで足を止める。


「こんなことしてお主達も困るじゃろうに」


「今まで大人しくここに住んでてやったんだ

 少しくらいは融通を利かせろ」


「ほう、気づいておったのか」


「当たり前だ」


 元ロキセ公国の店長やイブたちは、

 身分を隠したり、偽ったりすることなく生活し、

 店まで経営していたのだ。


 一介の騎士は知らずとも、

 国の情報機関や領主軍の上層部はもちろん把握していた。

 把握しておきながら黙認していた。


 その理由は3つ。


 同盟を締結しておきながらロキセ公国の危機に力を貸せなかった後ろめたさから。

 また帝国に対して、ラープの街に彼らがいるということを示すことで抑止力として期待できたから。

 最後に、いざ帝国と開戦した場合、予備戦力として力を貸してもらいたかったから。


 以上のような理由で黙認されていた。

 中には、ルマグ王国への復讐の可能性もあるとの主張も少数、存在したが、

 大多数の意見の中に埋もれていった。



「十分おめーらの国に貢献したんだ

 借りを返せや」


「はぁ~

 仕方ないの

 お主達と戦いたいとは思わんからな」


 レグルスは剣を収めた。


「行くのかの?」


 この街から出ていくのか?

 レグルスの言葉をそう受け取り、

 少し躊躇したのち、

 店長は答える。


「ああ、やることができた」


 それ以上両者は何も言わず、

 それぞれ来た方向へ歩みを進めた。



 ********



 リーフスティ




「ただいま~~」


 店長とイブが店内に入ってくる。


「お疲れさん」

 マックが応える。


「ナツキとレイは?」


「街を出て、

 東に向かって走り去っていきましたよ」


 ジョンとマックはあれから、

 ナツキのサポートへと動いた。


 具体的には、

 マックは風殺をはじめとした領主軍の一癖も二癖もある騎士や魔法師を事前に無力化していった。

 もと情報畑の人間で暗殺等もそつなくこなしてきたマックにとっては、さほど難易度の高くない仕事だった。


 ジョンは、ナツキが下水道へ入る前、ナツキを追っていた騎士の無力化や、結界の解除を行っていた。


「それにしてもあの爆発は本当にすごかったね」


「ああ」

 イブとマックが話す中、店長は何かを一人で考え込んでいた。


「店長

 どうしたんですか?

 ナツキを追いますか?」


 ジョンが尋ねる。


「いや、

 あの調子ならレイはもう大丈夫だろう。

 それよりもやることができた」


 その言葉に一同は店長へ視線を向かわせる。


「帝国へ行く」


「帝国ですか?」

 不思議そうな声を出したのはイブだけだが、

 マックやジョンも顔には、なぜ?と書いてある。


「正確にはナツキについて調べる

 まずは、レイとナツキが出会った村に行く」



「店長ー

 どうしてナツキくん?」



「どうにもナツキは“異世界人”かもしれないらしいからな」


 翌日、

 ラープの街の人々は、

 リーフスティが休業したと

 知ることとなった。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ


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