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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第3章 ルマグ王国編 ~俺はラープの街で大切なことを学びました~
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第61話 決戦 後編

 

(レイ視点)


 バカ!!


 ナツキは本物のバカなのか!!


 なぜ!?


 どうして!?


 視界にナツキを捉えたのは、たまたまだった。


 たまたま視線を泳がせていたら、

 勝手に視線が止まった。

 止まってしまった。

 あたかも探していたかのように、

 待ち望んでいたかのように。


 それは一瞬だった。


 なにかを言わなくては!

 そう思ったのと同時にナツキは消えた。


 否、消えると見間違うほどの速度で

 会場内を強行突破してきたのだ。

 その速度に反応できたのは、

 一部の騎士のみだが、

 その騎士は次々に倒されていく。


 一歩、歩むたびに加速し、

 私めがけて突き進んでくる。


 まるで矢のごとく。


「ナツキ!!」


 叫ぶけれどナツキは、

 レグルスと対峙していてこちらに構う余裕がない。


 脂ぎった領主に肩を抱かれ、

 所有物としての鎖を足にはめられていた。

 深紅のロングドレスで、

 直接、外からは見えないが、

 その魔道具の一種なのかもしれない鎖のせいで思うように動けない。



 そして、ロングドレスで思い出す。

 今の私の扇情的なこの衣装を。


 背中が大きく、

 というかほぼ丸出しで、

 前も布1枚の様な衣装だ。


 急激に恥ずかしさが沸き上がって来た。


 今まで、領主を含めた多くの“視線”を意に介すことはなかったのに。


 このときの真っ赤な顔をナツキに見られたら死ねる。

 そうレイは本気で思ったほどだった。


 だが、思考は現実に強制的に戻されることとなる。


 顏の色は一瞬で赤から青に変わった。

 より濃い赤を見ることによって。


「ナツキ!!」


 斬られた傷口からあふれ出る、

 血の量が尋常ではない。

 噴き出すそれは、

 もはや致死量ギリギリのはずだ。


 少ししてナツキは治癒魔法で何とか回復した。

 立ち上がりレグルスと対峙する。


 また、レグルスが魔結晶石と口に出していた。

 あれは確かとんでもなく高価なはずだ。

 そんなものを用意してまで――



 ああ、


 怒りが、

 後悔が、

 憤りが、

 悲しみが、

 悔しさが、

 恥ずかしさが


 胸の内から一体となってあふれてくる。

 目をきつく閉じ、唇を噛む。


 噛んだ唇から流れ出る雫は、床を赤く湿らせた。


 閉じた目の奥で――


『ナツキは私が守る』


 あの時の光景が、思いが、

 一筋の光となって私のこころを照らしだす。


 その言葉は、

 レイを冷静にさせた。

 ナツキを見つめる。


 あの言葉は、

 誇張や冗談ではない。


 決意だ。


 心は、身体は、胸の内は、

 静かに燃えていく。

 対称的に、

 頭は冷静にクリアになっていく。


 レグルスへの勝算はゼロに等しい。

 ナツキだけでは。


 ナツキと目が合う。


 一瞬でいい。

 全方位に気を配っているレグルスの一瞬のスキさえできれば、


 ナツキを守れる。

 否、ともに戦える。




 ナツキ、


 私は貴方を信じる――




 *******


(ナツキ視点)



 そんなに見つめられると恥ずかしい

 しかし、ここは男としてカッコイイところを見せないとな。



 レイとの距離、およそ15m



 しかし、その直線上――

 正確にはブダ領主の直線上にレグルスがいる


 レグルスとの距離、およそ10m


 レグルスは名乗りを待っているようだ。

 ならお言葉に甘えて名乗らせてもらおう。


 そして、今からやるのは、賭けだ。

 でも()は悪くない、と思う。


 魔石は2つ。

 1セットのみ。


 俺じゃ倒せない。

 今の俺だけでは。


「名乗らせてもらうぜ!」


 名乗りと言えば俺はこれしか思いつかない。

 まさかこの名乗りをしようとは夢にも思わなかったが。


「おお、聞こうかの~」


 金の魔石を右手に、

 小さい魔石を左手に、

 両の腕を大きく振りかぶって、


「日本、京都府立桃林(とうりん)高校」


 ワインドアップの姿勢から、

 両腕、左足を、

 胸に大きく引き付け、


「2年2組、選挙管理委員の」


 左足を大きく前へ踏み出すと同時に、

 腰を廻し、

 左手の小さな魔石を発動させる。


「相沢」


 即座に右で握っている魔石も発動させ、

 右腕を振り抜き、


「ナツキだ!!!!!」


 魔石を――


 否、魔力の塊を投げ抜いた




 *********




 レグルスは落胆していた。


 魔力を飛ばすこと

 それ自体は高等な部類に入るが、

 ここの魔法師団の半数以上は使うことのできる、

 その程度のテクニックだ。

 その上、今ここでそれはなんの意味も成さない。


 なぜなら、レグルスが真正面にいるから。



 ――後ろの娘に向けての魔力だろうが、

 ワシがおって、通るはずなかろうに



 レグルスは剣の柄に右手を添える。


「終わりだ

 小僧」


 その魔力球は、

 明らかに通常より高速だったが、

 レグルスが目で追えないほどではない。



 投げ抜いたナツキは、

 そのままの姿勢で床に倒れていく。



 それを瞳に捉えながらも、

 レグルスは魔力球に神経を集中させていく。



 ――速いな。

 威力が衰えんどころか、

 逆に上がってきとる。

 が、それでもここまでじゃな。



 抜剣――

 横一閃。


 レグルスの剣が魔力球に当たる――――


 その刹那――


「なッ!?」


 魔力球は消えた。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ


****

作中の名乗り方は

フルメタル〇ニックを

参考にしています

問題があれば別のものに差し替えさせていただきます

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