第55話 蒼炎の竜使い 後編
「蒼炎の竜使いの二つ名を持つ
かの8大英雄の一人、大魔法使いの弟子
イブ・サータンだ!」
「は、8大英雄の……弟子!?」
「ロキセ?」
「大魔法使い……」
「ロキセとは、人口わずか2000人ほどと言われている帝国と接していた小国だ。」
そんな小国が帝国と国境を接していられた訳。
それはその国に圧倒的な力を持つ存在がいたから。
そのうちの一人が蒼炎の竜使い
と言われていた。
7年前、
国境を帝国と接することになったことで、
王国は軍備の強化とういことでラープの街に防衛拠点を築いた。
そのため、今の若い魔法師は知らない者が多い。
その二つ名を。
しかし、その二つ名でアインス同様驚愕する者たちも大勢いる。
当時死亡したと言われ、
使われなくなって久しいその二つ名だった。
アインスは彼女と対峙する形で前に出た。
距離はまだ20mほど離れている。
が、声は十二分に届く。
そんな距離だった。
「なぜ、貴様がここにいる?
蒼炎の!!」
アインスの大声が響き渡る。
辺りは静まり返る。
魔法師の誰もかれもが気を抜かず、
女性の一挙手一投足に注目する中、
のんきな声で返答が帰って来た。
「蒼炎かぁ~
懐かしいね」
「目的は、なんだ?」
「目的かぁ~
特にないかな
強いていえば、
もう少しこの場で遊んでほしいってくらいかな~」
「ふざけるな!!!!
なぜ生きている?
なぜ“魔法”を使えている?」
あの日、
アインスは、
アインスを含めたルマグ王国軍は、目撃した。
魔法師数百人とイブが一人で戦っていたところを。
帝国魔法師団の禁忌、魔封じの結界に嵌ったイブの姿を。
禁忌とされている魔封じの結界。
それの魔法結界は、体内の魔力を封じ込め、
魔法が使えなくなると言われている。
その後、イブのみではなく、
公国を守っていた他の者も帝国に敗れた。
そして公国は火の海へと飲まれた。
一方、帝国の損害も無視できないものだった。
帝国魔法師団はその日、8割以上もの人員を失った。
そのため、以後の帝国は魔法師ではなく騎士中心の政策に転換せざるを得ないほどだったと言われている。
また、その戦いでの損害を受け、帝国の侵攻はいったん収まることとなった。
「魔法ねぇ~」
そう言ってイブは手にもつ石をアインスに見せた。
「魔石だな!?
そうか!!
魔石の中の魔力が無くなれば、奴は魔法を使えない!」
「はぁ~
魔石じゃなくて“触媒”だよ」
「同じものだろ!?」
そう言ったアインスの言葉にイブはため息をつく。
同じなのに別の名前が付くわけないのにねぇ~
「ひとつ、レクチャーしてあげるわ
魔石と触媒は全くの別物。
魔石は魔力が蓄えられている石。
それゆえ魔石の中の魔力が無くなれば魔法は使えない。
一方“触媒”と言われている石は魔力を蓄えたりしていない。
触媒は、大気中にある魔力を“集める”石。
それゆえ石そのものは普通、変化しない。
つまりね、
“触媒”なら魔力を大気中から無尽蔵に引き出し、使えることができるってこと」
まぁ理論的にはそういうことになるって話だけどね
「どう?わかった??」
イブの問いかけに反応する者はいない。
魔法師はみなこれでもかと攻撃を続けている。
パリン
音を立てて、イブの持っている”触媒”は砕けた。
“変化しない”
もちろん例外はある。
イブの使っている魔法が”それ”だ。
「はぁ~超高いのに」
新しい“触媒”を取り出す
早めに決着つけないとお金が!!
というわけで、イブは攻撃を始めた。
竜が蹂躙を開始する。
近接戦を挑んだ魔法師はイブに、
後方からの攻撃する魔法師は竜によって無力化されていく。
殺さずに無力化される。
それほど両者の間にはおおきな差があった。
数分後、
魔法師団は壊滅した。
イブの姿はもうどこにもない。
辺りには倒れた魔法師が散らばる。
後方支援の人間は彼らの介抱に追われることになる。
ナツキの侵入に際し、要請が出されていたが、
ついに騎士団からの魔法師増援要請が通ることはなかった。
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