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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第3章 ルマグ王国編 ~俺はラープの街で大切なことを学びました~
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第53話 俺 VS 100人の騎士

 



 地下下水道を通り、屋敷への侵入に成功した俺は、

 開けた空間にたどり着いた。


 《回復魔法》《身体強化》


 魔法を使い俺は木の蓋をぶち抜くと――



「「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」


 なんと俺が出た先は、

 肥溜め小屋に併設されて建てられているトイレの女性側らしかった。



「変態よ!!

 変態が出たわ!!」


「きゃぁぁぁぁ」


「助けてぇぇ!!」



「待て待て!!

 違うんだ!

 俺は変態じゃない」


 一目散に逃げていく女性たちに唖然とするしかない。

 俺が変態!?

 冗談はよしてくれ。

 ただ肥溜めからクソまみれで女子トイレに現れただけじゃないか…………


 ぐすっ

 うん、アウトでした。


 まぁいい、俺には時間がない。


 と、そこにこの近くにいたのだろう騎士が駆け付けてきた。


 《火飛矢(ファイヤーアロー)


 男が叫ぶと、

 空中に10以上の火の玉が現れ、ひとつ一つがどんどん大きくなる。

 そして、矢の形へと姿を変えた。


 眼前に4人。

 一番後ろの男が右腕を俺のほうに向け、魔法を放った。

 直後、10以上の火矢が高速で飛来する。



 忠告無しにいきなりとか!?

 日本の警察を見習ってほしいぜ!!


 《回復魔法》《水壁》


 俺も魔法を発動する。

 突如、俺の目の前に水で出来た壁が現れ、火の矢をすべて受け止め、消した。




 魔法による攻撃が失敗とわかると、

 4人のうち、より俺に近かった木剣を持つ騎士が2人突っ込んでくる。


 《水剣(ウォーターソード)

 《氷剣(アイスソード)


 木剣にそれぞれ水と氷を纏わせた。

 これがおそらく魔剣術とかいうヤツだろう。

 魔法と併用した剣での攻撃。


 左右同時の強襲に、俺も魔法で対応する。


 《回復魔法》《身体硬化》


 左右の腕で、それぞれ木剣を受け止めた。

 魔法による腕の硬化で痛くも冷たくもない。

 2人の騎士の顔が驚きに染まり――


 《回復魔法》《帯電》


 俺自身が電気を帯びると、

 それが木剣を伝い、騎士を襲う。

 まずは2人の無力化に成功だ。


 そうこうしていたら当然仲間がやってきて……


 というわけで、トイレを出た先で、

 4人の騎士と相対することになった。

 そう、そんなわけで、俺、相沢夏希(ナツキ)は、

 100人の騎士に包囲される今の状況に至る。



「貴様!

 無駄な抵抗をせずに、投降しろ」


 騎士風の鎧をつけた男が叫ぶ。

 他の騎士は、鎧などつけてはおらず、

 持っている剣も木剣でかなり若い。

 俺と同じくらいの年齢に見える者もいる。

 そういえば、ギルドで見た略図に、領主西側に騎士見習いの練習場があったな。


 俺は小屋(と、トイレ)を背に辺りを見渡す。

 完全に半包囲されていて、逃げ場はない。


 どうやら、やるしかないようだ。


 クソまみれで悪臭を放つ俺を観察していた男は、

 真如な面持ちで尋ねてきた。


「貴様には、ヒトとしての誇りや尊厳はないのか!?」


「…………少し前に落としちまってな。

 見なかったか?」


「ああ、生憎と見ていないな。」


「そうか、

 もし、騎士団の忘れ物箱とかに届いてたら連絡してくれ」


「わかった。

 だが、残念ながらもうどこにもないだろうな」


「……そうか、

 それは悲しいな」




「……………捕らえろ!!!!」


「「「おおおおお」」」


 見習い騎士の連中が雄叫びを上げながら突っ込んでくる。


 この人数に対して、火球は悪手だ。

 面攻撃に対して点攻撃では、対処できない。


 俺は知識として知っている。

 かつて、世界を震撼させたあの兵器ならこの場を切り抜けられる。


 無差別に辺り一帯に地獄をまき散らす人類史上最悪の兵器。


 そう――化学兵器

 それを俺なりにアレンジする!



 俺はかつて経験していた。

 昔日本にいた頃、とある北欧の”兵器”を輸入していたのだ。


 それを、窓を開けた自室で夏休み、妹と共に実験と称して“開けた”!!!


 ぷしゅっっっーーーーー


 音を立てながら飛び散る水滴。

 そして、悶絶するほどの痛み。


 臭いのではない。

 痛いのだ。


 臭さの先には痛みがある。

 俺はその時、真理を学んだ。

 それを今、この場で再現する。

 騎士との会話で時間が稼げた。


 記憶をたどり鮮明にイメージして俺は悪魔の兵器に手を染めた。


 超圧縮型悪臭兵器――通称シュールストレミング!!!


 生ごみを1ヶ月放置してそれを煮込んだような匂いと評判のアレだ!!


 《回復魔法》《超圧縮激臭》


「シュールストレミング!!!!!!!」


 世界一臭いと言われるその匂いをさらに圧縮し、

 全方位に放出する。

 一瞬にして辺りは霧状の“それ”で覆われ、

 100人以上いた騎士見習いと騎士は

 悶絶し、地に倒れた。


「「「「「「おえええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー」」」」」」


 そして、俺も例に漏れず、それに悶絶していた。


「おえええぇぇぇぇぇぇぇぇーーーーー」


 回復魔法を連続で使い続ける。

 その光に包まれている間は、臭さを感じない。

 連続で使い続け、俺はその場を急いで後にした。





 第一関門突破!!!


 ******




 朝から何も食べていなかったのは、幸いした。

 服にこびりついた臭さは、なおも俺を苦しめる。


 手持ちの魔石も半分以下になった。

 無駄遣いはできないな。

 俺は臭さをとにかく我慢することにした。



 日が傾きつつ、東の空から闇が迫る時間帯。

 残りは2,3時間といったところか。


 領主の屋敷は、中央にある高い建物のことだろう。


 そして、その建物へは直通ではない。

 目的の建物の前に3階建てくらいの建物が見えた。


 もう、ここまで来たら、

 こそこそなんて意味がない。


 この勢いそのままに正面突破で一気呵成に攻めてレイを奪還する!!




 俺は、目の前の建物の入り口からそっと中をのぞき込む。


 中は俺の知識では、体育館が最も近かった。

 その体育館の様な建物の中には誰もいない。


 そういえば、さっきからひとっこ一人見ていないな。

 もしかしてこれは、罠なのか!?


 と言っても、俺にはどうすることもできない。

 ならば、時間も迫っていることだし、俺は、恐る恐る一歩踏み出した。


 一歩目、何も起こらず。

 二歩目、何も起こらず。


 何も起きないのなら、それに越したことはない。



 バンッ


 突如嫌な音が響き渡り、音とともに足元が発光した。


 …………そりゃ、何も起きないわけないよな


「掛かったぞ!!!!」


 俺を中心に縦横高さ2mほどの立方体の透明な壁が出来上がる。

 そう、結界だ。


 俺は結界にハマってしまったのだ。


 その直後、声と同時に、体育館のような建物の扉や窓から一斉に大量の騎士や魔法師が入って来た。


 あれよ、あれよ、という間に俺は囲まれてしまう。


 300人くらいいるのか前衛が騎士、後衛に魔法師の布陣だ。

 騎士も先ほどの見習いとは違い、完全武装の騎士。


 俺一人にこれはいくら何でも過剰戦力だ。


 レイ奪還への道のりはまだ始まったばかりだった。





 *********


 領主の屋敷概略図


挿絵(By みてみん)





お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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