第51話 準備、そして戦いへ 後編
スーパーこそ〇そ作戦を開始する!
第一に情報集めをしよう。
無謀に考え無しに、正面突破などありえない。
てか、そんなことは俺の実力では不可能だ。
チートだなんだと、もうそういう言い訳はしないが、
できることとできないことの区別はしっかりつけておく。
とはいうものの、目標達成のために、
どうやって領主の屋敷の情報を集めればいいのかわからない。
そんなわけで、イブさんの言葉に従い、
ひとまず冒険者ギルドを俺は訪れることにした。
街の中央が領主の屋敷。
その屋敷の中には、
騎士団の宿舎と魔法師の宿舎や訓練グラウンドなどが存在する。
南側に広がる商業街と領主の屋敷の、
ちょうど中間地点に冒険者ギルドという建物は存在していた。
2階建て、木製の建物でかなり大きい。
1階はオープンカフェのように解放されていて、
その奥にいわゆる受付が見える。
昼過ぎで昼食を終えた冒険者や傭兵がそこに集まっていた。
冒険者とか傭兵とかの括り(くく)やギルドの立ち位置など、
俺にはさっぱりわからなかったが、
とりあえず一通り見て回ることにした。
すごい混雑だな。
集まっているのは掲示板の近く。
俺も流れに従ってその場所に行きついた。
帝国と言語は同じらしく、
掲示板に貼り出されたそれを眺めていく。
「おお~」
俺が驚いたのはその情報量の多さだった。
一つの依頼でも、かなり詳細に情報が記載されていた。
日本の契約書にある小さい注意書きのようだ。
それらをささっと眺めて、
そろそろ場所を移そうかと思っていたその時、
俺はある掲示板の張り紙に目を奪われた。
『ブルガルタ領主様屋敷侵入イベント』
「な、なんだこれ!?」
ふざけてるのか!?
「おう、兄ちゃん!
よそ者だな!?」
振り向くと、
そこには中年のおっさんがいた。
「ええ、まぁ旅の者です」
「これは、この街の名物みたいなもんだ。
領主様の屋敷に、
その紙にあるルートで侵入できたら、
賞金が出るんだぜ」
「??
なんでわざわざこんなことするんですか?」
てかここ2週間この街に住んでいたが初めて聞いたぞ。
こんなイベント。
そして、当然の疑問。
自分の家に侵入出来たらお金を出すなんて……
「ハハハハハ
普通はそう、思うよな
だが、これは結構、理に適ってるんだ。
ここは帝国との最前線で、荒くれ物が多い。
昔はしょっちゅう領主様の屋敷に賊の襲撃があったんだ。
だいたいは防げるが、これがかなり面倒でな。
侵入のたびに騎士と魔法師が対処に当たる、
そんなことを繰り返していたそうだ。
だが、レグルス騎士団長様が提案したこのイベントのおかげで襲撃が減ったんだ。」
得意げに話すおっさんに説明されたが、さっぱりわからん。
イベント自体も襲撃みたいなものだから、
むしろ増えるんじゃないのか!?
そう思いつつ、続きを聞き、俺は納得した。
利点は3つ。
賊や冒険者、傭兵を含めた多くの者に領主の屋敷の堅牢さを見せることで、
街に暮らす住民には安心を、悪さを考えている者共には利益以上のリスクを与えることができる。
次に、警備を突破できるほどの実力者ならスカウトという形で雇い入れる。
最前線故人手は慢性的に不足している。
有事の際の戦闘要員は一人でも多く確保しておきたいのだろう。
最後が実戦としての訓練になる。
ここは最前線ではあるが、当然新米騎士や魔法師もいる。
そういった者に対人戦の訓練をさせる機会を定期的に用意できる。
実際イベントを開催したことで、
今では領主の屋敷に侵入しようという者はいなくなり、
警備の人員を最低限で済ますことができるようにもなり、
優秀な人材がスカウトされ、
新人の底上げにも役立っている。
最近では街の人との交流イベントとしての側面も出てきたとか。
「すごいことを考える人もいるもんですね」
全くなんて男だ。
ただでさえ困難な屋敷への侵入が、さらに困難になったじゃないか!
2重の壁で囲まれているというから、
よじ登って超えていこうと思ったのだが……
「当然さ。
騎士団長様は頭が切れるだけじゃなくて魔法師としても剣士としてもすごいんだ!」
「なにそのチート……」
迷惑極まりない。魔法も剣もすごい!?
俺にどうしろと!?
「特にこの外壁と内壁の間の結界はすごいんだ!
団長自ら作ったと言われていてな
俺も昔、挑戦したことがあったんだが、
全く歯が立たなかったもんだぜ!」
おっさんが掲示板の領主の屋敷の見取り図簡略版を指さしながら教えてくれた。
「結界!?」
「ああ、神聖属性じゃなけりゃ無理だろうな。
もしアレを突破出来たら、
魔法師団か騎士団にスカウトされるだろうぜ」
神聖属性……
呼び方からしてレアな属性だろうな。
こりゃ、かなり念入りに準備していくしかなさそうだ。
前途多難。一度そのイベントとやらに参加してみるのもいいかもしれないな。
**********
そう思っていたのが、そう、ちょうど一時間前。
しかし俺は今、
訓練グラウンド近くの小屋前で100人以上の剣士に半包囲されている。
無力化できたのはたった2人だけ。
あの時までは順調だったのだ。
**********
一時間前―――
おっさんと別れ、とりあえず下見。
ということで領主の屋敷に向かっていたのだが……
途中の飲食店――リーフスティと同じような外観の店は領主の屋敷近くということで、
その関係者――魔法師や騎士などで賑わっている。
ちょうどその店の前を通りかかったとき、
俺にとっては聞きたくない会話が聞こえてきた。
「領主様はうらやましいな~~
あんな綺麗な女を抱けて!!」
「ああ、全くだ。
少し、もめたらしいが今は大人しいってよ」
「今夜はたしかその女のための晩餐会だったよな!?」
「ああ、そうだ」
「てことは、夜はお楽しみかぁ~~
あの部屋の警備はしたくないよな~~
なんせ、喘ぎ声が漏れ聞こえてやってらんないぜ」
「そう言うな
あのすまし顔がひぃひぃ言ってる姿を想像してみろ!
声だけでもたぎるだろ!?」
「あははははは!!
てぇめーは変態だなぁ!!
でもたしかにそう思えばおもしろいなぁ!」
”ブチッ”
何かの切れる音がした。
気が付けば、
俺はその店に向けて、
火球をぶっ放していた。
「あ」
やっちまった………………………………
お読みいただきありがとうございます
今後ともよろしくお願いします
今日も晴れ




