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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第3章 ルマグ王国編 ~俺はラープの街で大切なことを学びました~
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第50話 準備、そして戦いへ 中編

 


 朝一番、俺は魔石を売っているという店を訪れた。


 街の出入り口に近いその店は一階建てで、様々な鉱物を店先に並べていた。

 大小の鉱物が太陽の光に当たり輝いている。


「すみません!」


 自慢じゃないが俺は魔石がどれかわからん。

 偽物を掴まされる可能性もある。

 外国で日本人がカモにされるのと同じだ。


 ということで、まずこの店の店主と話し、

 いくつか購入して様子を見ようと思っていた。


「いらっしゃい!

 お!?黒髪黒目!

 もしかしてナツキってのはあんたのことかい?」


 頭にハチマキの様なものを巻いた筋肉質のおっさんが、

 店の奥から俺を見るなりそう言った。


 おっと?

 どうして俺のことを?


 疑問を浮かべて、返事を言い淀んでいると、

 この店の店主は笑いながら教えてくれた。


「2、3日前にレイちゃんが魔石を買いに来たのさ

 そのときにな、しきりにあんたのことをほめてたぜ。

 その話の”ナツキ”に特徴が似てる!

 どうだ!?お前さんがナツキで間違いないだろ!?

 このあたりじゃ黒髪黒目は珍しいからな」


 そういうことらしい

 全く、俺の何を話していたんだか!?

 自慢じゃないが俺はただの無能だぞ

 一度レイとはきちんとお話しする必要がある。

 そう俺は心に決めた。


「で、どうした?

 今日はレイちゃんのお使いか?」


「ええ、そんなところです」


 ここは話を合わせるのが得策だろう。

 レイとこの店の店主はどうも顔見知りらしい。

 レイのお使いということなら、

 粗悪品を掴まされる可能性も低いだろう。


「魔石を、レイが前買った時くらいお願いします」


「またかい!

 あれでも結構な量だったけどね

 ちょいとまってな。

 レイちゃんはお得意様だから少し負けとくよ」


 そう言って、この店の店長は奥に入っていた。

 少しして、片手で持てるくらいの麻布に魔石をいっぱい入れ持ってきた。


「金貨2枚、

 銀貨なら200枚」


 カウンターにドンッと魔石の入った麻布を置き、豪快に言ってくる。


「これで」

 そう言って俺は領主からもらった金貨5枚のうち2枚を渡す。


「毎度!」


 麻布を受け取り、俺はそれをリュックにしまい込む。


「ありがとうございます!

 あと、いつになるかはまだ決まっていないんですが、

 近いうちにレイと俺は街を出るかもしれません。

 今はその準備をしています」


 レイを取り戻せても以前のように、

 この街で暮らしていくのは難しいかもしれない。

 レイの知り合いになら、このくらいは許されるだろう。

 店主は魔石の大量購入に納得がいったという顔で頷いた。


「レイちゃんなら大丈夫だろう!

 少し前は危なかしかったが、最近はよく笑うようになったからな。

 オメエも男ならしっかりレイちゃんを守ってやんな」


「わかってます」


 言われなくてもわかってる。

 俺は自分自身にも言い聞かせ、店を後にした。


 その後、服や靴、そのほかの装備も揃えていく。

 指先のない手袋やベルト、腰に下げる魔石袋を購入していく。

 薬は結構な値が張った。


 必要なものだから仕方ないだろう。


 レイの買った魔石と俺の買った魔石合わせてかなりの量になった。

 手袋と手の甲の間に魔石を入れる。

 手袋と手のひらの間にも魔石を入れる。


 腰に下げた魔石を入れてある袋からいちいち取り出していられない状況もあるだろう。

 これで連続3回は魔法が使える計算だ。

 もっとも手の甲の魔石は取り出しにくいが……


「あとは、リーフスティだな。」



 ******


 時刻は既に昼を過ぎ、太陽は南中している

 今日は休むと連絡していないのに、勝手に休んでしまった。

 まず、怒られるだろうな。

 そんなことを思いながら店の前まで来た。


「あれ?」


 この時間、お客さんで賑わっている店は閑散としている。

 というか、店は閉まっていた。


「おう、ナツキ、重役出勤とは偉くなったな」


「すみませんでした!!」


 店長の低い声。

 用意していたセリフを即座に口に出す。

 店内に俺の声が響いた。


「それで?」


 続きを聞いてくる。

 そりゃそうだよな。

 俺の格好は、いつもとは違う。

 今から旅にでも出そうな重装備だ。


 イブさんたちも顔を出す。


 俺は4人に言った。

「この街を出ることにしました。

 お世話になりました。」


「そうか」

 店長は一言だけ。


 マックさんとジョンさんは何も言わない。



「ナツキくん、これからどうするの?」

 イブさんの問いに答える。



「冒険者になるつもりです」


 そう、冒険をする冒険者になる。

 不本意だが、俺の実力では、

 この先、レイを取り戻すのはひどく困難だろう。

 もちろん、慎重にやるつもりだが。


 理想としてはこっそり侵入、こっそりレイを奪還。

 こっそりラープの街を出る。


 名付けてスーパーこそこ〇作戦。

 …………完璧だな。



「そう、冒険者になるのね。

 本当の冒険はできそう?」


 イブさんの前に話してくれた話がよぎる。

 冒険者ほど冒険しない人はいない。


 俺はどうか?

 そんなのは決まっている。


「そう遠くないうちに、

 きっと”冒険”することになると思います」

 あはははは、と俺は笑った。



 イブさんは満足そうに頷く。


「待ってろ」

 店長はそういって、店の奥へ。

 そして少しして戻って来た。

 剣を携えて。


「こいつを持っていけ

 餞別だ。

 古いが、切れ味はいい。

 きっと役に立つだろう」


 そういって1mほどの剣を渡してきた。


「ありがとうございます!」

 俺に剣なんぞ扱えないが、無いよりはいい。

 背負えるように肩掛けの布が付いていたのでありがたい。

 少し重いが、高校で使っていた教科書の入ったエナメルバックよりはマシだ。


「ナツキくん。

 なにをするにしても一度この街のギルドに寄ってみるといいよ」


「?

 わかりました」


 レイの忠告もあり、冒険者ギルドに行くつもりはなかったが、

 話してくれたイブさんの目は真剣だった。


 イブさんの言葉を頭に入れ、

 リーフスティの皆さんに見送られながら、

 俺は店を後にした。




 ***************




「決めたようだな」


「やる気でしたね」

「大量の魔石を持ってたしな」


「ナツキくんは見かけによらずアクティブだね」


 店長が、ジョンとマックが、イブが、

 それぞれの声が、ナツキの居なくなった店内に響く。


「店長、よかったんですか?

 あの剣」


「ん?

 ああ、気にするな

 それより俺たちも仕事を始めるぞ。

 この街でおそらく最後の仕事だ。


 イブ、分かってるな!?」

「うん、大丈夫。

 準備はできてるよ」


「ジョンとマックはナツキについてやれ」

「了解」

「うっす」


 ニヤリと笑う店長。

 3人は各々散っていく。


 それぞれ武器を持って。


 この街で最後の仕事をするために。



「覚悟を決めた男をしっかり届けてやろうぜ」


「はいッ!」

「了解!」

「うっす!」



お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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