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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第3章 ルマグ王国編 ~俺はラープの街で大切なことを学びました~
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第44話 はじまり 前編

 


 レイの家に帰った俺は――


「ごめんなさい!!!」


 プライドはどこ行った!?

 そんなレベルで土下座した。


 レイに紹介してもらった店でやらかして、

 危うくクビになるところだった。

 そして結果として銀貨1枚という借金まで背負ってしまったのだ。

 店長は、あくまで俺の借金だから俺が働いて返せと言って来たが、

 もちろんそのつもりだ。


 でも、レイには報告すべきと考え、

 どう伝えるか迷って、

 結局たどりついたのは土下座だった。

 今日はレイが、遠征討伐から帰ってきた日だ。

 レイとは、3日ぶりに会う。


「ん?

 どうしたんだ?」


 困惑するレイに俺は事の顛末を話した。


「すごいじゃないか!?

 高威力の魔法が使えるなんて!」


 どうして?

 ねぇ?レイさん俺の話聞いてた?

 そんなことを思ってしまった。


「高威力っていっても、使えば気絶して、

 高価な魔石は砕けるし、そもそも制御できないし……」


「そうなのか?

 だったら練習してみたらどうだ?」


「いやいや魔石を買うお金がそもそもないから!」


 俺にあるのは借金だけ。


「お金なら少しは蓄えがある!」


 そういってレイは床の一部を上げた。


 隠しスペースらしいそこには、銀銅の硬貨が多量に無造作に入っていた。


「必要ならナツキも使ってくれ」


 うん、無理ですよ

「いやいや、俺にそんなこと教えていいの??」


「ナツキなら大丈夫だ」


 俺が大丈夫じゃないわ!!



「ん?」

 俺は大量の銀銅の山の中に、金色に輝く石を見つけた。


「これって金貨?」


 他の効果とは違い、加工された形跡のないその金色の石は、ビー玉くらいの大きさだった。


「ああ、これか!?

 これは形見だ。

 父と母の。」


 おっと……

 話が暗い方にいってしまいそうだ


「それにしてもレイは魔法も剣も使えるなんてすごいな」


「最初からどちらも扱えていたわけではないよ

 たぶん、師匠がよかったんだ。

 生きるすべをいろいろ教えてもらったな」



 レイの師匠か……

 どんな人だろう?


「俺もがんばって、

 魔物くらい倒せるようにならないとな」


 そうでないとこれから旅もできない。

 もちろん、焦る必要はない。

 安全第一で行く


 俺が自分に言い聞かせていると、

 レイが笑った。


「大丈夫!

 ナツキは私が守るよ」


 照れくさいな。

 本当はこういうセリフ、俺が言いたかった。


 その後、夕食を食べながらレイの討伐の話を聞いたり、俺がリーフスティの話をしたりした。


 *****


 俺はリーフスティの店員として毎日仕事をし、

 日が落ちればレイの家でレイと一緒に食事をとる。


 そんな生活を続けて1週間。


 ある程度お金が貯まったら、帝国にいる大沢や葉山にどうにかして連絡を取ろうと考えている。

 けど、それも先の話だ。


 チート持ちのあいつらなら多少の問題は、問題にならないだろう。

 俺のように連続で死にかけることもあるまい。


 俺はここからはできるだけ安全に安定した暮らしをしていこう。

 そう考えていたし、そういう風にしていくつもりだし、そうなると思っていた。



 *********


 レイは今日も魔物の素材集めを行う。

 最近、高い買い物をしたせいもあり、一日の目標数をやや高めに設定していた。



 ナツキは遠慮しているようだが、

 銀貨、銅貨くらいどれだけ使われてもかまわないとレイは思っていた。


 あのドクダミだけでもレイの全財産を超える上、

 ナツキから短剣―――飾り気はないが、切れ味が抜群なそれを渡されていた。


 本人曰く、俺は使えないしあげるよ、と。


 何度か使って間違いなく上等な業物だとわかった。


 ナツキから受けた恩などと、もろもろを合わせれば、

 遠慮することはないのに。


 レイはそんなことを思いながら歩いていた。


 今日の自分で決めたノルマを達成し終え、帰路につく。

 いつもより少し遅くなってしまった。


 そんな空が夕焼けに染まる時間帯――――


「誰だ!?」


 ラープまであと少しという街道あたりで、レイは視線を感じた。


「おやおや、本当に勘が鋭いですね」


 レイの右手の空間が歪み、一人の男が姿を現した。

 その男は、このラープを収める領主直轄の魔法師の正装をしていた。


 グレーのコートに胸元の徽章。

 一般的な魔法師の正装だった。


「何かご用ですか?」


 レイは警戒して、いつでも剣を抜けるようにしつつ、尋ねた。


「そう、警戒しないでください。

 我が主、ブルガルタ様が貴女にお会いしたいとのことです。

 ぜひ、私と来ていただきたい。」


 比較的ラープの治安はいい。

 ほかの領地に比べ関税は安く、領主経営はうまくいっている。

 これには理由がある。

 決して領主が優れているからではない。


 最大の理由は、帝国だろう。

 ここはルグマ王国の中でもっとも帝国に近い街。

 この街ラープで、何か、それこそ住民の反乱など起これば、帝国に付け入るスキを与えてしまう。

 そんなことになっては目も当てられない。

 というわけで、王国の中でも優秀な人材が配置されている。

 ラープ市民との友好関係も、帝国に隙を見せないための一環だ。


 領地経営は国王から派遣された文官が、

 領主の警備及び国境警備は、国王から領主に貸し与えられた騎士団が行っている。


 それゆえ、ここの領主は形だけなのである。

 国王に従順で、領地経営などに興味のない者が選ばれている。


「日を改めてもらいたい」


 レイはそう返答するも、魔法師は頷かなかった。


「それはできません

 今から、お越しください」


 どうやらこれは、お誘いという名の強制なのだろう。

 いち傭兵程度に断ることもできず、レイはとりあえずその誘いを受けることにした。






お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ


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