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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第3章 ルマグ王国編 ~俺はラープの街で大切なことを学びました~
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第39話 リーフスティで働こう

 



 ルマグ王国


 最北端の街。

 ラープ―――帝国と接する街だけあって王国の中でも大きいほうの街だ。

 王国騎士団の部隊も駐屯していて、商業も盛んなこの町で俺の新たな生活が始まる。




 ルマグ王国――ラープの街


 北部に騎士の駐屯所


 南部に商業街、

 西部と東部に住宅街を備えた街で、俺は皿洗いをしていた。


 先輩のお兄さんが

「新人!皿洗い遅れてるぞ」

「すいません!!」


 コックのおっさんが

「新人、皮むき!!」

「了解です!」


 ウェイトレスのお姉さんが

「新人ゴミ捨て!」

「今行きます」


 年配の厳つい店長が

「新人料理出して来い」

「ただいまーッ」


 とにかく俺は忙しい。

 休む暇どころか、息つく暇もない。


 そう、俺は今、アルバイト中である。





 話はこのラープについた時にさかのぼる。


 あれから俺とレイは、何度か魔獣に遭遇するも危なげなく、

 主にレイのおかげでラープという街までたどり着いた。


 東部の、森に近い、レイの借りていた小屋に居候させてもらっていた。


 正直申し訳ないし、心が痛むが、そんなことを言っている場合じゃなかった。


 なぜなら、一文無しで、

 その上、帝国に追われているかもしれない。


 そんな状況だ。

 レイの言葉に甘えることにした。

 いつかはしっかり借りを返すつもりだ。


 服や靴、生活用品に食事、すべてレイに出してもらっている。

 借金がいくらになるとか考えたくないな。


 決してヒモになるわけにはいかない。


 レイにお願いして、飲食店のアルバイトを紹介してもらった。


 高級と格安のちょうど中間のような、

 南の繁華街にあり、一般庶民に親しみのあるその店は、リーフスティという。

 なんでも”親愛”とかいう意味があるとかないとか。

 詳しいことは分からないが。


 ともかく、そこで俺は働きまくっている。

 冒険者?それは生活が安定してからでも遅くない。

 今は日銭を稼ぐので精いっぱいなのだ。


「よう、新人、5日目だが、仕事は覚えたか?」

「はい店長!」


 店長は、顔は厳ついが、結構気を使ってくれる優しい一面もある。


 俺が働き出してすでに5日。

 朝、買い出しの手伝いから始まり、掃除、皿洗い、皮むきなどなど大忙しだ。


 昼は、まかないをいただき、夜は簡単な料理をいただく。

 もちろん給料から天引きだ。


 夜はレイの分ももらって帰り、日の沈んだころレイとともに小屋で夕食を食べる。


 そんなサイクルで俺は1日を過ごしていた。


 レイはというと魔獣や魔物討伐で俺よりもがっつり稼いでいる。


 む~~~

 男女逆じゃね!?

 と思わないでもないがこれが現実。


 今の俺はレイにおんぶに抱っこなお荷物である。


 どうにかして軽い荷物にするため今日も今日とて仕事に勤しむ。


「おい、新人!

 もう上がっていいぞ」

「はいッ!

 ありがとうございます」


「おう。

 レイちゃんにこれな!」


 店長はそう言ってバスケットを渡してきた。

 その中にはサンドイッチが入っていた。

 その具はなんと肉である。


「おお~~。

 に、肉!!」

「バカ野郎!それはレイちゃんの分だ!

 おめ~のはこっちだ!」


 店長の指さした方にはしなびた野菜とこれまたしなびた何か(ハムの様なもの)が挟まったサンドイッチが入っていた。


「……」

「わかったな!?」

「ええ、わかりましたとも!」


 目から汗が流れそうになる。


「それと!」

「え?、まだあるんですか?」


「レイちゃんに手ー出したらッ」


 料理を作っていたコックやお皿を下げていたウェイトレスもこちらを睨んでくる。


「いや……そういう――」

「出すんか出さへんのかどっちやッ!?」

「だ、出しませんッ!!!!」


 店長が関西弁とか、

 コックが包丁を向けてくるとか、

 ウェイトレスの持っている皿が今にも俺のほうに飛んできそうとか、

 そんなのは些細なことだ。


 店長たちは本気だ。


 俺は腹の底から声を出し誓った。







 ―――帰路にて


 どうやらレイはかなり人気のようだ。

 それは働き出して、いや応なく理解させられた。

 店長をはじめとした店の人たちが俺に厳しいことにも関係している。


 初日は、レイの恋人でない!

 と、それはもう懸命に弁解した。

 もし恋人だったら、どうなっていたかわからない。


 ほんと怖いわ。


 店は南の繁華街にあり、レイの家もとい小屋は東の森近く。

 移動には30分程度かかる。


 それくらいには大きな町である。


 繁華街は多くの人が行き来している。

 獣人も初めて見た。

 ここでは普通に共存しているようだ。


 帝都では見かけなかったから、やはり土地柄も関係しているのかもしれない。


 飲食街、武器や装備品の店、冒険ギルドなどを通り過ぎると途端に静かになる。




 このあたりからが住宅街。


 日本のように電気はない。

 明りを得るには、魔法かランプかどちらかだろう。

 ただランプは高価らしくてほとんど魔法だ。


 つまり、魔法の使えない俺は暗闇を暗闇のまま歩くしかない。


 大沢の使ってた簡単なランプの魔法だけでも聞いておけばよかった。




「ナツキ!」


 暗闇から聞きなれたやさしい声が聞こえてきた。

 これが低いおっさんの声ならもうどうしようもないが、

 声の主は、言わずもがなレイである。


「おぅレイ!

 今帰り?」

「ああ、ナツキも?」

「そうだよ。

 みろ!店長から肉のサンドイッチだ」

「本当ね。すごくおいしそう

 ふたりで食べよう」


 やさしい。

 店長とは大違いだ。

 ニカッと笑う笑顔がなんと可愛いことか。

 クールな女性だと思っていたが、最近は結構笑うし、感情表現は豊かな方だ。

 それに言葉もだんだん柔らかくなってきている。


 外では魔物などがいるから気を引き締めているのだろうか。


 ふたりは並んで小さな小屋に帰宅した。





「明日から2、3日帰ってこられない」

 そんなことを言い出したのはレイが、食事を終え、寝支度をしていたときだった。


「何かのクエストとか?」

「国境付近にオークの群れが現れたらしい

 その討伐隊に参加することになった」


「そ、そうか……」


 心配だ。

 無能な俺が言えた義理ではないが、

 危険なことはなるべく避けてほしいな。


「あんまり、危ないことはするなよ」

「ああ、任せろ」


 それ以上の会話はなく二人はただボロイ布をかぶせただけの床に就いた。



 美少女が隣に寝ている。

 それは決して意識してはいけないことだった。






お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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