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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第2章 奮闘編 ~状況が 俺に楽をさせてはくれません~
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第33話 俺とレイと、そしてこれから 前編

 


 村に戻った俺はすぐに治療院に駆け込んだ。

 夜も深まったころだというのに、治療院には数人の青年が待機していた。


「これをお願いします!!」


 俺の持っているドクダミを見て青年たちが驚く。


「本当に持ってきたのか」

「大丈夫か?」

「濡れているぞ!?」

「替えの服を!」


 青年たちが騒ぎだす。

 全身ずぶぬれで切り傷、擦り傷だらけだから仕方ないな。


 ドクダミは治療院のおそらく医者っぽいおばあさんに渡した。

 すぐに煎じて少女に飲ませると言ってくれた。


 これでひと段落。

 もう大丈夫だろう。

 少女は本当に危ないところだったらしいが。

 間に合ってよかった。


 持久走の苦手な俺が良くもあれだけ走れたものだ。

 その後、俺はすごく疲れていたのだろう、すぐに身体を休めることにした


 *****


 朝、起床する。

 村の人にもらった服に、靴を履き、外に出る。


 目指すは治療院。


 少女は無事だろうか!?

 ほんとうに申し訳ないことをした。

 やっぱり謝らないとな。


 治療院に入り、扉を開けた。



「………………あ」



 着替え中……


 少女は、見事な動作で机に上のコップを放る。

 それは、放物線を描くことなく、一直線に俺の額に吸い込まれ――――


 ガンッ!


 俺の額にクリーンヒット


 これがいわゆるテンプレ!

「いッつ――――」

 地味に痛い。

 すぐに部屋から出て、治療院の外に行った。

 俺は両手で額を抑え、痛みに耐えた。



 2,3分くらいして痛みが引いてきた。


 俺は当初の目的通り少女のもとに向かう。

 足取りは先ほどより重かった。


 罵倒は受け入れよう。

 でも、暴力はなるべく抑えてほしい。

 俺はMじゃないからな。


 扉を開け、俺を待っていたものは――――



 *****




 俺はものすごく困っていた。


 先ほどの少女。

 よくあるテンプレなら間違いなく俺は殴られるか罵倒されていただろう。

 故意とか事故とか関係ない。

 それがお決まりだ。

 そして俺にもそれを受け入れる準備がある。


 ―――痛くない程度で勘弁してほしいが。



 某釘〇キャラなら皆、逆切れ必至であるこの状況なのに。


 目の前の少女は――――



 これは見事な土下座をしていた。


 俺に向って……


 うん、やめて。

 さっきの音で村の人が来てる、ていうかこっちを見てるよ。

 わらわらと青年たちや村の人たちが集まってきている。


 治療院のおばさんも困惑。


 俺、当惑。


「申し訳ない」

 凛とした真っ直ぐな声。

 それが、少女から発せられた。


 額の傷のことだろうか?

 そんなもん唾でも付けとけば、大丈夫だ。



 じゃなくて

「いや、気にしていません

 どうか頭を上げてください

 いやほんと顔上げてください

 お願いします!!!」


 土下座している少女に土下座する勢いでお願いする俺。


 顔を上げてもらうのに10分。


 小さな村だから、ほとんどの人に見られた。

 少女を土下座させる俺。

 そんなイメージはマズい。


 村人に何とか説明し、少女を説得した。

 青年たちが気を使ってくれたらしく、少女とふたりで話すことになった。



「改めて、ほんとうにありがとう

 聞けば、危ない状態だったとか。

 貴重な薬草も使ってくれたそうで……」


 申し訳なさそうにする少女


 俺はその瞳を直視できない。

 だって危ない目に合わせたのは俺だから。


 しかも薬草は、頂いたもの。


 さらに治療してくれたのは、村と治療院の人。


 そう、俺は……

 何もしていない。

 ほんとうに申し訳ない。


「い、いや。

 俺は何もしてないんですよ。

 村の人や治療院の人が頑張って……」


「いえ、謙遜なさらずに」


「謙遜とかじゃないんです

 あと敬語もやめてください

 普通でいいですよ

 あっ名前はなんていうんですか?」


 凛とした少女の眼差しが強すぎる。


「私はレイ

 貴方も敬語はやめてくれ」


 ふふっと少女―レイは笑った。


「そういえば、銀狼なんて呼ばれていたこともある

 好きなように呼んでくれ」


 おっと……二つ名持ち!?

 これはもしかしてすごい人なのだろうか……


「えっと……銀狼さん?」


「……それはあまり好きではない」


「…………」


 選択肢はひとつかよ


 だが、しかし

 俺は初対面の少女を呼び捨てにできるほどのメンタルは持ち合わせていない。


 “レイ”と言うこともできず、にこやかに少女に見つめられ、

 俺は顔が熱くなるのを感じた。

 だって、凛とした少女がこんな笑顔もできるなんて反則だろ。

 そりゃ顔も赤くなるわ!


 そんな場を救ってくれた治療院のおばさんだ。


「話はあとにしんさい。

 いまはごはんさね」


 朝食を用意してくれていたらしい。

 ありがたいことに俺の分もある。



 野菜のいい匂いが部屋に充満する。

 おばさんに向けてニコッと笑う少女。


 普通に可愛い。

 初対面から怒涛の展開で気にする余裕がなかったが、結構美少女だ。

 剣を振るうだけあって、身体が引き締まっている。

 繊細な顔立ちにスレンダーかつバランスの取れたプロポーション。


 うん、好みだ(笑)


 美少女との朝食は、しゃべらなくても楽しい。

 俺は異世界でまた一つ学んだ。




お読みいただきありがとうございます


今日も晴れ

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