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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第2章 奮闘編 ~状況が 俺に楽をさせてはくれません~
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第32話 ボーイ ・ meets ・ ガールズ 4

 



 少し休んでいると、女性から麦湯を持ってきた。

 昼からなにも食べていなかった胃にはちょうどいい。

 独特な味だが、マズくない。


 奴隷としての生活で俺の味覚は鍛えられたのだ。

 マイナスな方向で。


「美味しかったです。

 ごちそうさまでした!」


 お盆を下げに来た女性に言った。


 すると女性は何かを持っていた。

「……え?」


 女性から小ザルを渡された。

 ザルの中には見間違うはずもない、懐かしい、日本で幾度となく見たドクダミが!


「ドクダミ!?」


 思わず声が出た。


「庭に生えていたものです。」


「え?でも、これ……」


 銀貨3枚……

 青年の言葉が頭をよぎった。


 俺が受け取っていいのか迷っていると女性は話し始めた。


「わたしは、もうそんなに長く生きられないんです。

 不治の病にかかり、余生を過ごしていました。

 もう誰とも“会話”をすることはないと思っていたんですけどね……



 ……世の中って不思議なものですね」




 不治の病……

 女性は、肌の出ない長袖長いスカート的なものを着ているが、

 足取りや会話でも、とてもそうは見えなかった。


 女性の話を俺は真剣に聞いた。


「これはそのお礼です

 あなたがこうしてわたしと“話している”ことの」


「お言葉に甘えて頂きます。」


 俺は素直にドクダミを受け取った。

 くれるというならもらおう。

 日本でもサービスや無料という言葉にはめっぽう弱い方である。


 その後、急いで帰る旨を伝えると、

 助けてくれた女性――お姉さんが村の近くまで送ってくれることになった。

 何から何まで本当に感謝だ。

 なんでもお姉さんは魔法を使えるらしい。


 今も、火の玉を明かり替わりに夜道を照らし、進んでいく。


 特に会話はなかった。

 お姉さんの集中を切らしても悪いと思いひたすら後に続く。


 ああ。

 見覚えのある川岸だ。


「あの、お姉さん、もうここまでで大丈夫ですよ。」


 別の小道を通り、別の場所に出たが、そこは村の近くの川岸だった。


 村までは100メートルほど。

 村の明かりがうっすらと見える。


「本当に何から何まで、ありがとうございました。」


「いえいえ、お身体は大切にね。」


「はい。」


 その通りだ。

 俺は最近、死にかけ過ぎている。

 ここは日本ではない。

 異世界だ。

 それを心にしっかり留めておかなければ!


 川を渡り終えた。

 振り返る。


 そこにはまだお姉さんが居た。

 異世界にも心優しい人がたくさんいる。

 それが俺はなぜだか無性にうれしかった。


「あの!

 今度は遊びに行きます

 たくさんお話ししましょう!!」


 俺が叫ぶと、お姉さんは手を振って帰っていった。


 山で療養中な人に遊びに行きますは違ったか!?

 でもお姉さんは俺とただ二、三話したたけで喜んでいたようにも感じた。


 いつか、また来よう。

 そう決意した。






(仮面の女性)


 人がわたしを“視る”ことはできない。

 そういう呪いだから。


 人がわたしに“恐れ”を抱く

 そういう存在だから。


 人とわたしたちは相いれない。

 それは常識だった。


 でもお母さんは、そう思わなかった。

 人と共に歩んでいける。

 お母さんの言葉をいつも間近で聞いていたからだろうか。

 わたしもいつしかそんな未来を、世界を、夢見ていた。


 でもそれは果てしなく遠い道のりの先にある。

 それは、限りなく不可能に近い。


 数年前から、わたしはそう思い始めていた。



 今の場所には、それからいろいろあって行きついた。

 余生を静かに暮らそうと思い、

 山の中に一人で住んでいる。

 周囲にはヒト払いの結界をして。



 そして、今日

 誰かがヒト払いの結界を超えた、そういう反応があった。

 わたしが様子を見に行くとそこには、モリイノシシに悪戦苦闘する青年の姿が目に入った。


 思わず助けてしまった。

 きっとこれはお互いにとって良くないことになるかもしれない。

 そう思ったけれど、気を失った彼をそのままにしておけず、

 結局、部屋で休ませることにした。


 それから――



 彼はわたしを“視る”ことができた

 彼はわたしに“恐怖”することはなかった

 彼はわたしと“会話”した



 これは神様からの贈り物かもしれない

 そう思った。


 いつか、また来る。

 もちろん、それが方便だとわかっている

 けれど、そう言った彼の言葉を待つこれからの日々は、

 昨日までの日々より少し鮮やかになった。






お読みいただきありがとうございます

ご意見・ご感想・ご指摘大歓迎です

今後ともよろしくお願いします


今日も晴れ

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