第31話 ボーイ ・ meets ・ ガールズ 3
俺は来た道を戻ろうとして……
そうですよねーーーーー
茂みから小道を眺める。
前方、俺の来た道には、例のイノシシが2頭いた。
人間の通れる道、そりゃ獣も通れるわな。
なんで深く考えなかったのだろうか?
後悔しても始まらない。
獣全般夜行性!
昼間は安全安心
そんなことを言っていた青年の顔が頭に浮かんだ。
…………ってどこがやねん!!
突っ込まずにはいられない。
少しずつ近づいている。
匂いで追われているのだとしたら逃げないと。
仕方ない。
俺はもの音を立てないように小道を先に進んだ。
だがしかし、
うん!!!!!!!!!!!!!!
……追われました。
「チクショウ!!!」
2頭。
短剣でどうにかなるか!?
……難しいだろうな。
チート持ちがマジで恨めしいぃぃぃぃぃ
必死で走る。
全力疾走。
5分は良く持った方だと思う。
足がもつれ、転ぶ。
1回転して地面に倒れ込む。
クソッ!!
あの名前もわからない子を俺のせいで――
せめてあの子だけでも助けないと!!
やってやる!!!!!!
短剣を抜き、突進してくる相手に向けて、両手で構えた。
俺はただ、短剣を動かないように固定するだけ。
狙い通り、俺に体当たりしようとしたイノシシもどきの頭部に短剣が突き刺さる。
イノシシもどきのスピードを利用して剣を食い込ませたわけだ。
だが、誤算があった。
イノシシもどきが暴れ出した。
頭を左右に振る。
すると、頭部に刺さった短剣持つ俺も大きく振られる。
一体どんなチカラがあるんだ!?
俺はやせ型といっても、体重60kgはある。
それをいとも簡単に持ち上げ、振っている。
そんな状態でも俺は何とか短剣を食い込ませて、
イノシシもどきの息の根を止めることに成功した。
「はぁー!はぁー!」
様子をうかがっていたもう一体が近づいてくる。
クソッ一体でもギリギリだったのに!
じりじりと後退する俺。
様子をうかがいつつ間を詰めてくるイノシシもどき。
仲間と同じ失敗はしないってことか!?
頭いいな!おい!!
知恵のある魔物ほど厄介なものはない。
そう俺は思った。
イノシシもどきは、警戒しつつも、俺との距離を確実に詰めてくる。
どうする!?
俺に”戦い”の心得などあるわけもない。
普通に高校生をやっていた一般人だ。
疲れもあっただろう、
初めての実戦と呼べるものを終え、心身ともにボロボロだった俺は、
ほんの一瞬、まばたきしたところを突かれた。
目を開けたらイノシシもどきが瞬間移動したかのように見えたほどだ。
先ほどのように剣を構える暇もなく、
俺は地面に踏ん張れない形でイノシシもどきの体当たりを受けた。
グゥッ
ガッ
まるで自動車にはねられたかのように、俺は吹っ飛んだ。
まずい!!
このままじゃ……
そうは思うも、意識が俺の身体から離れようとする。
クソッ
消えかける意識を無理やり保ち、顔を上げた。
すると、目の前に迫っていたイノシシもどきが、
宙に浮いていた。
「なっ!?」
そして、イノシシもどきが呻きをあげ、動かなくなった。
俺はそれを見て、安堵し、疲労こんぱいで倒れ込んだ。
意識の暗転する一瞬前、誰かが、俺のそばにきたような気がした。
****
目を覚ませる……つまり俺は生きているということだ。
全身、痛いが傷はないな。
……おかしい。
どうしてこんなところに?
そんな疑問はすぐに解消された。
どうやらまた助けられたらしい。
村の家の寝床よりは上等と思えるところで俺は寝かされていた。
本当に気絶って何度目?
いい加減、俺は飽きたよ。
そんなことを思える自分自身に安堵し、頭を働かせていく。
俺のチートは、九死に一生が九死に八生になるものなのでは!?と本気で考えてしまうほどだ。
運が良かったのだろうか?
3度続けば必然とは誰の言葉だっただろうか!?
『気が付きましたか?』
声をかけられた。
でもどこから聞こえてきたのかわからない。
小さいが透き通るような声だった。
助けてくれた人だろう。
「はい、危ないところを本当にありがとうございました。」
少し大きめの声で返事をした。
何故か?
それは声の主がまだ出てきていないからだ。
この場には簡素なベッドのみ。
目の前の扉は開けっ放しになっている。
「あの……どうかしましたか?」
一向に現れない恩人に声を掛けた。
『……すみません。
今晩はゆっくりなさってください。』
声からして若い女性だ。
山の中、一人で生活しているのかもしれない。
ここは異世界。
女性にとって若い男性は、悲しいかな、時として恐怖の対象になることもある。
助けていただいただけでも本当に感謝、感謝だ。
この上、余計な心配をさせてはいけない。
俺はそう考えた。
「そのままで大丈夫ですよ。
俺はすぐに出ていきます。
それと、本当にありがとうございました。
御恩は一生忘れませんから。」
体力は少しずつ回復していた。
立ち上がり、部屋を出ようとするが、膝をついてしまう。
「だめですよ。
無理をしては」
扉のすぐ近くにいたのだろう女性が、駈け寄ってきて支えてくれた。
部屋の窓を見た。
辺りはかなり暗い。
既に夜になっている。
身体は動くが、走るのは無理そうだ。
この世界で、俺は無力だ。
日本の夜道とは違うのだ。
イノシシ1匹にも簡単に殺される。
急いで戻らないといけないのも事実だが、そもそもドクダミがまだ手に入っていない。
「すみません。
このあたりでドクダミの生えているところとかって知りませんか?」
ダメもとで聞いてみる。
「あなたが一人で森に入ったのはドクダミのため?」
「はい……
実は知り合いが俺のせいでモリグマの毒を受けてしまって。
街だと高すぎて買えないので、森で探していたんです。」
話ながら俺はベッドに戻された。
何から何まで本当に感謝だ。
「ありがッ」
俺は驚きで言葉を詰まられてしまった。
が、すぐに言い直す。
「ありがとうございます!」
驚いた理由――それは彼女が鉄の面をつけていたから。
模様や色付けなどの一切されてないそれをただつけていた。
目や口に穴が開いているわけではない。
ただ鉄の板を顔に張り付けている――そんな感じだ。
思わず、言葉を噛んで、息をのんでしまった。
助けていただいたのになんと失礼なことか!?
そういう習慣か、顔を見せたくないのか?
聞きたいことはあるが、恩人に失礼なことはしたくない。
感謝の言葉だけを言い、俺はしばらく休むことにした。
お読みいただきありがとうございます
今日も晴れ




