第26話 ファナ
120万――もとい異世界人のナツキさん。
異世界人というから初めはどんな人だろうと思っていたら、
案外普通の人でした。
すこし子供っぽいところがあり、なにか異様なこだわりがあるようですが、
普通の人だと思います。
私のことを未だに150万と呼ぶのは、もうあきらめましたが。
ナツキさんのお話はどれも信じられないモノばかりでした。
人が山ほどのある大きな敵と戦ったり、
天にみえる星々を旅したり、
そこで何か大きな乗り物で戦ったり、と本当に信じられないお話しばかりです。
戦いのお話しばかりかと思えば、
災害にあった姉弟のお話や、
ろぼっと!?とかいうヒトとおじさまのお話などすごく感動できるお話もたくさんありました。
異世界。
それは想像もつきません。
一体どんなところなのでしょうか?
それに、ナツキさんも戦場で戦った経験がおありだとか。
こう言っては、失礼かもしれませんが、とても戦えるようには見えないのです。
そうですね、よくて騎士見習いといったところでしょうか。
それでも、聞くところによるとナツキさんはかなりお強いとか。
いろいろなお宝を手に入れたそうです。
ヒトは見かけによらないのですね。
楽しくお話をしていたとき、ナツキさんがため息をつきました。
そこで私は私たちを購入したであろう領主のことについてお話ししたのですが、
その時からでしょうか、ナツキさんの様子がおかしくなりました。
もっとも、もともとおかしかったのですが、それがより一層おかしくなったのです。
例をあげるなら、常時内股になりました。
寝ているときは必ず手でお尻を押さえています。
何かのご病気なのでしょうか?不思議ですね。
あとは、目が鋭くなったように思えました。
何日かその姿を見ていて私は気が付きました。
ナツキさんは逃げようとしているのだと。
何やら計画を練っているようですが、
私には教えてくれません。
それどころか最近は返事すらもらえない始末です。
それでも、ナツキさんがトイレに何度も行かれて、
騎士さんに怒られそうなときはフォローしました。
でも、そのあと、私への扱いは変わりませんでしたが。
こう言っては何ですが、私はそれなりの身分ですからこのような経験は初めてでした。
まぁそれほど嫌なものではありませんでしたが。
なんというか、無視されるというのは、それはそれで新鮮ですね。
ですが、そうも言っていられなくなりました。
ついにナツキさんが馬車から逃げる時が来たのです。
さすがにこのときばかりは一緒に逃げてくれるものだと思っていたのですが。
さすが異世界のお方。
予想のななめ上を行かれました。
でも、その後、ナツキさんはしっかり私と一緒に逃げてくださいました。
心優しい方でよかったです
そして、今、私たちは廃村に着きました。
今夜はここでお休みすることになります。
「少し外しますね」
「ん?
どうした?」
殿方として少しは察してほしいのですが……
「あっ!トイレか?
そう言ってくれればいいのに」
ナツキさんにはもう少しデリカシーを学んでいただきたいですね。
お花摘みの後、私はナツキさんの元へ戻る途中で紫色の石を見つけました。
「綺麗」
もしかしたら、今は亡きこの小国で使われていた硬貨でしょうか?
そんなことをしていて少し長く時間を使ってしまいました。
そして私が戻るとそこには、
ナツキさん以外にもう一人の女性がいました。
その女性は――私の見知ったその女性は、今まさにナツキさんを締め上げている。
そんな光景が目に飛び込んできました。
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今日も晴れ




