第24話 純潔を死守せよ 前編
男色だと!?
ぶっちゃけ150万が買われたから男の気はないと思っていたのに
まさか、趣味が男色だと……
ウソだと言ってよーーーーーーーーーーーー
「あの、顔色が優れないようですが……
大丈夫ですか?」
「逆に、今の話を聞いて顔色が優れる奴を紹介してほしいくらいだよッ
150万を買うくらいだから、俺は大丈夫だと思っていたのにッ!!」
思わず心の叫びが漏れた。
が、そんなことを気にしている場合ではない。
俺の貞操の危機だ。
使う前に使われてたまるかッッ!!!
「えっと……
その発言は、それはそれで、
ちょっとひどくないですか?」
「ふっふっふっ
あまり俺をなめるなよ
異世界ッッッ!!!!」
「あの~
聞いてます?」
とりあえず、無視だ。
俺は守り通すぞ!
純潔を!
ヒトは危機に直面するとき、己の内に隠された潜在能力を引き出せる生き物である。
まさに今の俺がそうだった。
牢屋の中から俺は、周りを、護衛の騎士たちを、馬を、とにかく観察し続けた。
そして、
見つけた!
脱出の糸口をッ!!
この馬車において、夜の過ごし方は2通りある。
一つが、野宿だ。
街道の脇に馬車を止め、護衛の騎士はテントの様なものを使い、その中で休んでいる。
俺たちは牢屋の中だが。
もう一つは、夜間も進行し続けるというものだ。
この2つは、俺からしてみれば、あまり大差ない。
どちらにしても牢屋の中で寝ることになる。
夜間進行の時、時々馬車が揺れるくらいの差しかない。
だが、護衛の騎士の連中にとっては大きな違いだ。
しっかり寝られるのと、警戒し続けるのは。
そして、糸口だが、
夜間進行を行った次の日の夜、
監視は目に見えて甘くなる。
これを逃すとチャンスはない!
俺は、ただひたすら、チャンスを待った。
2日前にちょうどラインを出て、現在は山脈を迂回するための街道を進んでいる。
今までの平坦な道と違い時折坂道を上がっていくことが増えた。
道も当然舗装されていなく、振動も増える。
切実にお尻が痛い。
「150万は怖くないのか?」
その日、チャンスを待つこと以外、特にすることがなくなった俺は、150万に尋ねた。
「はい、怖くはありません。
わたくしは信じていますから。」
おっと、また神様かな!?
信仰心とは恐ろしい。
異世界ものだけじゃなく、たびたびアニメや漫画でも宗教関係の話はあるが、そう言ったものに縁のない人間としては、そういう考えはよくわからない。
夕刻、馬車は丘陵地帯に差し掛かっていた。
山脈は避けたが、どうしても高低差のある地帯をすべて避けるわけにはいかない。
都市ラインより南東のそこは、西側には山脈が、東側には穀倉地帯が広がっていた。
西に沈む夕日が山脈と重なって輝いている。
東には夜が迫っていた。
そして、その日、野宿することはなかった。
そう、これは待ちわびた“チャンス”の到来だ
作戦その1
「すみません!
お腹痛くて……
トイレにッ!!」
「貴様、またか!?」
そう、俺は何度目かわからないトイレタイムをもらっていた。
夕食後、めちゃめちゃお腹が痛くなったという設定だ。
一度馬車を止め、俺は下ろされ、茂みの中でふんばる。
そんなことが5度繰り返された。
だが、6度目でさすがの騎士も切れそうになった。
「あ、あの、私も、
その、お願いします」
ここで150万も願い出た。
これには騎士も応じるしかない。
よくわからんが、ナイス援護!
作戦その2
トイレのたびに、俺はコツコツと小石を拾っていた。
その小石を馬車側面の格子から街道脇の茂みに投げる。
「なんだ?」
「どうした?」
「今、むこうのほうで何か動いたような気がしたんだが」
「よし、確認するか」
カサカサと音が鳴った箇所を調べる騎士。
毎度毎度、真面目に警戒する。
ありがたいことだ。
作戦その3
これまた、トイレの時に俺は草も集めていた。
今度はこれを使う。
馬車の床の隙間から、草を落とす。
すると、それを食べようとした後続の馬は、
バランスを崩したり、立ち止まったりする。
この作戦を繰り返すことで、俺は護衛の騎士の体力、集中力を減らすことに成功した。
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今日も晴れ




