第23話 150万と120万 後編
そんな会話が続いたころ
「おい、出ろ。」
ここでお呼びがかかった。
トイレ休憩兼昼食だ。
ここでひとつうれしい誤算が!
なんと食事が豪華になっていたのだ。
野菜入りのスープにパンが3つ。
昨日までと金の出所が違うためだ。
金持ち領主が奴隷の飯代をケチんなくてよかったなどと小さいことを考える。
午後は馬車の中で寝た。
久しぶりにお腹いっぱいで眠くなったのだ。
起きると夕食前。
「お目覚めですか?」
「ああ、飯か?」
「貴方は結構神経が太いのですね。」
「いや、150万には言われたくないよ。」
夕食も昼食と同じ。
昼寝をしても夜、しっかり寝れた。
牢屋の中で毛布1枚でも人は適応できる。
異世界に来て俺はまたひとつ博識になった。
「どれくらいかかるんだ?」
次の日も朝から馬車に揺られていた。
見えるのはやはり緑!緑!緑!
もう見飽きた。
俺の質問に答えたのは150万だ。
「ボルガ領には直接いけないんですよ。
帝都の南一帯には大きなアルス山脈がありますから。
南西のボルガ領には、一度南下してラインを経由して行くことになります。」
なるほど。
ラインまで確か1週間。
そのあとまだ移動するのか。
飛行機とか車とかないの?
「ラインからどれくらいかかるの?」
「すいません。
ボルガ領のどこに行くかで日数は変わってきます。
ボルガ領は広いですから。」
小国といえど、もとは一国だった領土だ。
「まぁ、あまり心配はいらないでしょう。」
そうだな。
150万の言う通り、俺たちが心配することじゃない。
それに、これはよくあることだ。
そう、奴隷イベント。
異世界モノでは、必ずと言っていいほどの遭遇率を誇るイベント。
俺の希望である、奴隷な少女を助け出すイベントにはならなかったが、
奴隷落ちイベントも十分知識として持っている。
まぁだいたいがロクなことにはならないが……
それでもこの後、買い手が筋肉紳士だったり、生き別れの妹に出会ったり、そういう可能性も無きにしも非ず。
悲観すること無かれ。
俺は不安な気持ちを押し殺して、妄想に浸った。
もう、それくらいしかすることがなかったのだ。
*************
――――10日後
始めは、妄想して、飯を食って寝る。
そんな生活をしていたが、2,3日で飽きた。
相も変わらず、馬車からは森しか見えない
護衛の騎士と話す機会など皆無。
そんなわけで、150万といろいろな
――魔法少女の運命に抗う軌跡、
巨人との熾烈な戦い、
巨大ロボで宇宙の覇者との決戦、
ダンジョンを攻略する英雄譚、
異世界に行って神と戦うニート、
ハーレムを作る軍オタなどの――話をした。
もちろん、どれもこれも某作品だが関係ない。
そう、おとぎ話や伝承の様なもの。
最期に、ほんとかどうかわからないけどね。
これを付け加えることも忘れない。
俺が主に異世界の(創作物の)ことを話し、150万が聞く。
そういう関係が続いた。
一つ話を聞くたびに驚いたり、悲しんだり、喜んだり
150万は、とにかく忙しいヤツだった。
ちなみに、俺〇いるや、あの〇な、ソルティー〇イ、東京マ〇ニチュードでは号泣だ。
話の合間、俺は思わず、ため息をついてしまった。
これからの生活を思えば、それも仕方ないことだろう。
「どうなされたのですか?」
「売られた先のボルガ領ってところのことがふと気になってな。」
「ボルガ領は、帝国の中では四季があり、豊かな土地の広がる場所ですよ」
「へぇ~150万は行ったことあるのか?」
「い、いえ
そう、聞いたことがあるだけです」
「なら、俺たちの買い手の話とかも何か聞いたことあるのか?」
これは重要だろう。
どんな買い手なのかによって大きく人生が左右される。
「えっと、噂でよければ……
知っています」
なんだ?今の“間”は?
少し聞くのが怖くなってきた。
俺は心を決める。
「よし、聞こうじゃないか!」
「ボルガ領当主、アーベント公爵は好色家です。
各地の珍しい“モノ”を集めるのが趣味として知られています。
あと……男色とのうわさも……なきにしもあらず…………
いえ、ありませんね
忘れてください」
にこっと微笑むが忘れるわけないだろ!
今まさに脳裏に焼き付いたわ!!!
男色だと!?
ぶっちゃけ150万が買われたから男の気はないと思っていたのに
まさか、趣味が男色だと……
ウソだと言ってよーーーーーーーーーーーー
お読みいただきありがとうございます
ご意見・ご感想・ご指摘大歓迎です
今後ともよろしくお願いします
今日も晴れ




