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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第1章 召喚編 ~異世界 俺にはわりと厳しかったようです~
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第2話 異世界に着きましたが、 前編

 



 俺は、山から、再び目の前の自身の背丈を優に超える石板に目を移す。


 日本語ではない。

 英語でもない。

 ミミズがくねったような字だ。

 黒板の板書を寝ながら書いたようなそれを俺はただただ、呆然と眺めた。


 そして考える。

 ここはどこか?を。


 この場が、教室ではないことは明らかだ。

 今日こんにちの科学では瞬間移動でさえ、実現不可能である。


「ふぅー」

 あちゃ――――

 俺は思わず、両手で顔を覆った。


 これはアレだろう。

 幾度となく妄想してきたいわゆる異世界ものの第一話に酷似しているこの状況。

 そう、間違いない。

 異世界転移とかいうやつだ。



 俺たちクラスメイトは光り輝く円陣の中に立っていた。

 いや、さっきまで教室で座っていたのだけれど……


「成功だ!!!」

「うぉぉぉぉぉっぉ」


 さっきまで静まり返っていたはずが、今は大歓声だ。

 円陣の外側にいかにもって感じなローブを着ているおっさんおばさんが歓喜してる。


 ああ、こりゃ異世界転移モノだ。

 間違いない。

 俺は再認識した。


 と、同時に俺は自分でも驚くほど冷静であることを自覚した。


 俺は辺りを見渡す。

 クラスメイトの反応はそれぞれだった。

 ほとんどが状況について行けず、呆然、唖然としている。


 そんな中、一人の男が前に出た。

 騎士団長と名乗る人の指示で一行はぞろぞろと歩いていくことになった。

 というか、連れていかれた。


 デカい広間から廊下に歩みを進める。

 左右に絵画やら調度品やらがたくさん置かれていた。

 どれも高そうだ。


 クラス全員プラスいろんな人を含めてもこの廊下は狭いとは感じさせなかった。

 それほどに広かった。



 ん?

 俺は数人の顔色が悪そうなことに気が付いた。


 ふらついてる女子もいる。

 どうしたんだろう?


 そんなことを考えていたらチームリア充美少女の葉山が倒れた。

「結衣!?」

 すかさず駈け寄る坂本瞬。


 イケメンのスペックおそるべし。

 ことも何気にお姫様抱っことは恐れ入る。


「だ、だいじょうぶ」

 頬を赤らめながらいう葉山。


 もっとも赤いのは恥じらいではなく体調不良からくるものだろう。

 他にも数人同じような症状のクラスメイトがいる。


 立て続けに3人が倒れたり座り込んだりした。

 クラスメイト諸君は、軽いパニックだ。


「山本どうしたん?」

「あーし?なんかだるいんよ」

 とか


「岡ちゃん!?」

「ご、ごめん、なんか気分悪いよぉ」

 とか


「関、大丈夫か?」

「・・・」

「眠ってるみたいだね」

「かなり熱いぞ。すごい熱だ。」

 とか


 それぞれ近くにいた者が介抱している。


 俺も驚いたよ。

 何にって?


 この状況だよ。


 俺たちの前後に魔法使い(仮)その前後に騎士の人たち。

 そんな位置取りで移動しているのだが、クラスメイト諸君が立ち止まり、おどおどしている中、騎士団団長は言った。


「皆さま、落ち着いてください。とりあえず、体調の悪い方はこちらで治療院のほうへ運びます。

 ……おい」

「「「はっ」」」


 呼ばれた騎士は体調の悪いクラスメイトを丁寧に担いで、女性には担架のようなもので運んでいく。


「皆さま、とにかくまず今の状況をご説明します。

 皇帝陛下がお待ちです。こちらにどうぞ。」


 騎士団長の一声で歩き出す。


 そう、この状況に驚いた。

 騎士団長や魔法使いやその他の兵士は、まるでこうなることが想定されていたかのように驚いていない、ということに俺は驚いていた。


 普通、目の前で人が倒れたら驚く。

 そう、驚くことが正常な反応だ。


 だが、異世界人は驚いていない。

 まさかこんな感じの発作が日常茶飯事で見慣れてます!とかはないだろう。


 ならおそらくこの事態は想定されていたということになる。


 クラス転移モノの出だしはあまりよくない。


 俺の読んできた小説や見てきたアニメでは、

 異世界人を召喚するような国にロクなものはなかった。


 だって、考えてほしい。

 異世界から人を召喚する。

 召喚される側の人間に許可も得ずに。


 朝目が覚めていきなり外国に連れてこられたらどうだろうか?

 普通なら困るだろう!?


 その人の生活を無視して勝手をしているのだから。


 挙句の果てに、こういういわゆる異世界召喚系のお話には続きがある。

 なんと、召喚した理由が、世界を救ってくれだとか、勇者になってくれだとか、魔王を倒してくれだとか。

 そんなことだ。


 勝手に連れてこられ、無理難題を吹っかける。

 今時のブラック企業でも、もう少しましな待遇だろう。


 以上から一つの結論が導ける。

 勇者だかを召喚するような国にロクな国はない!と。



 そして俺は思った。

 今回もそのテンプレの例に漏れず、ダメ系な予感がする。


 騎士団長はさっき皇帝陛下といった。

 そうおそらくここは王国ではなく帝国なのだ。


 この違いは、地球で言うと

 一つのファクタァ―に、意欲的に侵略するかどうかみたいなものがある。

 大日本帝国は、それで世界に喧嘩を売った。


 もし帝国ならばいかん。

 もう、俺たちは戦争の道具決定な勢いである。


 広い空間が前方に見える。


 謁見の間とかいうところだろうか!?

 天井は見事なガラス張り。

 窓の景色でこの建物がかなり高い場所に作られていることがわかる。

 遠くに家々が見えたからだ。


 広い部屋の中心にある段上のさらに上に、とびきり立派な椅子がある。

 おそらくその椅子に座っている人物が皇帝なのだろう。

 脇に数人の家来!?しもべ!?そんな人が控えていた。


 その少し離れた陛下から見下ろされる位置に椅子が並べられてあった。

 その広間には中心に椅子があるだけで、ほかには何もない。

 案内していた騎士や魔導士は部屋の隅に歩いていく。


 俺たちは、

「皆さんどうぞお座りください。」

 そう言われ、各々椅子に座った。


 椅子の数が少なかったのか、メイドと思しき人が椅子を3つ運び入れていた。

 前列10後列10の椅子

 26人のクラスで教師の高山を入れて27人

 4人脱落(治療院行)で、今が23人


 ということは、始め20の椅子があった計算だな。


 後列の後ろに置かれた椅子に俺は座った。


 うん、もちろん一番最後に。


 椅子と椅子の間隔がやけに広いのは部屋が広いからだろうか?

 などと考えていると陛下の挨拶が始まった。


「遠路はるばるようこそお越しくださいました。

 我が帝国は皆さまを歓迎します。」


 うん、帝国だったわ。

 そして上からなしゃべり。

 ダメ系確定の瞬間である。


 この後は宰相さんが引き継いで説明らしい。

「私は宰相のマースと申します。

 ではまずみなさんの今の状況についてお話しします。

 端的に言うと皆さまは神の御意志によりわが帝国に召喚なされました。」


 まぁそこからはテンプレの焼き増しだ。


 曰く、神の御業により力あるものをこの世界に導いた。

 曰く、最悪なる災いが降り注ぎ、このままでは人類は滅びてしまう。

 曰く、勇者が人々の希望となりて世界を救う信託がなされた。

 曰く、帝国は人類のため立ち上がった。

 曰く、非道な行いをする魔族を倒すため力を貸してほしい。


 う~~~~~ん。

 彼らは真剣なんだろうけど、なんていうかテンプレだ。

 そんなんじゃ某文庫大賞では一次通過すらしないぞ。

 俺にはわかる。

 なんてたって体験談だ。


 そういう世界観での物語展開はだいたい決まっている。

 お約束というヤツである。

 チート発覚して、勇者として認められて、戦争に行かされて……と続いていく。

 そんなビックイベント目白押しの展開が待っている。

 うん、読者としては胸躍る。

 たとえテンプレだとしても。



 だが、しかし!!!

 当事者としては最悪である。


 話を聞いていると、

「お」

 テンプレを外れた。


 なんでも戦争には出なくてよい。

 そんなことを言い出した。

「皆様に無理強いして戦っていただくようなことは致しません。

 あくまで私たちに協力してほしいのです。

 皆さまの国は、この世界よりもはるかに進んだ文明をお持ちであると思います。

 その文明の知識を我々に享受していただきたいのです。

 また、帰還方法についてですが、今すぐには無理ですが、

 魔法陣を調整し、触媒を用意すれば可能です。」


 知識ね。

 確かにこれはものすごい武器だ。


 何せ異世界転生モノでは、知識無双というものがある。

 農耕や工学、医学など、知識一つで世界に大きな影響を与えられる。

 まして難しい知識じゃなくても、オセロで金持ちになったり、プリンで危機を脱したりもできるのだから。

 1人でもそれが可能。

 それを国が行えば、確かに他国に対して大きなアドバンテージを獲得することができる。


 だが、それならなぜ俺たち?と疑問が出てくる。

 大人や、それに通じている人を召喚した方が効率はいいのに。

 高校生の知識などたかが知れてる。


 それに帰還する方法があるという言葉。

 これは鵜呑みにできない。

 行きはよいよい、帰りは恐い、である。

 てか召喚とか普通にできるとは思えないし。


 そうこう考えている間にも説明は続く。


「皆さまの中には体調不良を訴える方がいらっしゃいましたね。

 これは異世界から召喚された副作用のようなものです。

 命にかかわるようなことはありませんが、数日間は、気分が悪いなどの症状が出ることもあります。

 その際には治療院を用意していますのでご安心ください。」


 いやいやいやいや、全く安心できないわ。


 副作用?聞いたことないわ。

 うん、現実は厳しい。

 てか本当に命は大丈夫なんだろうな?


 なんか怖くなってきたわ。


 その後、治療院とかいうところの人(おそらくこの世界の医者の様な人)が、葉山をはじめとした体調不良組の経過を報告した。


 薬を飲んだり、安静にすることでかなり良くなっているらしい。

 この報告にクラスメイトも安堵していた。



 そして…………


 次は、


 いよいよ待ちに待った


 異世界最初のイベント。


 ステータス確認!!!!


お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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