第16話 やっぱりこうなるのね。でもそれが異世界! 後編
「お困りのようですね!!!」
「おお!」
「ええ!?!?」
空間がぐにゃりと歪み、人が現れた。
「やあやあ、お久、ナツキ!」
「葉山か!?」
暗くてよくわからないがこの声は間違いない。
「魔法!?」
大沢が尋ねた。
「そう!属性に光があるからそれの応用。
周囲の光を屈折させてまるで消えたように見せられる!すごいっしょ!?」
「すげえな。
てかいつからだ!?
ドアは閉まってるぞ。
まさか通り抜けとかできるのか!?!?」
「やだな~そんなことできるわけないじゃん!」
「ならどうやって?」
「決まってるよ。最初から居たのだよ!
ナツキが約束をすっぽかしたのが悪い。」
「あ…………」
そういえば、今日だ。
密会もとい、情報交換の日。
すっかり忘れていた。
「激おこなんですけど。」
「いや、それは……
ほんとすんませんm(__)m」
「どうしよっかな~~これは高くつくよ~」
「ゆい、許してあげなよ。」
「紅里は優しすぎだよ
まぁ今日は紅里に免じて許してあげるわ
紅里に感謝しなさいね。」
「え?」
そこには葉山だけでなく日咲さんもいた。
気が付かなかった。
「どうして?」
「ほら、紅里!」
「えっと……その……相沢君、身体は大丈夫?」
「あ、ああ、もうだいぶ良くなったよ」
沈黙が流れた。
いや、なんて言ったらいいのか、わからん。
俺が黙っていると葉山がしゃべりだした。
「残念ね~まだ治ってなかったら紅里のヒール受けれたのにね」
ああ、そうか。
「たしかクラスで唯一回復系のスキルだったよな。」
称号が姫で回復系の魔法が使える。
なんとすごいことか。
「そうそう。ナツキがケガしてから必死で回復系の魔法を練習してたんだよ。」
「ちょ!!ゆい!それは言わない約束でしょ!?」
「あれ?そうだっけ!?」
にやにや笑っている葉山に怒る日咲さん。
にぎやかだ。
「あの~~
僕はもう帰った方がいい?」
おっと、忘れていた大沢と話していたんだ。
「葉山たちは最初から聞いていたんだよな!?」
「そうよ!
大沢君、私のことは結衣でいいわ。
よろしく」
「あ、どうも」
頭を下げる大沢。
「私はナツキと定期的に情報交換していてね、今日もその日だったんだ。
だけど、ナツキが時間になっても来ないから魔法で姿を消して来てみたら
ちょうど大沢君がナツキの部屋に入っていくのが見えて、
それで一緒に部屋に入ったというわけよ。」
見かけによらず大胆だな。葉山は。
日咲さんが葉山の後ろで申しわけなさそうにしている。
「さっきの話だけど、だいたいナツキのプランで賛成かな。
こっちでも似たような情報がはいっているし。
行動は早い方がいいよ。」
なるほど。俺が目を付けられている。
それは葉山の情報網にも引っかかっていたようだ。
「それなんだが、お金がなくてな。
なんかいい案ないか?」
俺が尋ねた。
「ふっふっふっ
見なさい!!ここに10万リグあるわ。」
は?
リアの給料、10か月分!?
「なんで?」
日咲さんも大沢も驚いていた。
「こういう世界ではいつか必要になるだろうからね。
ちょくちょく貯めていたのだよ。
方法は禁則事項です!」
「おい、未来からやって来た某○○さんのように言っても駄目だぞ。
犯罪だろ。」
さっきの姿を消す魔法。
アレを使えば、盗むのも簡単だろう。
「いやいや、強制連行された時点で何をやっても正当防衛!?的な?
まぁいいじゃん。私も一線を越えるようなことはしてないよ。
悪そうな奴からしか取ってない!!」
胸を張って言うな。
「で、でもこれくらいあれば大丈夫だろ。」
大沢よ。アウトだ。
人としてアウトだ。
「相沢君のためなら仕方ないよね」
うん。日咲さん、仕方なくはないよ。
ていうかあなたは一番まともだと思っていたのに。
俺の純情を返して!
「ラインにエルベ、ナイル。この3都市なら4、5ヶ月くらいで十分じゃない!?」
「そうだな。
あ、葉山たちは連れていけんぞ。」
「わかってるわよ。」
「い、いつにするの?」
日咲さんが尋ねてきた。
「早い方がいいな。
明日にでも帝都の町を見学したいって言ってみるつもり。
それで外に出れたら即行動開始。」
「それがいいわね。
私たちはどうする?」
葉山に日咲さんに大沢。
どうするか?その前に聞いておかなければならないことがある。
「みんなはどうしたいんだ?
俺の最終目標は日本に帰ること。
そのために帝国を出ようと思ってる。」
「僕はナツキに賛成。
帰るためには、帝国を出る必要があると思う。」
「私もおおむね賛成かな。
帰る帰らないは別にして、帝国からは出たい。」
チート持ちで魔法が使えればそりゃ俺も帰りたくはないだろう。
クソ。ホントうらやましい。
「わ、わたしも相沢君に賛成。」
日咲さん、心配だなぁ~
今日はなんか体調でも悪いのだろうか?
顔が赤い。
大沢や葉山が危険な目に会おうが、
自己責任だが、日咲さんには危険なことはしてほしくない。
よし、説得してみるか。
「日咲さん、これからやることは結構危ないよ。
その、帝国と対立することになるかもしれない。
別の、例えば、坂本と帝国と一緒にやっていくって選択肢もあると思うんだけど。」
「私はいいのか?」
「葉山と大沢は自分で責任とれ。」
茶々をいれる葉山はほっておく。
「わたしは……その……邪魔かな?」
「い、いや、邪魔とかじゃなくて、これからのことは自分で決めないと。
その、覚悟とかもあるし、ほら、葉山と大沢は、
自分から帝国と対立の道を選んでるから。」
「覚悟ならあるよ。
相沢君の力になりたい。」
よくわからん。
でも目がまじだ。
まぁ本人がいいならいいだろう。
「私たちは来る日のための準備だね。
こういう展開は燃えるねぇ~。」
「勝手に燃えてろ。
俺が帰ってきたら今後を相談、場合によっては帝国を出る。
そんな感じかな。」
「戻ってこられない場合はどうする?」
「おお、大沢よ。
怖いことは言わんでくれ。
安全に行こうや。」
ホントこわい。
安全第一。これ大事。
「その時はその時かな。
帝国の動き次第では、ナツキの帰還を待たずに行動するかも。
そこはわかっといてね」
「ああ、了解した。」
「ナツキは外で情報収集、私は内部で情報収集。
紅里は魔法の練習。
大沢君も訓練。
そんな感じでどう?」
葉山は日本にいた時より生き生きしている。
「大丈夫だ。
日咲さんの回復魔法はいざという時の生命線になるだろうし、大沢はこの中で唯一の近接戦闘ができるからな。」
「パーティーみたいだね。」
「そうだな。」
決まった。
大沢も日咲さんも異論はなかった。
俺は街を目指すことになった。
安全に行く予定が、状況がそれを許さない。
異世界ではこういう運命にあるのだろうか!?
明日から本当の異世界生活が始まる。
ご意見・ご感想お待ちしています
今日も晴れ
(今後はナツキ中心に物語が進みます
葉山結衣以下クラスメイトサイドのお話は
第4章81話と82話の間にある、幕間:葉山結衣 前編後編 になります
この幕間もしよろしければお楽しみください)




