第125話 エピローグ5(1) ~これからの一歩~
「おい、言いたいことはあるか?」
「えっとですね…………
てへ、ぺろりんこ!」
さすがの俺もプッチンしたわ。
身体を無理矢理起こし、
リアに止められながらも、
目の前の舌を出してウインクしているアンに
俺は殴りかかった。
「リア、離してくれ
こいつを殴れない!!」
「ダメです
ナツキさま、まだお身体が」
「そうですよ、マスター
さすがの私も反省していますので
どうかこのあたりで」
「反省している!?
どの口が言ってるんだ!
このポンコツ!!」
「いいですよー
どうせポンコツですよ~~」
開き直ったアンは変なダンスで
俺を挑発してきやがった。
ダメだ、やっぱり一発殴らないと気がおさまらない
「で、誰なの?
このヒト」
葉山からの質問がとぶ。
現在、俺たちは無事帝都を脱出し、
街道の少し外れた場所で休んでいた。
剣帝との戦いだが、
どうなったのか――それはなんとレイが倒していたようだ。
ようだ、というのは、俺は、はやばやにやられて恥ずかしながら記憶がなかった。
レイが瀕死の重傷を負っていたような気もしたが、
そんなことはなかった。
レイは本当にすごい。
もう俺、レイさんに一生ついて行きますわ!
とまぁ、そんなこんなで
無事に葉山たちと合流、
ついでにステラたちとも合流、
なぜかイブさんたちとも合流、
大所帯となった俺たちは、街道でこれからのことを話し合っていた。
そんな時、ひょっこりアンが戻ってきた。
手ぶらで。
「こいつはうちの駄メイドだ、駄メイド!
いててて」
「大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫
なんか腕がやけに痛いんだよね
それにしてもリアはまさにメイドの鏡だ!
どこぞのポンコツ駄メイドと違ってな」
「マスターにはカルシウムが不足してますね
今度から毎朝牛乳を飲むことをおススメします」
アンと俺との言い合いはもう少し続いた。
そうやってギャーギャー騒ぎながら、
ああ、やっと終わったんだな、
そう実感を噛み締めた。
馬車の用意から野営の手配まで、は、
ステラの仲間が全てやってくれた。
ステラにはその時、
「ファナ様にそれはもう返しきれないほど
大きな借りを作ったと思ってください!」
なんて笑顔で言われた。
怖ぇよ!!
ファナって確か少し裕福な貴族の娘さん的なポジションだったはず。
時価にして150万、
山本からもらった手帳にある異世界人の金額と比べるに
ぶっちゃけ大したことないな、150万なんて。
借りを返すってどうしよかと悩んだが、すぐに名案が思い付いた。
ボールペン一本か、時計くらいで大丈夫だろう
異世界ならこれでも相当の価値のはず。
上手く複製したり、王さんに献上したりすれば、ファナの家の助けになるだろう。
帝国からの追手はなかった。
二日後、イブさんたちやステラたちと別れた。
イブさんたちは、はじめ俺たちに付いてくると言っていたが、
アンが何やら説得して別れることとなった。
ステラたちからは食料や馬車(馬付き)、野営セットなどを貰った。
これは本当にあり難かった。
そしてあの夜から6日後
俺たちはついにイリオス州の遺跡に帰ってきた。
やることは山積みだ。
レイ、リア、アン
葉山、大沢、日咲さん、
そして多くの日本人。
人数が増えたから住む場所が必要。
その上お金が必要で、
そのためには働かなくてはならない。
漠然とした不安がありながら、
みんなとならやっていける
なぜか俺はそう信じて疑わなかった。
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今日も晴れ




