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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第5章 帝国編
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第117話 VS聖級“炎帝”

 


「<波状衝撃波(インパクト)>」

「<多重障壁>」


 遠距離からの攻撃はほぼ無力化に成功。

 葉山のアドバイスのおかげだ。

 確かに魔法発動時、

 小さな火球や水の塊を確認できた。

 ただ、難点は“見ていないといけない”ということだ。


 見逃したらアウト、

 1人で戦っているこの状況では少々厳しい。


 それでも完全武装した連中相手に

 善戦しているこの状況。


 だからなのか、

 俺はいつもより好戦的(・・・)だった。


 この命の軽い世界で、

 目の前の相手に勝てると思ってしまうほどに。


「<指向性衝撃波(ショット)>」


 これで3人目の落馬。

 向かってくるのは計7名。


「「「「《炎弾》」」」」


「<波状衝撃波(インパクト)>」


 全ての炎弾を霧散させ、

 すかさず反撃に出る。


「<指向性衝撃波(ショット)>

<指向性衝撃波(ショット)>

<指向性衝撃波(ショット)>

<指向性衝撃波(ショット)>」


 4人のうち3人を落馬させ、残り3人。

 思ったより楽勝だ。

 そろそろ逃げてもいい頃合いかな。

 俺がタイミングを計っていると、

 こちらに走ってきていた3名は止まった。

 少ししてそのうちの1人だけが出てくる。


「貴殿!見事だ

 我が隊の優秀な魔法師の攻撃を凌ぐとは

 名を尋ねたい」


 相手の雰囲気に気をされ、聞かれるがままに答えてしまった


「ナ、ナツキだ」


「ほう、聞かない名前だな

 ん!?

 その容姿、もしや噂の異世界人か?」


「そうだ」


 答えてから言わない方が良かったか!?と思っても時すでに遅し。


「おう、それは行幸

 今、ここにいるということは我らの同志ではないということ

 つまりは敵、

 手合わせ願おう」


 これは確実に良くない方向だ。


「《業火絢爛(ごうかけんらん)》」


 そして話を聞かない系だった。

 炎で出来た剣や槍が空中に出現する。

 出現しただけで終わるわけはなく――


「<多重障壁>」


 咄嗟に口から出たのは

 悪手だった。

 攻撃自体は止められても

 熱が空気中を伝搬する。


 一気に俺の周りの大気温度は上昇。

 このままではマズい。


「<アクセル>」


 横っ跳び、そのエリアを抜けるが――


「甘いな!

 《炎剛拳》」


 俺の前には、“炎帝”その人がすでに拳を振り上げていて――


「<多重障壁>」


 展開した障壁はいとも容易(たやす)く破られる。


 気が付けば、戦っていた場所よりもはるか後方。

 芝生と柔らかい土で命拾いした。

 服はほとんどが炭化し、

 皮膚の至るところが赤くただれ、

 溶けている箇所もあった。


「同じ攻撃を何度も見れば、

 対処法は自ずと見えてくる。

 まぁ先の魔法師の攻撃が囮であると気が付かなかった時点で貴様の敗北は決まっていたがな」


 声の低さと身長から男だと思っていた“炎帝”は

 大きな胸の特徴的なシルエットをしていた。


「異世界人といえどもこの程度か」


「ちぎ……じょぅ」


 喉が焼けるように痛い。


(チカラ・ガ・ヒツヨウカ)


 目の前で現実を知らされたあの日。

 ミナミがたどった現実。

 帝国の牢に捕らわれていた日本人。


(チカラ・ヲ・モトメルカ)


 異世界に来て、

 これが現実だと知って、

 俺はただただ運に恵まれていただけだと気が付いた。


(モトメヨ・チカラヲ)


 助けたいと思った。

 チカラなんてないけれど。

 みんなを、全員を助けられるなんて思っていない。

 でも、

 せめて、自分の周りの人くらいは、

 守りたい。

 そのチカラが欲しい。


「あぁ、チカラが……ほしぃ」


 チカラに対する恐怖心はなかった。

 チカラに対する“考え”もなかった。


(タマシイデ・カンジロ・オレノタマシイヲ)




 *********



 炎帝は目の前の男に始末をつけようと近づいた。

 彼女が率いた魔法師は囮などではなく、

 第3師団の精鋭たちだ。

 彼らの攻撃を防ぎ切った目の前の青年。

 戦ってみれば、素人同然だ。


 まぐれか、それとも――


「だが、残念なのは貴様の命がここまでであるということか

 敵対する異世界人は最優先殺害対象

 そうでなければ――

 いや、詮無いことだな」


 炎帝は腰に帯びた剣を抜き、

 上段構えから

 青年――ナツキへ振り下ろす。


 勝敗のすでに(けっ)した後の事後処理

 その程度に思っていた――

 が、それは止められた。



 キュッ




 何かをつかむような音と主に、

 炎帝の剣は微動だにしなくなる。


「ッ!?」


 ――片手真剣白羽取り


 虫の息であったナツキが左手(・・)

 炎帝の剣を掴んでいた。


「ッチ」


 炎帝は舌打ちと共に後方へ。

 自身の理解を超えた事態が起きた。

 それを認識し、立て直すための時間をつくる。


「な、なんだ?

 つか、いてぇーー」


 ナツキは悪態をつきながら、

 立ち上がる。


 どうして炎帝が後方へ下がったのか

 ナツキは不思議そうな顔(・・・・・・・)をしつつも

 目の前のことに集中する。


 そして、無意識に(・・・・)回復ポーションを取り出し、

 傷口にかけたり、飲んだりした。


「クソいてぇーー

 チクショー

<ダブル・アクセル>」


 空気を圧縮し、解き放つ爆発的な圧力で

 ナツキは空を駆けだした。



 *****



 身体が軽い!

 それに気が付けば空を走っている(・・・・・)

 俺は眼下に炎帝の姿を捉えた。

 集中しなくてはッ

 目の前のこと以外、戦闘以外の一切が頭から抜けていく。


 敵を見て、

 観察して、

 出来ることをして、

 ――必ず勝つ!!


「まだそれだけの力があったとはな

 《炎死鳥(フェニックス)》」


 炎帝から放たれた炎の鳥の群れ。

 一直線に進んでくるものと、

 速度を落とすモノや

 別の起動を取るモノがあった。


「<多重障壁>

<動的障壁(アクティブ)>」


 多重障壁で火力の強い前方からの攻撃を防ぎ、

 動的障壁で別方向から飛んできた攻撃を防ぐ。


 と、同時にすかさず上昇。

 熱が伝わる前に離脱。


「ん?

 奴の動きがまるで違うな」


 空を見上げたままの炎帝の背後に着地――


「【居合】」

「【炎斬】」


 指輪から取り出しながら抜刀――ヒトの剣“天叢雲(あまのむらくも)”と

 振り向きざまに抜剣――帝剣“紅焔()”。


 その場に大きな金属音が響き渡る。


お読みいただきありがとうございます!

今日も晴れ

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