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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第5章 帝国編
127/139

第114話 苦戦

 


 ※本編はもう少し下からになります


【登場人物補足】

 *聖女 (マリリン・リングエスト)

 八大英雄のひとり

 教会に所属する聖職者。服装は露出が多く、とても聖職者には見えない。

 回復系統の魔法を得意とするが聖教流と東海流の剣術をたしなみ、近接格闘術も得意とする

 黒衣の男との交渉により聖人と戦うことを決める

 過去聖人との直接戦闘の経験無し

 対聖人戦闘形態―堕天―

 体内魔力を全てある一つの属性に無理やり変換することで聖人の支配から逃れる


 *海龍 (オルガ)

 東海流聖級で八大英雄のひとり勇者セシリアの師

 エルタニア出身

 現在は大魔法使いと協力関係

 対聖人戦闘形態―龍人化―

 体内魔力を暴走寸前の状態で維持することで聖人の支配を逃れる。


 *黒衣の男

 かつての4魔将のひとり

 固有魔法―空間転移(テレポート)

 触れたモノと一緒に転移することが可能。

 転移させるものの魔力量や距離に応じて必要魔力量が決まる

 あるお方に仕えている。

 ナツキを守るため聖人と戦う

 対聖人戦闘形態―魔装―

 魔族がここ最近身に付けたチカラ(詳しくは不明)


 *ガルス・ガリオン

 四魔将のひとり

 固有魔法―強化―

 黒衣の男により援軍として呼び出された

 対聖人戦闘形態―魔装―

 魔族がここ最近身に付けたチカラ(詳しくは不明)



 *聖人

 世界に十数人いると言われている。

 神の代弁者で、どの国にも属さず、基本ヒトの営みに干渉はしない

 とてつもないチカラを有していて“聖域”を使用可能

 聖域:一定範囲内の魔力完全支配。全ての生物は体内に魔力を微小ながらも有している。そのためその魔力を支配できる聖域圏内にいることは生殺与奪を握られていることと同義。その気になれば、聖人が指先一つ動かすだけで並みの人間は体内の魔力を暴走させられ、爆発する。

 聖人一人一人は別の属性をつかさどる。

 過去、闇属性の聖人は大魔法使いにより倒されている。

 また最近では火属性の聖人がセントフィルで何者かに倒されている。




 *山本奈々

 ナツキのクラスメイト、校内でも有名なギャル

 一方で異世界に捕らわれた日本人について調査したり、騎士を圧倒できる体術を身に付けていたりする。また、ナツキの過去を知る一人でもある。


 *アン

 遺跡より発見された謎の多き自称メイドロボ

 家事から遠征の準備までなんでもこなす

 マイブームはマスターであるナツキをからかうこと

 ロボットであるが“自我”を有している。




【第5章前半のあらすじ】


 日本人が捕らわれていることを知ったナツキはレイ、アンと共にガイナス帝国へ。

 そこで葉山も捕らわれていることやリアのこと、武装勢力が近づいていることなどを知り、強硬策に打って出る。

 無事、リアと再会し、葉山や大沢、日咲との合流を果たし、日本人の奪還に成功。残すは帝国を脱出するのみとなった。

 一方、時を同じくして帝国では内乱が発生。北帝流聖級の各師団長クラスが行動を開始。それに合わせ、シェルミア王国のファナ直属のステラ率いる部隊も動き出す。また店長や聖女、黒衣の男はナツキを守るため戦に挑むこととなる。






 **********


「【龍牙王拳】」


 聖人の懐に入り込み、すかさず打ち込む強打。

 真正面からそれを受け、聖人は数メートル滑るように流される。


「愚かな」


「オルガ!上!!」


 聖女の言葉に海龍が見上げる。


「ッッ!?」


 何かが、上を覆っていた。

 咄嗟に海龍は横へ跳ぶ。


(間に合わないかッ!?)


 直後、海龍を衝撃が襲った。


「大きな氷の塊!?

 あれは水の属性みてーだな」


「海龍殿、間一髪でしたね」


 海龍の先ほどまで居た場所には大きなクレーターが出来上がっていた。

 深さ10mほど。

 中心部分は凍り付いている。

 攻撃のその刹那、黒衣の男は海龍のもとへ転移。

 一瞬で海龍と共に戦線を離脱していた。


「やはり一筋縄ではいきませんね

 聖人は2体

 海龍殿とガルス殿で一体ずつ

 聖女殿と私は適宜援護でどうでしょう?」


「構いませんわよ」

「同じく」


 *********


「【豪拳】【豪拳】【豪拳】

【連剛拳】」


 息を切らしながら、

 4魔将のひとりガルスは打ち込み続ける。

 ガルスが相手にしているのは、

 土の属性を有する聖人


「クソかてぇー」


 強化された鋼をも上回る土の鎧の攻略にガルスは手間取っていた。


「ック」


 聖人の攻撃ももちろん絶え間なく降り注いでいる。

 地面から伸びる無数の土槍。

 それを躱しつつ、時には黒衣の男の転移で助けてもらいつつ、

 ひたすら攻撃を行っていた。

 時間にして15分程度。

 しかし、体感時間はすでに数時間の経過を錯覚するほどだった。


「東海流奥義【龍嶽(りゅうがく)】」

 東海流の刺突系の技の一つ。


「《堕・光矢》」

 漆黒の矢が聖人の死角から降り注ぐ。

 聖人の注意がそちらにそれたところですかさず――


「東海流秘技【兜割(かぶとわり)】」

 強烈な剣の振り下ろし。

 一度として同じ技を使わずに、

 海龍は攻撃を続けていた。

 暴走寸前の魔力制御に加え、

 攻撃にも神経を使う。


「これは、長くは持たんな

 ん!?」


 特大の氷柱が降り注ぐ。


「《堕・結界》」


「すまんの聖女」


「次、パターンDでいきましょう」


「了解した」


 時折、聖女と黒衣の男が入れ替わり、多彩な攻撃を仕掛けていく。

 そうすることでなんとか聖人と戦うことができている状況だった。



 **********


 アスナ共和国

 首都特別行政区



「みな、揃っておるな!?」


 声を発したのは、この場にもっとも不釣り合いな容姿をした人物。

 どう見ても子供としかいえないこの容姿の人物こそアスナ共和国でもっとも権力を持つ大魔法使いその人であった。


 円卓の席に着くのは、この国の内閣の面々に、軍の上層部。


「揃っています。

 それにしても差し迫った危機ということでなくて一安心です」


 発言をしたのは国土安全局の局長。

 数刻前、聖女からの緊急通信で国内は非常事態となり、

 軍関係者は編成に追われ、国民は避難準備を迫られた。

 しかし、その通信がアスナ共和国とは大陸の逆にある帝国領からのものであるとわかると安心する者も出てきた。


「まだ安心するには早い」


「そうです、将軍閣下のおっしゃる通り」


「ひとまず、魔術師団第3中隊を送るのじゃ

 異論はあるかの?」


 魔術師団の中でももっとも機動性に優れた師団。

 現地に派遣し、情報を得ようと大魔法使いは考えていた。


 魔術式(・・・)のある専用の部屋へ移動。

 大魔法使いにより魔術式が起動し始める。

 第3中隊15名の面々が起動式の上でその時を待つ。

 いよいよ師団を送ろうという時――


「報告!聖女“堕天”海龍“龍人化”を確認ッ!」


 その場に走り込んできた者の発言が響き渡る。


「中止じゃ!!

 起動式への魔力供給をやめぇー!!」


「中止!中止!」


 中段作業がひと段落付き、大魔法使いは口を開いた。


「あ奴らがアレを使ったということは、

 間違いなく聖人との戦闘が向こうでは起きておる

 ただの人間を送り込んでも殺られるだけじゃな

 ワシが行ければいいんじゃがな」


 大魔法使いの使う“転移”は自分を送ることができない。

 それゆえ誰かを送る必要があった。


「今、聖級は何人くらい()るかの?」


 もっとも聖女や海龍ほどの者はいない。

 援軍として送るのではなく、

 最低限の情報収集のために送る。


 聖女と海龍が死ぬ前に、

 そこで何があったのかを知るために。


(あの二人は強い。

 じゃが、聖人と戦って勝てるほどの強さは……残念じゃが、無い

 ならばせめて、あの国で今何が起きているのかだけでも知らなくてはならん)



 ***********



 大魔法使いの予想通り、

 時間の経過とともに対聖人組は消耗していた。


 海龍は暴走寸前の魔力操作のほうに力と神経の多くを割かなくてはならなくなったし、

 聖女は生傷を増やしていた。

 ガルスは、すでに左腕が折れ、右も限界を迎えようとしていた。

 黒衣の男も高速での空間転移に多少の座標のズレを生じさせていた。


「ここらが潮時じゃない?」


 聖女の問いに海龍もまた頷くが――


「果たして、

 あちらさんがそれを許してくれるか」


 空から降り注ぐ無数の氷柱。

 地からは際限なく飛び出す土槍。


 それらを避けるか、無効化するか、防ぐか、

 で手一杯の聖女らにとって既に撤退の機は逃していたと言わざるを得ない。


「魔装の魔力が切れかかってますよ、ガルス殿!」


「はは、これはアブねぇ~」


 4人は無駄口をたたきながら、

 また攻撃へ移っていく。


「海龍殿!ガルス殿!」


 聖女が正面切って仕掛ける。

 その間に黒衣の男が聖人の死角へ2人を転移。

 高速転移で瞬時に聖女のもとへ向かい、

 聖女を連れて離脱。

 続いて海龍、ガルスを離脱させる。

 それを繰り返す。

 数では勝っていたが、チカラが違い過ぎる。

 聖域という限られた条件下で普段の力を十二分に発揮できない上に、

 その聖域を対処するための魔力制御で体力・精神力は徐々に削られていく。


 小さなミスが増える。

 攻撃に十分な威力がのらなかったり、

 転移座標を誤り、離脱が一拍遅れたり、

 死角からの攻撃に対応されたり。


 小さなミスはお互いがカバーし合えた。

 しかし、それが重なり、

 ミスがカバーできなくなった時

 それは致命的な決定打となる。


 聖女のサポートに入るはずの海龍が聖人に捕まり、

 それを助けようとガルスが死角から攻撃し、

 その間に海龍を黒衣の男が助ける。


 このとき、一時的に、瞬間的に、

 聖女は、聖人とサポートの得られない状況で一対一となった。



 それを当の聖人が見逃すはずもなく――


「終わりだ」


 聖人の手に氷の剣が現れ、

 それが聖女の胸を、心臓を――




 刹那、

 剣先が聖女に届こうとしたまさにその時、

 “それ”は現れた。



「なッッ!?」


 聖女は口をあんぐり開けた状態で固まった。

 目の前の光景に理解が追いつかない。


 聖人と聖女の間に割って入った何かが、

 聖人を吹き飛ばした(・・・・・)


 聖人は数十メートル後方へ。

 地面に何度かたたきつけられてやっと止まっていた。

 聖女の見間違いでなければ、

 何者かが、聖人を蹴りあげたように見えた。

 そう見えた。

 信じられないことに。


「なにが……え……」


「馬車の調達がまだできていません

 超速で帰らないとマスターに怒られますね」


 その人物――メイド服を着こんだ女性は、

 その場にそぐわない、

 なんとも気の抜けるような声でそう言った。





お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ


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