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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第5章 帝国編
122/139

第110話 混乱

 



「レイだ」


「え?レイ……さん?」


 葉山は自分をかばってくれた少女に視線を向ける。

 助けてくれたので、

 敵ではないだろうが、

 何者だ?という松浦の疑問には

 賛同せざるを得なかった。


 一方、レイはというと辺りを一瞥だけして呟く。


「見てくれだけはいい頭お花畑な葉山結衣という人物はいないようだな」


 その言葉に葉山は直感する。

 そんなことを言う人物はあいつだ、と。

 ギルティ通り越してマジKillのレベルだわ。


 そんな葉山を他所(そよ)

 レイと松浦は対峙(たいじ)する。


 松浦は名乗りを上げた人物を見つめる。

 引き締まった身体。

 バランスのとれたプロポーション。


「へぇ……

 なかなかいい女だな

 どうだ?こっちに来ないか?」


 にやにやとした笑みを浮かべながら、

 それでも剣は下ろさずに尋ねる。


「断る」


 レイは冷たい目で眼前の男を捉え、

 刀を横一線――


「【晴風】」


「おっ……とッ」


 松浦は飛翔する斬撃を見切り、

 不可視のそれを避けた。


「いいね~

 ますます気に入った。

 俺のモノにしてやる

 まぁおとなしくするなら()の一つでもプレゼントするぜ」


「国?ふざけたことを」


 何度か飛翔斬撃を撃って無駄だと悟り、

 レイは接近し、斬りかかる。


「ふざけてないさ

 これから世界は俺たちの支配下に置かれる。

 なんでも思いのまま

 逆らうやつはねじ伏せる

 お前みたいな女も同じことだ」


「口を閉じろ、

 不快だ」


 その言葉に松浦は依然、

 にやつきながら剣を振るう。


「【聖ノ撃】」


 目にもとまらぬ速さで繰り出される斬撃。

 それをかろうじて刀で受け流す――

 否、受け流しきれず、

 後退させられた。


 レイの刀“神無刀”自体は、

 傷一つなく刀身が透き通っている。

 一方、その刀を支えるレイの手のほうは多少痺れていた。


 もし、あの攻撃を全て受けていたら手が折れていたかもしれない。

 レイにそう思わせるほどの威力があった。


「なぁ~異世界勇者の女になれるんだぜ

 大人しく俺のモノになれよぉ~~」


 そう言いつつ、目の前の女は決して頷きはしないと松浦は確信していた。

 その強気な女を力づくで組み伏せる。

 そんな楽しいことは他にない、

 笑みを浮かべどうやって女の心を折ろうか考え始める。


「舐めるな」


 レイは左手で腰に携えたもう一本の刀“光越の太刀”を抜く。

 修業で会得したのはなにも“技”だけではない。

 本来、左手には短剣だが、今は刀を持つ。

 二刀流――実戦で使うにはまだ難があったが、

 前回のユニコーン戦での反省(二刀流を使う間もなく敗れたこと)を踏まえ、構えをとる。


 勝たなければならない場面において

 手札を隠しておけるほど強くはない。

 なら全力で行くのみだ。




 *********




 坂本さんマジぱねぇ~っす

 クラスメイトも追いついてきて、

 ジリ貧。


「ナツキさま

 大沢さまと日咲さまは解除に成功したとのことです」


 謁見の間入り口付近からリアの声。


「よし、葉山は?」


「まだだ!

 個人差があるみたいで僕が一番早かった

 ナツキも解除するんだろ?」


 答えたのはリアではなく、大沢だ。


「ああ、ちょっと頼む」


 急いで謁見の間に駆け出す。

 部屋に入り、すぐさまステータスプレートを指輪から取り出し、

 解錠液と血液を垂らす。


 淡い光に包まれ、

 待つこと数秒

 ステータスプレートにひびが入り砕け散った。


「終わった!」


 顔を上げると、

 謁見の間の奥でレイと松浦が戦っていた。


「レイ!?」


 松浦の攻撃を捌ききれず、後退。

 あのレイが押されていることに愕然としながら、

 ドスッと音のした後方に視線を向ける。


 そこには腕から血を滴らせている大沢の姿が。


「おい!?」

「すまん、魔法がうまく使えないみたいで」


 魔法が使えない!?

 すでにステータスプレートの契約は解除されているはず。

 それなのになんで今なお魔法が使えないんだ?


 ケガをした大沢に日咲さんが駈け寄った。


「大沢君!大丈夫!?

 待ってて……

 《聖ノ光》」


 淡い光が大沢の腕を包む。

 止血が完了したのか、血は止まり、

 傷口が小さくなっている。

 が、完治まではいっていないようだ。


「上手く……できない……」


 苦悶の表情を浮かべる日咲さん。

 今のを見るに魔法が使えなくなったわけではないのだろうが、

 出力が落ちているのは否めない。


 状況は最悪だ。

 前方に坂本&クラスメイト

 後方に松浦

 大沢はケガ

 葉山はまだステータスプレートを解除できていない。


「葉山!あとどれくらいだ」


「待って!もう少し……今!割れたッ」


「レイ!後方を頼む

 日咲さんは大沢をお願い

 葉山は俺の援護」


 正面の坂本を突破する方法……


 正攻法では無理だ。

 実力が違い過ぎる。

 イケメン度が違い過ぎる!!


 なにか……あいつの弱点は!?

 坂本という男を考え、



 ……そしてひらめいた。




 後ろを振り返り、

 そしてリアに近づいて小さく、でもしっかりと言う。


「リア、信じてくれッ」

「はいッ」


 リアの力強い返事を頭に残して、俺はこの場で宣言する

 リアを抱え、その側頭に手のひらをあてて――


「勇者坂本!

 この子の命が惜しくば、その場を動くな!!!!」




 **********




 坂本は心の底から絶句した。

 そして今までに感じたことのないほどの怒りで心が支配されていく


「君はッ!!

 君はその子を知っているのか!?

 君がいなくなってから、君を親身に探していたその子をッ

 あまつさえその子を人質にとるのか!!!!!」


 叫ぶ坂本。


「俺はな!

 自分が助かればいいんだ

 お前がこっちに手を出せば、

 わかってるだろうな」


「クッ

 なんて卑怯な奴なんだ!」


 この場でこの茶番(・・)を真に受けるのは、

 坂本ひとりくらいだろうと思っていたが……


「相沢、人として恥ずかしくないのか!!」

「そうよ最低よ!!」

「坂本やっちまえ!その子を救い出せ!!」

「おまえは人じゃない!この悪魔めッ!!」


 どうにも俺のクラスメイトは大半がアホのようだ。

 いや、もしかしたら俺なら本当にこういうことをするとでも思っているのだろうか

 それはそれでちょっと……ショックだ。


「坂本君やれ!!

 そのロリコンに裁きをぉぉぉ!

 マジギルティィィィィ!!」


「おい葉山、お前は黙ってろ!!」


 場が硬直状態に入った。

 どうにか動き出そうとする坂本。


「た、たすけてーーー」


 新人声優もびっくりな棒読みでリアが助けを求めると、

 坂本は動きを止めた。


「クソッこれでは動けない」


 人質にされているリアが何故か満面の笑みを浮かべているので、

 クラスメイトの数名はそれを訝しむが、

 坂本はそんなことを全く気にも留めない。


「わかった!

 どうしたらその子を解放してくれる?」


「それはな――」


 交渉と呼んでいいのか疑わしいレベルの交渉が始まった。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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