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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第5章 帝国編
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第108話 対聖人へ向けて 後編

 



「わかったわかった」


 店長の言葉を聞き届けて、

 黒衣の男はガルスに尋ねる。


「“アレ”は使えますよね?」


「ははは、

 あんたほどじゃないが

 使いこなせるようになったぜ」


「どのくらいですか?」


「一日ってところか

 まぁ本当に聖人に通用するのか怪しいがな」


「それは仕方のないことでしょう

 ですが、あの方(・・・)自らお認めになったのです」


「ははは、んじゃやるか

【《魔装》】」


 ガルスの身体を光が包み込む。

 その光は、ガルスの身体のカタチに収束する。

 光が収まると、その身体は鎧で覆われていた。


 魔力を支配できる聖人に対して

 魔法の攻撃はほとんど意味を成さない。

 それゆえ、攻撃は物理的に。

 そして最低限の条件として

 体内の魔力を支配させないようにする必要がある。


 魔族は、自身を魔力の鎧で覆うことでその支配を逃れていた。


「へぇ~~

 それが貴方たち魔族が

 聖人に対抗しえる手段ってわけね」


「魔装……

 体内の魔力を具現化させているのか?」


「はい、

 体内魔力を高密度圧縮し、

 自身に合う鎧として具現化しています

 では私も――【《魔装》】」


「それじゃぁ私たちもやりましょうかね

【=堕天=】」


 聖女の身体が黒く覆われていき、

 扇情的な恰好がさらに悪化する。

 身体には黒い魔力の筋が通り、

 大切なところを申し訳程度に隠しているだけで

 あとは裸体そのものであった。


 その装い、もはや痴女である。



「【=龍人化=】

 フン!!」


 海龍は赤い蒸気を出しながら、力んでいる。

 無理やり魔力を暴走させているためか、

 腕や顏のいたるところから小さな出血をしていた。


「これはこれは、なるほど。

 聖女殿は体内魔力を全て(・・)闇の属性に変換し、

 海龍殿は体内魔力を暴走寸前まで活性化させているのですね」


「ははは、おもしれぇーな

 だけどそれ、持つのか!?」


「結構キツわね

 でも半日は大丈夫よ」

「吾輩も半日程度ならば

 ただ、さらに暴走させた場合はわからん」


「……なん、なんだ」


 先ほどまでとは一線を画すチカラを示す4人を店長は、呆然と見つめる。

 魔力の形質変換も、魔力の暴走も、

 一歩間違えれば死。

 自殺行為以外の何物でもない。

 それを平然とやってのけた光景にうすら寒いものを感じる。


「ルドルフ、

 頼んだわよ」


「あ、ああ

 仕方ない」


 どうやらとんでもないことに首を突っ込みつつあるらしい、

 それだけは理解できた。


 4人はチャペルへ向けて動き出す。

 残された店長は自らの役割を遂行する。


 数分後、八大英雄“万拳”と帝国軍第一師団師団長“水帝”との戦闘が開始された。




 *************




 アスナ共和国

 首都特別行政区

 国防省

 中央通信室


 ここは、国外に派遣した部隊や諜報員からの通信を受け取ることができる部屋である。


 部屋には大きな棚がいくつもあり、

 そのほとんどに大小さまざまな石が置かれている。

 当番の職員は5名。

 それぞれ配置に付いて、仕事を行っていた。


 アスナ共和国では、

 単一物質のみで構成された純鉱物(石)と魔力を組み合わせることで

 簡易的な通信手段を確立していた。

 黒衣の男が持っていたものよりもさらに高度化された代物であり、

 発光する色や長さを魔力量によって変えられるようになっていた。

 その発光する色とその長さがメッセージとなる。


 たとえば、

 青い発光を短く3回繰り返す、

 これは自然災害を意味する。

 ほかにも緑の発光を長く4回、

 これは疫病の発生を意味する。


 この日、

 かつて人魔大戦時に使われて以来、

 使われなくなり久しいメッセージが届く。


 一つの魔石が赤く発光。


 1回


「……おい」


 信号に気が付いた男の言葉で職員は一斉に気が付く。


 2回


「え?」

「あ――」


 赤の発行の意味が頭をよぎり、

 思考が停止する。


 3回……





 ――4回

「「ッ!?」」


 3回で止まるモノだと思っていた信号はなおも続く。

 職員は一人残らず絶句した。


 5回


 やや間が空いて、

 再び()発光が()()回続く。


 何秒の静止であっただろうか

 いや実際はほんの1、2秒程度であろう。

 だが、その場にいる職員にはとてつもなく長く感じられた。


 やっとのことで我に返った一人が事態を伝えるべく行動を開始する。


「こちら中央通信室

 緊急!緊急!

 通信――アカ、タン、ゴ

 繰り返す!アカ、タン、ゴ」


『中央指令室

 通信受諾、通信受諾』



 一方他の職員も動き出す。

 半ば軽いパニック状態で矢継ぎ早に会話がなされる。

「番号調べろ!」

「登録番号はSの501」

「データベース調べます」

「すぐに内務省に連絡を!」

「それは指令室から行きます」

「出ました!聖女、マリリン・リングエストです」

「大魔法使い様にも至急連絡を!」

「それも指令室から行きます!」


「こちら中央通信室

 登録番号S、501

 繰り返す、S、501

 登録者、聖女マリリン・リングエスト

 繰り返す、聖女マリリン・リングエスト」


『了解。

 以後の通信は機密コールサインを使用せよ

 通信終了』


 館内が一瞬暗転。

 館内の白色蛍光が赤色に変化する。

 と同時に――


 カンッカンッカンッカンッカン!


 鐘が短く5回鳴らされた。


『中央指令室よりDRC(デフコン)(フェイドアウト)から(ラウンドハウス)へ引き上げ

 繰り返す、DRC(デフコン)(フェイドアウト)から(ラウンドハウス)

 職員は第1種防衛準備状態へ移れ

 繰り返す、第1種防衛準備状態へ移れ』



 館内放送が流れ、

 全職員はすぐさま各々の仕事に取り掛かる。

 国防情報局は各省庁へ連絡を廻し、

 国土安全局は共和国民の避難計画を準備し、

 国家魔術省は魔術師団を非常招集し、

 アスナ共和国軍省は軍の編成を始めた。




お読みいただきありがとうございます

今後ともよろしくお願いします

今日も晴れ


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