第102話 葉山との再会
「こちらです」
リアの案内で城内を進んで行く。
俺は一度アンのもとへ戻り、
リアを預けてから再び城内へ、
と考えていた。
そのことを含め、
リアに事情を説明する。
葉山が捕まったことや別の異世界人についてなども。
するとリアは葉山の居場所を知っているとのことだった。
これ幸いと、案内をお願いして今に至る。
「それにしてもよくこんな通路知ってるな
メイドはみんな知っているのか?」
リアの案内で進んでいる道は、
とにかく細く入り組んでいた。
正規の道ではないだろう。
しかもときどき見張りの騎士に会っても素通りである。
俺なんか騎士が見えた瞬間肝が冷えたのに。
リアは平然と通っていく。
頼もしいな。
「(他の人の)仕事をしている時に覚えたんです
他のメイドの方はたぶん知らないと思います」
スタスタと通路を進むリア。
俺はリアのお手伝いに見られるよう、
顔を隠しつつ、追従する。
「この上の階です
葉山様とは前にナツキ様をお訪ねになった女性ですよね」
「ああ、たぶんそう」
あれは確か、俺がケガした時だな。
「ほかに、もうお一方いらっしゃいました」
他にも……か。
別の日本人という可能性は高いな。
まぁ行けばわかることだ。
それよりも――
「リア、様は要らないんだけど
普通にナツキでいいよ
あと敬語も」
「いえ、メイドですから」
「いやでも、敬語とかちょっと……」
「わかりました。
硬い敬語はやめます
でも様は譲れません!」
なんかリアがすごくチカラ強く言い切った。
本人がしたいというなら仕方ないか……
話をしていると目的の部屋の前へ。
扉の前でカードゲームに興じている見張りが4人。
見張りの騎士に、
リアは普通に挨拶をした。
「お疲れ様です」
「ああ、君ね
雑用ご苦労さん
ん?もう一人?」
「あ、えっと陛下の御指示で……」
「あっ!わかったわかった
言わなくていいよ
終わったら言ってね」
……いや、おかしいだろ。
思わず、仕事しろ、と言いたくなる。
見張りの騎士からカギを受け取り、
部屋の奥へ進む。
騎士は他の仲間とカードゲームに戻っていった。
…………ここって帝国の、それも城だよな
いいのかこれで。
警備がザルなんてもんじゃないぞ。
好都合な展開にもかかわらず、
頭を抱えたくなりながら
俺たちは目的の場所にたどり着いた。
*****
「んごんご
んがんががーー」
「……ふふ」
笑うつもりはなかった。
だが、笑わずにいられようか
……いや、いられまい
感動の再会。
さぞ寂しい想いをしているだろう。
ここは男として、友人として
カッコイイ一言を
などと考えていた時期が俺にもありました。
だが、驚くなかれ。
牢屋で、
葉山は、
全裸で、
鉄格子を、噛んでいた!
いや、鉄格子だぞ
お前の歯は、鑢か!?
「おい、笑ったな
貴様、笑ったな!?」
「いや、だって葉山おまえ……ぷっ」
「おいこら上等だ!!
表出ろや!!」
「ふふっ
表に出ろって
俺は表にいるんだけど……ぷ」
「クソが
この野郎ぉぉぉ!!」
情緒不安定な葉山さん。
きっと牢屋に入れられ、心がすり減ったのだろう。
笑ったのは良くなかったな……反省反省。
「まぁ落ち着け。
助けに来てやったんだ
ナイスタイミングだろ」
もうすぐ戦争になるかもしれないんだ。
さっさと大沢達とも合流しないとな。
「ナイスタイミング!?
バッドタイミングだよっ!!」
「深呼吸深呼吸
まずは前を隠せよ
年頃の女子だろ?」
牢屋を解錠。
俺は予備の服を指輪から取り出す。
もっとも俺の予備の服だ。
この際贅沢は言えないからな。
「リアちゃんありがとう」
「おいおい、俺も――」
「貴様にやる礼はない」
「まぁいいよ
とにかく服着ろ
そんでもって急ぐぞ
時間がないんだ」
「はいはい
で、これからどうするの?」
「ほかに捕らえられてる日本人を助け出す」
「ッチ」
「なぜ舌打ち!?」
「私もその情報持ってるのよ
ナツキが有能そうでムカつく」
「……理不尽すぎるだろ」
「あ、あの~~」
葉山の着替えも終わり、
この部屋から出ていこうとしたところで
呼び止められた。
声を掛けたのは葉山の向かいの牢屋の少女。
あ、すっかり忘れてた。
少女の牢屋も解錠。
捕まっていたという割には、
清潔感があるし、なんというか悲壮感がない。
まぁ葉山もそれは同じだが。
「助けていただき、ありがとうございます
私はシェルミア王国第3王女ファナと申します」
「という妄想ですね
了解です」
長らくつらい牢獄での生活。
そんな妄想の1つや2つ。
葉山でさえ情緒不安定になるのだ。
仕方ない。
「い、いえ、本当に私は王女なのです!」
「本当に?」
「本当です!」
「本当の本当に?」
「本当の本当です!!」
……つまりアレか!?
ここに向かっているとかいう部隊とやらはこの子の奪還が目的とかか?
「やっぱ牢屋に戻すか?」
「そうね。
本当に王女なら厄介事が増えるわね
王女誘拐犯にされるとか、
王国の政変に巻き込まれるとか」
「……」
やめろよ。
めちゃリアルにありそうで怖いわ。
「ま、待ってください
どうか、どうか助けてください」
「いや、まぁ……」
乗りかかった船だしな。
見捨てるのはやっぱ違うよな。
そもそも俺にそんなことをする度胸はない。
「これから帝国を出るまでは
俺の指示に従ってもらうけどいい?」
「は、はい」
「決まったみたいね」
「ああ、
まずは大沢達と合流だ
てことで葉山
透明化の魔法をかけてくれ」
「あーいや、
ごめん
私魔法使えなくなったみたい」
お読みいただきありがとうございます
今日も晴れ




