第11話 これが努力の差だ!(いや、チートだろ) 後編
仕方ない。
こうなりゃやってやる。
「適当に打って来いよ」
松浦はなおも木剣で肩をたたきながら、余裕の表情だ。
好きに打っていいというなら打つまでだ。
ナツキは上段に木剣を構え、振り下ろす。
「りゃぁぁぁ!!!」
カンッ!
松浦によってナツキの剣はいとも簡単に弾かれた。
俺は再び構え直す。
袈裟斬りを行うべく、ナツキは木剣を振り上げ、直後振り下ろす。
カンッ!
松浦は右手で無造作に木剣を持っている。
にもかかわらず、攻撃をただの一振りで完全に相殺した。
ナツキがやけになり、やたらめったら打ち込んでいくも剣が通ることはなかった。
カンッ! カンッ! カンッ! カンッ!
「はぁ、はぁ、はぁ」
おかしいだろ!?
いろんな方向から打ってみるも全て弾かれる。
これが……一般人とチート持ちの差。
でかすぎるだろ。
確かに剣なんて握ったことなかったが、
こうも当てられないモノなのか?
「うわぁ~~」
「しっかりやれよ~~」
笑い声とともに聞こえてくる
クソッ!
俺が本当は“アチラ側”だったはずなのに!!
チクショウ!
大きく振り上げた木剣は、松浦の頭部に吸い込まれていく
が、しかし
松浦がナツキの視界から一瞬にして消える。
次の瞬間、ナツキの握っていたはずの木剣が
無くなり、
ナツキは吹っ飛ばされていた。
「グハッ」
松浦はナツキの認識速度を超える速度で剣を躱し、音速で木剣をナツキの胸部めがけて打ち込んだ。
それがナツキには消えたように見えた。
地面をバウンドしてゴロゴロ転がっていくナツキ。
「がハッ」
な、なにが起こった?
確かに俺の木剣は松浦の頭を打つはずだったのに。
そんな俺に松浦は声を掛ける。
「これが努力の差ってやつさ」
いや、チートだろ!?
高笑いして去っていく松浦。
俺は見ていることしかできなかった。
なぜなら、痛みで起き上がれない。
その上、呼吸がうまくできないし、
アバラもいってるかもしれない。
「相沢君!!」
日咲さんが駈け寄ってくる。
うれしいが、後ろの男性陣の顔がヤバい。
怒っていらっしゃる。
未だ、話そうにも痛みで上手く話せない。
汗が、ブワッと湧き出てきた。
こりゃヤバい……
その後、倒れた俺は騎士団の人に治療院まで運ばれた。
その間中、日咲さんが心配をし、男性陣の恨みを買いまくっていたことは言うまでもない。
ああ、どうして俺がこんな目に!?
医者曰く、本来なら魔法ですぐに治るらしいが、異世界人にはまだ魔法の効きが悪いようだ。
痛み止め程度しか効果がないらしい。
こっちの世界では、痛みは耐えるモノらしく、俺は数時間痛みに悩まされた。
「クソッこれじゃ飯も食えないな。」
治療院の一室を貸してもらって今日はそこに泊まることになった。
身の回りの世話はリアがやってくれている。
「仕方ありませんよ。
今日はこれで我慢してください。」
俺のつぶやきが聞こえていたのだろう。
リアがお盆を持って入って来た。
日本で言うところのおかゆの様なものを持ってきたようだ。
もっとも米はないので浸し麦のような何かだ。
「他に何かあれば、リアにお申し付けください」
ぺこっとお辞儀するリア。
「わざわざサンキュ」
お礼を言って俺はさっそく食事をすることにした。
おかゆもどきを受け取り流し込む。
腹は減っていたので問題なく食べられる。
味はしない。
こっちでは調味料、特に塩は貴重らしいからな。
仕方ない。
「ごちそうさま」
食べ終えるとリアが固まっていた。
「ん?どうした?」
「い、いえ、全部食べたんですか?」
おい、全部食べたらいけなかったのか?
ま、まさか毒でも!!(笑)
俺が?な顔をしているとリアが説明してくれた。
「これは味もしないですし、貴族の方にお出しすると必ず怒られますので。」
「いや、俺貴族じゃないし」
「?そうなのですか?」
「そうだろ。俺は一般人だぜ。」
そう、俺は、一般人の中の一般人だ!
なんたって称号で保障されているからな。
なんでも貴族が風邪をひいたりしてこれ(おかゆもどき)を出すと怒られるそうだ。
何とも理不尽な。
なら、風邪ひくなよ
「ふふっ、ナツキさんはおもしろいですね」
そんなリアの無邪気な笑みがなんとなく恥ずかしくて、話題を変えた。
「アッ、本返すの忘れたな。
明日でも大丈夫かな」
「それなら返しておきましたよ。」
おお、なんと気が利く!!
「リアは気が利くな。サンキュ」
そうやって話していると部屋のドアが開いた。
「元気そうね。」
葉山結衣。
学内2大美少女の一人。
日咲さんと葉山が同じクラスなのはおかしいと抗議があったほどだ。
そんな葉山が訪ねてきた。
ああ、ロクなことにならん。
俺はそう感じた。
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