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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第5章 帝国編
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第97話 店長と聖女

第5章連載開始です!

よろしくお願いします!

 


 帝都南西部

 今は使われていない酒場。



 ラープの街でリーフスティを経営していた店長は、

 同店員であるマックの報告に耳を傾けていた。


「異世界人という言葉(ワード)

 いろいろなところで使われているみたいですね

 ただ、これが、別世界のことなのか、

 別の国のことなのかよくわからないってところです」


 ナツキたちと別れた店長と以下イブ、マック、ジョンらは、

 ナツキとレイが出会ったという村を訪れた。


 そこから情報を集め、

 帝国の主な都市である

 ライン、エルベ、ナイルを回り、

 ここ帝都へとやって来た。

 もちろん道中もナツキに関することや

 “異世界”に関する情報を集めて。


 そして、すべてが帝都へと集約している事実は掴めたものの、

 “異世界”がどのような意味合いを持つものか決定打を欠いていた。

 現在イブには帝都南東部、

 ジョンには北部で情報を集めてもらっていた。


「やはり、異世界についてはわからないか」


「はい、

 ただ異世界人を買った人間から

 “二ホン”や“アメリカ”という言葉を聞けはしましたが……」


「聞いたことないな。

 眉唾ものだ

 だが――」


 ――黒衣の男の言葉が気になる。

 なにか俺たちのあずかり知らないところで何かが起きている。

 そんな嫌な背筋を撫でられる感覚がするな。


「いや、わかった

 とりあえず引き続き調べてくれ」


「了解」


 マックが酒場を出ていく。



 それを見届けて、

 古びた酒場の中で店長が呟く。

「最悪その奴隷から直接聞くことになるだろうな」


「へぇ~それは~面白いわね!」

 陽気な高い声が店長の背後より響く。


「なっ!?」


 店長は即座に前方へ踏み出しつつ、

 半回転し後方を向く。


「お前は……」


「久しぶりね、ルドルフ」

 片手を上げてにこやかに微笑む女性。


「……マリリン・リングエスト」


「万拳のあなたがまさかこんなところに居るなんてね」


「そっくりそのまま返すぜ

 聖女のお前がなんでこんなところにいるんだよ」


 店長の背後より現れたのは

 八大英雄の1人

 聖女――マリリン・リングエストその人であった。


「まぁいいわ

 とりあえず酒でもどうかしらね?」


 床下から酒樽を取り出す。

 それはここを拠点にし始めた店長らが、

 食料や水と一緒に保管していたものだった。


「相変わらずの酒好きだな

 それに聖職者とも思えないその恰好

 前よりひどくなったな」


 聖女は教会に認められた聖職者のひとりでもある。

 が、マリリン・リングエストの恰好は

 そういうイメージとはかけ離れていた。

 背中の大きくあいたトップスに、

 ショートパンツ、羽織っている上着はシースルー。


「惚れた?」


「ぬかせ」


 勝手に酒盛りを始めた聖女に店長は付き合うことになった。


「で、聞かせてもらおうか」


 なぜ、聖女が現れたのか、その理由を。

 店長の言葉を聞いて、酒を飲みながら聖女は語りだした。


「異世界人について嗅ぎまわっている連中がここ最近増えてきたのよ

 シェルミア王国の一部も動き始めているみたいだし、

 帝国国内も活発になってきた。

 そんなときにほとんど痕跡を残さずに

 異世界人を調べているグループが現れた。

 ようやく昨日アジトを突き止め、

 乗り込んでやろうと来てみれば、

 ルドルフがいたってわけ」


 昨日――ということはマックが後をつけられたのだろう。

 八大英雄が相手ではそれも仕方ないことだった。


「ねぇルドルフ、

 どうして異世界人について調べているの?」


「……異世界人についてじゃねぇな

 異世界について調べている。

 それより聖女、答えろ

 異世界とはなんなんだ?」


「“チキュウ”

 “トウキョウ”

 “ナツキ”」


 ゆっくり聖女は言葉を紡ぐ。


「そう、ルドルフは“ナツキ”に反応したわね

 会ったことがあるのかしらね

 その子、黒目黒髪じゃなかった?」


「……」


「そんなに怖い顔しなくても教えるわよ

 彼は、アイザワナツキは異世界人

 帝都で召喚されて行方不明となった人間よ

 彼の他にも20名ほど同じ時期に召喚されているみたいね

 彼のことを探している同じ異世界人もいるみたいよ」


「……情報は感謝するが」


 昔から聖女は知恵が回る。

 聞きたいことを素直に話してくれたことに店長は警戒を強めた。


「それ以外にも異世界について知っているわ。

 ここからは取引ね

 どう?」


 ――来たか……


「取引内容は?」


「情報の提供」


「こっちは?」


「協力してほしいのよ」


「お前にか?」


「いいえ、大魔法使いによ」


「あのガキか

 内容は?」


「それは、今は言えないわ

 でも悪い取引ではないわ

 あなたの故郷――サーマル王国滅亡に関する事実がもれなくついてくるわよ」


「なっ!?

 バカ言え、あの国は魔族に滅ぼされた

 それ以上でもそれ以下でもない

 ふざけたことぬかすと

 はっ倒すぞ」


「聞く聞かないは任せるけど

 聞くことをお勧めするわね」


 しばらく店長と聖女は睨み合い、

 沈黙が場を支配する。


「少し考えさせろ

 仲間と話をする」


「わかったわ

 二日後の正午の鐘のころにまた来るわ」


 聖女はその場を後にした。



お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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