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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第4章 セントフィル都市連合編 ~俺もそれなりに強くなります~
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SS レイの道場入門

 


 時系列:セシリアとの対決後




「ここか」


 レイは、セシリアからの紹介状を手に剣術道場を訪れていた。

 東海流聖級“獅子”が営む道場、

 その道場はイリオス州の南西部にある。


 比較的治安がよいセントフィル都市連合のなかでも

 イリオス州は治安面でかなり上位に位置する。

 そんなイリオス州でもスラム街というものは存在していた。

 そのスラム街でもあるイリオス州南西部の中心にその道場は建てられていた。



 道場の門前でたむろする数人にレイは話しかける。


「すまん、

 道場への入門に来たのだが」


 きょとん、

 と、男たちがお互いの顔を見合わせ、

 どっと笑いが起きる。


「あはははは

 嬢ちゃんみたいなのが一端に剣士気取りか」

「こりゃ俺らも負けてられないな

 まっ入門できたらの話だがな」

「「「はははははは」」」


 ――話にならんな。誰か別の者に聞くか


 レイが立ち去ろうとすると男たちがレイを取り囲み始めた。


「どういうつもりだ?」


「な~に、俺たちが少し剣の使い方を教えてやるよ」

「大丈夫、手加減はしてやるよ」

「ほらほら、早く構えな!」


 ――そういえば、忘れていたが、

 ナツキと出会う前はよくこういう(やから)に絡まれたことがあったな


 レイは言われたとおりに剣を構える。


「嬢ちゃん本物は使わないのかい?」

「もしかして怖いの??」


 レイが構えたそれは、

 ここに来るまでに購入した刃の潰れた訓練用の剣。


「くくっ、言葉も出ないか」

「いくぞ、らぁ!」


 レイは常に(・・)道場の門のほうを向いたまま、

 その場を動くことなく、

 男たちの剣をあしらう。


 ――構えすら満足にできない連中か……


 2,3打ち合いで、もう十分と、レイは一撃入れる。

 レイより二回りも大きい身体が、吹っ飛ぶ。


「なっ!?」


 今になってレイの実力を見誤っていた

 ――そう男たちが気づくが、時すでに遅し。

 レイを取り囲んでいた5人の男が次々に転がっていく。

 急所を外した打撃であったが、

 しかし、男たちはすぐには立ち上がれなかった。


 ――こんなものか。


 レイは再び、道場の門のほうを見る。


「てめぇら何の騒ぎだ」


 声を上げた女を筆頭に、

 男と女がそれぞれ後について、レイのほうにやってきた。


「し、師匠

 いやこれは……」


「あたしゃはよぉ

 てめぇらに剣を振っとけ、

 そう言わなかったかぁ?ああ?」


 師匠と呼ばれた女は

 女性に似合わない体格に、

 剣士には不必要と思われる大きな胸、

 右頬の大きな傷を持っていた。


 ――なるほど。この方がかの有名な“獅子”か。噂を聞く限り男かと思っていたが。


 レイを取り囲んでいた男たちは顔を青くしてガタガタと震える。


「で、てめぇは?

 道場破りかぁ?」


「ん?試験ではなかったのか?」


「ああ?」


「先ほどの視線は貴女であると思っていたのだが」


 男たちがレイに絡み始めた時から感じ始めた“視線”

 レイはてっきり抜き打ちの試験かと思っていた。


 どの程度動けるのかを試されている。

 そう思ったから、無駄と思える男たちとの遊び(・・)に付き合ったのだが、どうやら違ったらしい。


「見てたさ。ウチのバカをな

 おめぇは2ヶ月謹慎だ

 帰んな」


 男たちのリーダー格と思われる男に“獅子”は言い放った。

 レイに真っ先に斬りかかった男は、

 文句も言えずその場を後にした。


「見てたのはウチの(もん)

 で、てめぇは?」


「入門希望だ

 それとこれを」


 レイは、セシリアの推薦状を渡す。


「なんだい?

 ウチは他所からの(もん)の受け入れはしとらんが」


「渡せばわかるとセシリアが言っていた」


 正確にはそう聞いた。

 レイが目を覚ますとすでにセシリアはどこかへ行っていたようで直接聞いたわけではない。


 セシリアという言葉に、“獅子”の後ろの二人は首をかしげる。

 一方で“獅子”は、誰かわかっているようで小さく舌打ちした。


 レイから推薦状を受け取り、“獅子”はそれを読む。


 少しして、舌打ちと共に“獅子”は頷く。


「ああ、わかった

 入門は認める。

 他の奴らと同じようにするからな

 おい、こいつにいろいろ教えてやれ」


 右隣の男に指示を出して、

 “獅子”は道場へ引き返していった。

 かくしてレイは東海流聖級“獅子”がひらく道場への入門が認められた。



 ***************



「お師匠、いきなりレックを付けるのですか?」


 レックとは先ほど“獅子”の隣にいた青年のこと。

 この道場では通常、一つ上の階級の者が指導することとなっている。

 入門時の階級は見習いとなる。レックは最上級。

 これでは不釣り合いではないかと、この道場もう一人の最上級ジーナが尋ねる。


「ん?

 ああ、まぁダメならそんときはそんときだ」


 なにせあの勇者セシリア・オルト・ハーメリックが上級くらいは余裕であると言ったのだ。

 ――にしてもあのガキは注文が多いな。

 やれ、自分のことは内緒にしろだとか

 やれ、自分は上級ということにしているからそれ以上の級をいきなり与えるなだとか

 やれ、東海流と西風流を教えてやれだとか


「ッチ」


 手紙の最後に

『あの時よりは、少しは強くなった?今度相手してあげるわ。それじゃよろしくね』

 こう書かれていた。


 第3次人魔大戦時の恩を返せということなのだろう。


「まぁ勇者の恩がそれくらいでいいなら安いもんか」



 レイの成長速度に“獅子”が危機感を抱くのはまだ先のことである。




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ

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