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無能お荷物の逆転!!異世界転移  作者: 今日も晴れ
第4章 セントフィル都市連合編 ~俺もそれなりに強くなります~
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第95話 決意と誓い

 


 “ティアマト因子”


 あるかわからない敵の妄言。

 でも私には

 その存在が確信に近いものとなっていた。


 あれからずっと考えている。

 頭が良くない私だが、

 それなりに知恵を振り絞って考えた。


 そして

 わからなくなった。


 私は誰で、

 誰が私なのか。


 因子を受け継ぐと意識は変えられる。

 それなら変えられた私は

 私でなくなるのか。


 ナツキを守りたいという気持ちは偽りで、

 私は以前のように誰にも関心を向けていないのか。


 ナツキが見ているのは

 ティアマト因子のほうで

 私を見ていないかもしれない。


 ガラにもなく悩んで、

 悩んだ。


 どうしようもなくなった時

 私は剣や刀を見る。

 剣や刀はいい。

 絶対に裏切らない

 悩んでいるときそれを見ると落ち着くのだ。


 刀になりたい。

 本気でそんなことを考える私は愚かだろうか。





 悩む時間は唐突になくなった。


 まつもと みなみという少女は、

 話を聞く限りナツキと同郷だ。


 でも話の中に出てきた

 “にほん”や“きょうと”などの地名は聞いたことがない。

 帝国ではないのだろう。

 “異世界”という言葉も聞こえてきた。

 そういえば、

 昔、母と師匠の会話にそんな単語が出てきたような気がするが、

 思い出せないものは仕方ない。


 話はだいたいわかった。

 同郷の人間が帝国に捕らわれている。

 そしてナツキはおそらく助けに行くのだろう。


 臆病で、

 おっちょこちょいで、

 頼りにならないことも多いけど、

 ナツキはこういう時、

 誰かを見捨てたりするような男ではない。

 それはラープの街での一件で分かっている。


 では、私はどうすべきか。

 心の奥底から“守れ”という“意識”が湧いてくる。

 この“意識”は私のものか、ティアマト因子のものか

 ナツキを見る。

 見続ける。


 真剣に少女の話を聞いている。

 表情に後悔がにじみ出ていた。

 握りしめた拳が微かに震えている。


「アン、帝国への魔法陣は?」


 怖いはずなのに。

 逃げ出したいはずなのに。

 それでも前へ進もうとする。


「帝国領土内にはありませんが、

 帝国領の近くにはあります

 馬を走らせれば四日ほどで帝都に着くでしょう」



 人はそんなに強くはない。

 ナツキは、

 ナツキの心は十分に強いのかもしれない。


「ですが、

 ですがマスター

 帝国にはいくつもの騎士団があり、

 そのほとんどが皆、

 北帝流の上級以上の者ばかり

 それだけでなく

 帝を冠する北帝流聖級の

 水帝、炎帝、雷帝、風帝、剣帝、氷帝などが存在しています

 マスターでは太刀打ちできないでしょう

 開幕速攻ぺちゅん確定です

 マスター少し落ち着いて冷静になってください」


 私は――


「マスター

 視るべきもの視てください」


 ナツキと目が合った。


「そ、そのレイ

 みなみを頼むよ

 これは俺たちも問題だからさ

 レイは巻き込めない」


 ナツキならそう答える

 と、思っていたそうな言葉。

 巻き込めない。

 ナツキの問題。

 確かにそうだ。

 その通りだ。


 でも、私がどうするか、

 何を想うのかは私の問題だ。



「私は弱いですか?」



 敬語なんていつぶりだろうか

 いつもの口調と違ってナツキが驚いている。

 私自身も驚いているのだから当然か。


「え?

 弱いなんてあるわけないだろ

 レイにはいつも世話になっているし

 旅の時も迷宮の時も今回も

 いつも世話になりっぱなしで

 本当に俺はレイがいなきゃここまでやってこれなかった

 でもだからこそ巻き込みたくないんだ」


 神無刀“布都(ふつ)

 鞘から抜き、眼前に掲げる。


 落ち着く。

 と、同時に思考がクリアになっていく。

 何を悩んでいたのだろうな。



 透き通るこの刀身に私は誓おう。


「私はこれから自分で考え、私自身で決断してゆく

 何者でもない私が決める

 私は行く

 共に歩んでいきたい

 ナツキの仲間として」


 もう守りたいという言葉は使うまい、そう心に決めた。

 確かにその気持ちはある。

 けれどもこれからはナツキと共に。


「でも敵は強いぞ

 生きて……帰れないかもしれない」


「だが、ナツキは行くんだろ?

 仲間は見捨てない。

 1人では無理でも2人でなら可能性は上がる」


「2人ではありません

 私もお付き合いしましょう

 2人と1体というところでしょうか」


「ああ、よろしく頼む」


 もう大丈夫。

 私の気持ちは私の物だ。



 ********



「ま、待ってください

 ナツキさんが行っても――」


「みなみ安心しろ

 俺は弱い!

 弱いからこそ安全に行く

 無茶はしない」


 そう、最近ちょっと強くなったからといって調子に乗ってはいけないのだ。

 葉山や大沢、日咲さん

 チート連中と合流すれば、

 最小限の戦闘で切り抜けられるはずだ。


「でも――」


「みなみはしばらく留守番だな」


 エルマとセシリアにでもみなみの世話をお願いしよう。


「行くか」

「ああ」

「イエス・マスター」


 数時間後、2人と1体は帝国へ向けて出発する。

 日本人を奪還せんために――




(第4章本編完)

(第5章 帝国編に続く)




お読みいただきありがとうございます

今日も晴れ


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