第93話 もう一つの異世界召喚
彼女――
松本みなみは語り始めた。
「…………
私がこの世界に来たのは
もう一年以上前だと思います
日本で最後に過ごしたのは2028年5月10日
ゴールデンウイーク明けで
友達と公園に遊びに行くはずだったんです。
中学一年になったばかりの私はまだ友達が少なくて、
小学校の時の友達と約束をしていました。
剣道をやっている友達で
性格とかは似てないんですけど
よく一緒に遊んでいました
公園に先に着いた私は
気が付いたら、変な場所に居たんです。
さっきまで公園のベンチに座っていたはずなのに。
気が付いたら大きな石碑と背の高い山が見える場所に。
私以外にもたくさん人がいました。
小学生くらいの男の子から高齢な女性まで。
だいたい20人くらいでした。
皇帝と名乗る人が現れて、
それで一人ひとり部屋に連れていかれました。
それからしばらく部屋に閉じ込められました。
食事やトイレは騎士とかいう人が必ず付いてきて
それでも一日に一度日本人が集められて話せる機会があったんです。
そこで大学生の人が皆さんを励まし続けていて。
今となってはそれで私も頑張れていたんだと思います。
いつか日本に帰れると。
毎日顔を合わせると
そこで同じくらいの女の子と友達になりました。
佐々木春
こんなときでもいつでも笑顔で本当に太陽のような子で。
ハルは中学2年生で中学のことをたくさん聞きました。
中間テストとか期末テストとか
小学校にはない話をたくさん。
いつか私も通いたい。
そう思っていました。
でもある日、
その大学生は来なくなりました。
それだけじゃないんです
日を追うごとに、
ひとりまた1人いなくなりました。
怖かったです。
そんな日々の中、
ついに私の日がやってきました。
地下に連れていかれて。
そこではいろんな人がいて、
たぶん日本人で
誰も彼もが死んだような顔をしていて
それで、その中の一つに、
大学生の人が――
変わり果てた姿でした。
両腕が無くなっていたんです。
怖くて怖くて
地下の汚い牢屋に入れられました
どれくらい閉じ込められていたんでしょうか
ご飯も一日に一回くらいに減って、
トイレなんレなくて、
それでだんだん時間の感覚もわからなくなって、
ああ、死ぬんだなって思えてきて、
それなら早く死にたいって思うようになって。
でも、そんな時でも大学生の人はあきらめていなかったんです。
まわりの人に希望を持てって言って。
日本政府が助けてくれるはずだからって。
あきらめたら終わりなんだって。
でも私はもうあきらめていました。
それどころか、
あの、大学生のお兄さんのことに
静かにしろって思って。
うるさくしたらみんな殺されちゃうかもしれないから
もうしゃべらないでってそう、思ってしまったんです。
早く死にたいって思っていたはずなのに。
それでも
やっぱり死ぬのは怖くて。
私お母さんにまだ言えてないことたくさんあって
お父さんにも言いたいことたくさんあって
弟の正輝にも伝えたいことがたくさんたくさんあって
好きな人もなまだいなくて、
恋だってしてみたくて
中学で友達を作りたくて……
死にたくない
生きて、
ただ家族に会いたいだけなのに
それすらも叶わない
涙って流し続けると枯れるんですよ
知っていました?
私の涙は枯れてしまって
それでも泣き続けて
たまたま大学生のお兄さんの叫んでいるときに
見回りの騎士がやってきて、
それで
お兄さんが死にました。
首を切り落とされたんです
あっけなくあっさりと
そして騎士は近くにいた女性を1人連れて行きました。
私はどこかホッとしていました
最低だとわかっていても
それでも自分が死ななかったこと
連れていかれなかったことに安堵しました。
それから牢屋の人が増えたり減ったりを繰り返して。
それで横の牢屋にハルが来たんです。
私を見るなり励ましてくれて、
でも声を掛けてほしくなかったんです。
殺されるかもしれないから。
大学生のお兄さんのようになりたくないから
すごく自分勝手で、
それで気が付いたらハルに
ハルを罵っていて
溜まってたストレスとか
そういうの全部ぶつけて
私友達に最低なこと言って
それで天罰だったんでしょうね
次の日私は連れていかれました。
裸にされて手と兄に枷を付けられて首輪されて
奴隷として売られたんです。
異世界人少女ってことで高値で売られたみたいで
そのあと各地を転々としました。
私が売られた先に別の日本人がいることもありました。
その人から聞いた話では
女は逆らわない限りは生かしてもらえると
人としての尊厳はなくなるけれど生きていられると
男は殺されるっていう話で
とにかく逆らわないようにしようしようって
それで私はどこか別の国に売られることが決まっていたみたいで
ずっと馬車での移動が続きました。
それで気が付いたら同じような少女たちがたくさんいる場所に行きついて。
それで
それでナツキさんに助けられました。
私はどんなにみじめでもいいから
生き続けていたかったんです
最低ですよね」
お読みいただきありがとうございます
今後ともよろしくお願いします
今日も晴れ




