第1話 プロローグ1 ~始まりは突然で~
光が俺を包む。
視界が歪み、五感と意識が乖離する。
浮遊間の後、すべての感覚が戻ってくる。
息をし、心臓が動き、手足の感覚がある。
それを意識できたとき、俺は気が付く。
目の前には自身の背丈を優に超える石板があった。
左手には大きな窓、そしてその先には見たこともない景色。
透き通る青い空、緑豊かな山々
そして、明らかに高すぎる、まるで天に伸びているかのような大きな山。
それは、一目でわかる。
見たことがないと。
日本の最高峰は富士山
世界最高峰はエベレスト
どの記憶にも当てはまらないその山を俺は見つめながら
数刻前の記憶を手繰り寄せた。
―――――――数刻前
2030年7月下旬
期末試験が終わり、夏休みのカウントダウンが始まったある日のこと。
高校2年の1学期。
2年2組の教室。
昼食前の授業。
今日のお弁当の中身を考えながらも、
俺は真面目に授業を受けていた。
期末が終わって、ただでさえやる気がないのに、保健体育の授業。
クラスのほぼ全員がやる気ゼロだ。
皆、各々好きなことをやっている。
一方、俺は学校で好成績を残して推薦で大学へ。
そんな人生プランを立ててるが故、できる限り真面目に取り組んでいた。
高校に入り1年と3か月。
クラス替えがなかったため、クラスメイト同士は基本、仲がよく、
いくつかのグループが存在する。
イケメンと美少女のリア充チームや、ヤンキー連中
後はインテリだったり、地味女子だったり、スポーツ組だったり、そんな感じだ。
そんな中、俺はぼっちであった。
別にいじめられているとかではない。
たとえ今現在もどこからか飛んできた消しカスが俺の頭の上に乗ろうとも……
クラス一の美少女、
日咲さんとひょんなことから食事をとる機会があり、それをクラスの連中に見られた。
それが始まりだ。
彼女に恋心を抱いているクラスメイトが全員敵に回るのに時間はかからなかった。
というか速攻だ。
まぁそんなわけで俺、相沢夏希は、そんなぼっちな日常を今日も今日とて享受していた。
そう。
僅か1分前。
あの光に包まれるまでは。
お読みいただきありがとうございます
今日も晴れ