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ガラクタ道中拾い旅  作者: 宗谷 圭
第3章 親友のいる村(トモノイルムラ)
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第9話  友情を拾う 4

「ワクァは、もっと同年代の人間と交流するべきっス。じゃないと、いつまで経っても人付き合いが下手なままっスよ!」

 涙が収まって、開口一番トゥモから発された台詞がそれだった。本当に感情がコロコロ変化する少年で、下手したらヨシ以上なのではないかと思う。それはともかくそんな理由から、トゥモと打ち解けてから丸々一日経った現在、ワクァはトゥモに連れられて村の広場に向かって歩いている。熱はもう完全に下がっているし、本調子を取り戻したと言っても問題は無い。……が、病み上がりで無理はしない方が良いと言うトゥモの母の意見に従い、出発は先延ばしする事にした。そして、それを知ったトゥモが張り切りながら言ったのだ。

「それなら、ワクァに自分の友達を紹介するっス! みんな良い奴っスから、きっとワクァも仲良くなれるっスよ!」

 トゥモの張り切りっぷりには逆らう事ができず、更にヨシまでもが

「うん、確かにワクァはもう少し人付き合いを覚えるべきだわ。行ってきなさい。って言うか、行け」

 ……と、いつにない命令口調で言ったので、これはもう行かなければどんな目に遭わされるかわかったものではない。そんな訳で、今現在ワクァはトゥモの友人達に会うべく移動中……というわけである。因みに、ヨシ自身は畑仕事とヤギの乳搾りが楽しいのか、本日もトゥモ母のお供である。

 まぁ、ヨシはヨシで何か理由があるのかもしれないし、下手に口を挟んでおかしな目に遭わされてもたまらないので、ここは一つ黙っておく事にしよう。そんな事をワクァが考えていると、突如頭上から声が降ってきた。歳は自分と同じか、少し上くらいのトゥモよりもずっと低い青年の声だ。

「よぉ、トゥモ! 帰ってたなら、声くらいかけろよな!」

 思わず上を仰ぎ見れば、栗色の髪を短く刈り上げた体格の良い青年が木の上からこちらを見下ろしている。背には弓矢を背負っており、鋭く大きな紅玉色の瞳はどんな標的も見逃しそうに無い。

「アーク! 元気だったっスか?」

 懐かしそうなトゥモの問いに、アークと呼ばれた青年はニカッと笑いながら答えた。

「元気じゃなかったら、こんなところに登ったりしてねぇよ! 相変わらずヌケてんな、お前……」

 更に何か言おうとして、アークは言葉を止めた。その目は、ワクァの事を凝視している。

「?」

 ワクァがアークの事を怪訝な目で見ていると、アークはにんまりと笑い、広場の方角に向かって大声で叫んだ。

「おい、みんな来い! 面白ぇモンが見れるぞ!」

 その声に、すぐさま幾人もの若者が集まってくる。八~九人といったところだろうか。どの若者も田舎の青年らしく、日に焼けて頑丈そうな体格をしている。はっきり言って、どの若者もトゥモより強そうだ。と言うか、身長などを考慮すると、ワクァがこの場で一番弱そうに見える。実際に戦ってみたらどうかはわからないが。

 駆け集まった若者達は皆一様にワクァに注目し、各々「誰だ?」「見ない顔だな」などと好き勝手に話している。そんな彼らをまとめるように、アークが楽しい重大発表をするように叫んだ。

「見ろよ! 兵士になるっつって街に行ってたトゥモが、こんなに美人な彼女を作って帰ってきやがったぞ!」

 瞬時に、場は騒然となった。誰も彼もが、「トゥモが!?」「すっげー美人! 人間かよ!?」と口々に驚きの言葉を述べている。トゥモは、どうすれば誤解を解くことができるのかわからず、ただおろおろとしている。だが、この喧騒は三十秒もしないうちに治まることとなる。何故なら、アークの言葉にワクァが数日ぶりに怒りのこもった叫び声を発したからだ。

「誰が彼女だ!? 俺は男だ!!」

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