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ガラクタ道中拾い旅  作者: 宗谷 圭
第2章 守人の少年(モリビトノショウネン)
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第13話 理由を拾う 1

「それにしても……何か大変な夜だったわね~。マフも、お疲れ様」

「まふ~……」

 あくびをしながら話し掛けるヨシに、同じようにマフも眠そうに返した。すると、ヨシは更に眠そうな声で残念そうに言った。

「そうよね、眠いわよね。せっかく貴族のお屋敷に泊まれたってのに、結局ほとんど休めなかったわよね……」

 愚痴るようなその言葉に、ワクァはやはり眠気を堪えるようにしながらも言った。

「お前は事が終わった後、講堂で爆睡してただろうが。俺は事後処理だ何だで、一睡もしてないんだぞ!?」

「事後処理? ……あぁ、女装に使ったドレスを返しに行ったりとか?」

 あくびを噛み殺しながら言うヨシに、ワクァは青筋を浮かべながら怒鳴った。

「役人に奴らを引き渡すのに立ち会ったり、役人に事情を話したり、だ!! 後者は人質に取られていたお前も参加するべきだろうが!!」

「いや、だってファルゥちゃんやシグくんと話すので忙しかったし。……二人とも寂しそうだったわよ? ワクァが忙しそうで、お礼も言えなかったって」

「……それに関しては、悪かったとは思っているが……」

 あと一日滞在しておけば話をする事もできたし、眠いのを堪えながら旅をする事もなかった。それでも、あれだけ大っぴらに女装してしまった以上一刻も早くあの街から……いや、マロウ領から出たかったワクァである。

 何となくそれを察しつつ、ヨシは更に言った。

「あと、シグくんがこうも言ってたわよ。「ワクァさんが何故ヨシ様と一緒に旅をしているのかがわかった気がします」って」

「……何……?」

 怪訝な顔をして、ワクァが足を止めた。すると、ヨシも苦笑しながら言う。

「いや、私もそれ以上の事は聞かなかったら、何でそう思ったのかはわからないんだけどね。多分、私達がベストコンビだとでも思ったんじゃない?」

「……どういう事だ?」

 あからさまに嫌そうな顔をするワクァに、ヨシは更に苦笑をしながら言った。

「いや、だから、そういう事よ。戦いにおいては息の合った連携プレー。普段の会話はお笑い芸人も真っ青のボケ・ツッコミぶり。どう考えたってナイスコンビじゃない?」

「馬鹿を言え。大体、お前といつ連携プレーをした? 各自勝手に戦っていただけだろうが」

 呆れ果てた顔でワクァが言うと、ヨシは「あ、そっか」と頭を掻きながら言った。そして、更に言う。

「じゃあ、ボケ・ツッコミのコンビっぷりしか残らないわね」

「……何?」

 ヨシの言葉に、ワクァは今度こそ完全に動きを止めた。すると、ヨシは間髪入れずに早口で言った。

「だって、思い出してみてよ? ファルゥちゃん達に会ったのは、昨日の夕方。その後すぐに別れて、私はお屋敷、ワクァは宿屋へ。その後事件が起こり、事後私は講堂で睡眠、ワクァは事情聴取と立会い。さて、戦いを除いて、私達がファルゥちゃん達の前で取った行動と言えば……?」

 言われて、ワクァは考えた。言われてみれば、ボケとツッコミの応酬しかしていなかったような気もする。ワクァの顔が、徐々に青ざめていった。

「あ……」

「ほらね?」

 勝ち誇った顔で、ヨシが言う。すると、ワクァは拳を震わせながら叫んだ。

「何がほらね、だ! そんな事になったのも、ひとえにお前が馬鹿な発言をしたりくだらない行動を取ったりするからだろうが! 何でお前のせいで俺まで芸人扱いされなきゃいけないんだっ!?」

「そこはほら、旅は道連れ世は情け、って言うじゃない? ま、旅の仲間をやってるうちは、何をやっても一蓮托生って事よ。こうなったらもう、先に開き直った方の勝ちよね?」

「そんなワケのわからない理屈があるか! ……あぁ、もう! 本当に何で俺はお前なんかと旅をしているんだ!?」

「ワクァが私に惚れたから」

 さらりと言ってのけたヨシに、今度こそワクァの脳内血管はブチ切れた。

「気色が悪い事を言うなーっ!!!」

 青い空の下、ワクァの怒声がこだまする。その声は、ひょっとしたらファルゥ達にも届くのではないだろうかと思われるほど大きな声だった。

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