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ガラクタ道中拾い旅  作者: 宗谷 圭
最終章 ガラクタ人生拾い旅(ガラクタドウチュウヒロイタビ)
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第9話  新たな旅を拾う 4

 小遣いを貯めこんだ財布。細々とした物が少し。それらを鞄に詰め込んで、小さな荷物を背に負った。

 腰には、銀色の剣。十歳の誕生日プレゼントにと、母のヒモトが手ずから打ってくれた剣だ。銘を、カイという。ヒモトの故郷であるテア国では、開く、という意味があるのだそうだ。

 この剣を持って、己の道を、己の未来を切り開け、と、ヒモトは言った。己のために……ワクァの事が好きな自分のために、道を切り開く。今がまさにその時だと、トヨは思う。

 そう言えば、この剣を打つために、ヒモトはわざわざ実家のテア国に一時里帰りをしていた。テア国の方が良い鉄が手に入るし、良い鍛冶場があるからだと言う。ヒモトが留守にしている間、ワクァがどこか寂しそうにしていたのが印象に残っている。

 自分が勝手に旅に出たら、病床のワクァはあの時と同じような顔をするかもしれない。そう思うと、城を出る事に罪悪感を覚える。

 だが、躊躇っているわけにはいかない。旅に出ねば、そのワクァが弱っていく姿を、手をこまねいて見ていなければならないのだから。

 部屋を出て、中庭で再びシグと落ち合う。ニナンとファルゥが、餞別と言って小さな菓子を袋に詰めた物をくれた。日持ちが良く、栄養価も高いため、旅に出る時に持っていると便利なのだと、ニナンが教えてくれた。彼らが領地からヘルブ街まで来る際に用意した物の一部なのだろう。ありがたく受け取り、鞄に詰めた。

 シグと連れ立って、城を出る。宣言通りファルゥが話を通してくれていたようで、見咎められる事無くあっさりと出る事ができた。

 城を出て、街を見物するフリをしながら街の外へ出るための門へと急ぐ。ヨシは、既に荷物を抱えて待っていた。十五年前から何ら変わらない。二つの大きな肩掛け鞄を、下げている。

「それじゃあ……今から出発するけど。覚悟は良いわね? 私もシグくんも強いつもりだけど、もし盗賊と会って戦うような事になったりしたら、トヨくんの事をずっと見ているわけにはいかないんだから。自分の身は自分で守る事! 良い?」

「わかってる」

 トヨが頷いたのを確認し、ヨシとシグは頷き合って、門の外へ足を踏み出した。その時だ。

「ヨシ、シグ」

 トヨが、二人の背後から声をかける。何事かと思って二人が振り向くと、トヨが頭を下げていた。

「とっ……トヨくん?」

「どうしたんですか、殿下?」

 慌てる二人に、トヨは思い詰めた顔で言う。

「僕の我儘に付き合せて……ごめんなさい。けど、僕はどうしても父様を助けたいんだ。だから、力を貸してくれると言ってくれて、嬉しい。……ありがとう。これから、よろしくお願いします」

 ヨシとシグは顔を見合わせ、そしてにこりと笑った。

「僕達だって、陛下には元気になって頂きたいんです。頭を上げてください」

「こういう時に礼儀正しいのは、ヒモトちゃんの躾の賜かしらね? ワクァが一人で育ててたら、絶対こうはならないわ」

 そして、二人でトヨを促し。三人は揃って、ヘルブ街から旅立った。

 秋の空は青く、空気は少し冷たい。その空気を、トヨは大きく吸い込んだ。

「絶対に、父様を助けるんだ。死なせたりしない……!」

 強く呟き、トヨは腰に帯びたカイをギュッと握った。

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