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ガラクタ道中拾い旅  作者: 宗谷 圭
最終章 ガラクタ人生拾い旅(ガラクタドウチュウヒロイタビ)
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第2話  近況を拾う 2

 満を持して婚礼を挙げたヘルブ国の王子と、テア国の姫君。その初夫婦喧嘩は、何と新婚初夜だったという。

 原因は、夜の営みをするか否か、だったと言うのだから、聞いた者は言葉も無い。

 一般的に考えれば、初夜という時間は夫婦が初めて二人きりで過ごす夜であり、当然あれやこれやがあると考えるものだ。……が、それをせずに早く休めと、ワクァは言った。

 ワクァとしては、遠いテア国からはるばるやってきて、すぐに式もあり、体も気持ちも疲れているだろうと、気を使ったつもりだった。

 ……が、ヒモトは初夜の営みも含めて覚悟しての嫁入りであり、それをこなさず休めと言うのは覚悟を無駄にされたも同然と感じたらしい。それで怒りだした。

 ワクァの方も自分から言い出した手前、退くに退けず、やるのやらないのの大喧嘩である。

 非常に、馬鹿馬鹿しい。

 ヒモトは

「王族に嫁ぐという事は、その一族の世継ぎを産みに行くという事でもあります。テア国では昔、嫁して三年子無きは去る、という言葉があったほどです。ワクァ様は、私がテア国に帰る事になってしまっても良いと仰るのですか!?」

 と言う。するとワクァも反論せざるを得ない。

「ここはテア国ではないし、例えそんな風習がヘルブ国にもあったとして、子どもができなくても帰らせるつもりは毛頭無い! 俺がヒモトと結婚したのは、ヒモトと一緒にいたかったからだ!」

「ご自身の立場を少しはお考えください! 事実、貴方様が行方不明になっておられた間、ヘルブ国は世継ぎがおらず、どこか不安定な状態だったというではありませんか!」

「それはそうかもしれないが、初日からそんな事を気にするな!」

「気にするなという事でしたら、私が疲れていないかも気になさらないでください! 気遣って頂けたのは大変ありがたい事ですが、今からその心配のなさりようでは先が思いやられます!」

 どちらも、一歩も退かない。そんな調子で、三十分は言い合っていただろうか。遂にヒモトが、禁じ手を使った。

「まさかとは思いますが……ヘルブ国の王子は、実は王子ではなく姫君であった。男の世継ぎが生まれないので、仕方なく性別を隠して後を継がせる事にした……などというおとぎ話のような隠し事をなさっている……というような事は仰りませんよね?」

 そんな話題を出されたら、冷静に対処できるワクァではない。この日、一番の大声を出した。

「そんなわけがあるか! 俺は男だ!」

 すると、ヒモトは冷静に頷いた。そして、淡々としながらも力強い声で言う。

「ならば、貴方様が男であり、私は姫君に嫁いだわけではないと証明してくださいませ。今、この場で!」

 ここでワクァが黙り込み、初夫婦喧嘩はヒモトの勝利で決着がついた。

 まことに、非常に馬鹿馬鹿しい話である。

 そして、あまりに大きな声で喧嘩をしていたために、喧嘩の内容が外に丸聞こえであったというおまけまで付いた。今となっては、城内で知らぬ者はいないほどの話になってしまっている。

 非常に馬鹿馬鹿しい上に、代償の大きい初夫婦喧嘩となってしまったのだった。

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