ティーン・エイジャー
ハナからキスで始まります。
ラブラブカップルですから。
夕焼けが綺麗な橙色をしていた。この時間、校舎裏に他に人気はない。私と先輩が落ち合うにはもってこいの場所だった。
「んっ……」
――くぐもった声がお互いの口から漏れる。荒れた息も、少し乱れた髪も、全て愛しく見えた。眼鏡を取った先輩の細い顔、絹糸のように長い髪を眺める。自分の顔にかかった前髪をすっと耳にかけ直して、同じように先輩の髪も整える。そして、もう一度顔を近づけた。
「こ、これ以上はだめ……」
「どうしてですか?」
先輩は頬を赤らめて、私との間に腕を入れようとしていた。でも、その力は弱々しい。
「だって……恥ずかしい」
「ふふっ」
「なんで笑うの……」
「先輩、可愛いですよ」
そういって、私は強引に唇を奪っていた。ほんの少しの抵抗があった後、するするとほどけていくように先輩は私を受け入れてくれる。そっと舌を入れていく。唾液が絡む、舌と舌とが触れ合う。飴よりも甘い先輩の味。名残惜しい感覚、先輩の口から離れていく。
「……だめだって言ったのに」
「ごめんなさいって」
ちょっと拗ねた先輩の頭をなでなでする。先輩のほうが私より背がちょっと高いけど、なんだかんだで主導権を握ってしまった気がする。
「今日はこのあと、委員会の用事があって遅れそうだけど……どうする?」
「待ってますよ。先輩との下校時間、楽しみですから」
ニコッと笑って先輩のほうを見る。こうやってストレートに言うと先輩は絶対照れる。夕焼け以上に先輩の頬は赤かった。
「えいっ」
掛け声とともに、先輩の頬に手を当てた。
「……ひんやりしてる」
「顔が赤いままでしたから、冷やそうかと思いましてっ」
「全く、誰のせいだと、んっ!?」
不意打ちで、もう一度奪っていた。柔らかいこの触れ合いは飽きることを知らないと思う。
「それじゃ、いつものコンビニで待ってますから!」
「もー! またやり逃げするー!」
先輩の声を背中に受けながら、私はそそくさとその場を後にしていた。
コンビニの雑誌コーナーで立ち読みをする。パラパラと捲っていくうちはまだ楽しい。つまらないのは読み終わった後だ。読み直しても退屈だし、どうしようかなあと思う。
「あれ、結美じゃん」
「あー、景子。教室ぶり?」
クラスメイトの景子とばったり会った。景子は私より背が高くてスラッとしている。長い黒髪がトレンドだ。
「なにしてん? っていうか大荷物だね、今日」
床に置いたままになっていたスポーツバッグを指さしながら景子は言った。
「あーこれはちょっとね。私は人待ち中だよー。そっちは?」
「今日は一緒に帰る人が捕まらなかったから、一人で帰ることになってねー。電車中に暇だから漫画でも買ってこうかなって」
「へー。なに買うつもりなの?」
「えーと……あった。これこれ」
景子が手に持っているのは、流行りの能力バトル漫画だった。
「リアルサイキッカー?」
「そうそう。面白くない?」
「主人公がカッコイイとは思ったなあ。能力に目覚めるところとかね」
「一巻の一番の見どころだよね。まあ、それは置いといて。そっちは誰か待ってるらしいけど、どれぐらい待つの?」
「んー……」
携帯でメールが来てないかチェックしてみるが来ていないようだった。
「もう三十分ぐらいは掛かりそうかな」
「三十分かー。彼氏とか?」
「アハハ、違うよー。彼氏なんて出来るわけないじゃん」
「結美ぐらい可愛いのに出来なかったら私なんていつになるか……どういうケアしてるのか教えてよー」
「普通に寝起きとお風呂あがりに洗顔してるだけだよー」
「私と同じじゃーん。なんでこうハリとツヤが違うんかね。ぷにぷにしてるのが羨ましいよ」
「景子は色白で綺麗じゃん。私はそこまで白くないからなあ」
「結美のは健康的な肌っていうの? そんな感じだからそのままでいいと思うよー。それでスッピンなんだから恐ろしいけどね!」
景子に「オリャー」とほっぺをぷにぷにされる。
「白いほうが年取った時にシミとかシワとかできないらしいからそっちのほうが羨ましいよー」
「若いうちからそんなこと言ってどうすんの! 若いうちは若いからこそできないことをするべきだって!」
「うーん……まあ色々と若いからこそ出来るってことはしてると思うけど……」
「そうなの? おばちゃんに話してくれてもいいのよ」
目をキラリと輝かせた景子に詰め寄られる。
「だめだめ、秘密だよ。それにいつまでそのおばちゃんキャラ続けるつもりなの」
「飽きるまでかな。ま、そろそろ帰ろっかな。また月曜日に学校でね」
「それじゃ、またね」
バイバイと手を振る。景子はリアルサイキッカーを買ってからコンビニを出て行ったようだった。
話し相手もいなくなってしまった。雑誌も読み終わってしまったし、どうしよう。悩んだところであまりいい考えは浮かばなかったので適当にジュースを買って、外に出ることにした。
携帯にイヤホンを繋いで音楽を再生する。外は少し寒かった。コンビニの横には小さい公園みたいなスペースがある。そこのベンチで座っていることにしよう。きっと先輩もコンビニにいなかったら気づくはず。
ジュースが入った袋を下げながら、公園のほうに行こうとしたところ、後ろから声が聞こえた。
「おまたせ」
そこに居たのは先輩だった。
「あれ? 今日は早かったですね」
「委員会の仕事はちゃちゃっと終わらせてきたの。……泊まりって珍しいし」
「……ふふふ。珍しいですもんね」
ニヤニヤと先輩のほうを見つめる。
「それは言われるって分かってた」
「あらら、照れさせるの失敗しちゃいました」
「もう。夜ご飯はどうする?」
「レッツクッキング! しましょう!」
「即答だね……。じゃあスーパーに寄りながら行こっか」
「先輩の手料理楽しみですよ!」
さすがに言われ慣れてきたのか、適当にあしらわれてしまった。
先輩が利用するスーパーは私の家が利用するスーパーとは店舗が違っていて、品揃えや値段が微妙に変わっていて面白い。
「ホウレンソウの類はウチの勝利ですね」
「根菜類についてはさすがに負けてるでしょう?」
「こっちのが安いですねえ……。じゃがいも安いのはいいですね……」
「それはそうと、なに作ろっか?」
「オムライスが食べたいですね~」
「卵は……まだ家にあったから大丈夫かな。それじゃいるのは――」
先輩は食材をどんどん羅列していっている。制服を着ていなかったら完全に主婦のソレなんじゃないかなあ。さすがに本人には言えないけど。パパッと安いもの、なるべく質の良い物を選んでいくのは、流石だなあ。見分け方なんて私は知らない。
「これぐらいかな……他になにか買うものある?」
「適当にスープとサラダ用の野菜を選んでおきましたよ。これでどうですかね?」
「やることが早いね、結美」
「えへへ。もっと褒めてくれてもいいんですよ」
会計を済ませて、先輩の家へと向かった。
先輩の家は割と大きめの一軒家だ。先輩の両親達は夫婦旅行でいない。先輩の後に続きながらそろそろと中に入っていく。自分以外の家となると少し縮こまる。
「親もいないし、くつろいでね」
「あ、ありがとうございます」
先輩に気を使わせてしまったけど、言葉通りそうするように務める。
「時間も時間だし、早速調理にはいろっか?」
「オッケーです。着替えたら始めましょう」
先輩が自室で着替えてる間に、ささっと自分も着替えを済ませた。着替え終えてから、少しリビングやキッチンの周りを観察してみる。
清潔感あふれる部屋だった。きちんと掃除が行き届いているのが分かる。じろじろと観察し過ぎないように眺めていると、先輩が戻ってきた。部屋着のパーカー姿の先輩……素晴らしいと思う。
「それじゃ、チキンライスから作ろうかな」
「私はポタージュスープとサラダ担当ですね」
「うん、任せました。おいしいのを期待してるからね」
そう言って、にっこりと微笑まられた。
「先輩にそう言われては応えないわけにはいかないですからね。頑張りますよ」
先輩の舌を満足させられるように作っていく。ジャガイモの皮を向き、薄くスライス。それを油を引いたフライパンで炒めていく。炒めている間に、玉ねぎ一玉を繊維を断ち切るように細切りにする。その半分ぐらいは水に漬けておく。玉ねぎを加えたらバターを加える。きつね色になってきたら、塩コショウとコンソメを加えて水を加えて煮る。沸騰したらあとはミキサーに掛けて、鍋に戻して牛乳で伸ばすだけだ。
先輩のほうを見ると、鶏肉を炒めているところだった。邪魔にならないようにサラダを仕込むことにしよう。レタスとサニーレタスを洗ってから手でちぎって器にもりつけていく。水に晒しておいた玉ねぎも乗せて、その上に缶詰のコーンを乗せ、スライスしたトマトを盛りつけて完成だ。ドレッシングは市販品のもので妥協しよう。
先輩はチキンライスを作り終えたようだった。ミキサーに入ったままだったものを鍋に移し、牛乳で伸ばしていく。それと缶詰に残っていたコーンも加えて温める。とろみ具合や味を確認したら出来上がりっと。
「先輩、こっちはできましたよ~」
「いい匂いがしてくるね。こっちはオムレツ作るだけだから」
「あの切ったらふわーって広がるヤツがいいです!」
「たんぽぽオムライス、だっけ? じゃあ結美のはそれにして、私のは普通に包もうかな」
「それは面白そうですね。二つのバリエーションがあって楽しそうです」
「オムレツだから失敗がちょっと怖いけどね」
そんなことを言いながらも先輩はきっちりふわとろのオムライスを仕上げていた。私の作ったものも失敗はしなかったとはいえ、先輩の料理には劣りそうである。
「それじゃ、頂きましょうか」
「頂きますっ! 先輩、ケチャップで文字書いてもいいですか!」
「なんかやりそうとは思ってたけどね」
先輩の作ったオムライスになるべく丁寧に文字を書いていく。書くのは先輩の名前だ。
『沙那』のあとに、小さくハートマークを書いた。なんだかノリでやってしまったこととはいえ、恥ずかしくなってきてしまった。
「結美のことだから、大好きとか書くのかなあと思ったけど、ちょっと意外だね」
「先輩の名前を呼ぶことって恥ずかしくてあんまりないので……。せめて書いてみようかなって思ったけど、書いてて恥ずかしくなってきました……」
ゆっくりと顔を上げると、先輩の顔も少し赤くなっていたようだった。
「……お返しね」
先輩はそう言って、私のオムライスに私の名前とハートマークを書いてくれた。
「……なんかベタだけどやってくれると嬉しいですね……」
笑いながら、パクパクとオムライスを口に運んだ。
「……スープおいしいよ」
「オムライスもおいしいですよ」
「ありがと。味濃かったりしないかちょっと心配だけど……」
「ちょうどいいですよ。本当に、おいしいです。ふわとろですし、チキンライスもいい感じですよ」
「それならよかった」
先輩は嬉しそうに笑っていた。
夕食も食べ終わって、居間でまったりとテレビを眺めていた。テレビから流れてくる話を元に、先輩と会話を交わしていく。こういう何気ないひとときが大切なんだよねって思う。
「そろそろお風呂の時間かなあ」
「おお! 一緒に入ってもいい感じですか!」
「……結美はいいの?」
「もちのろんですよ。女性同士だから、ではなく恋人同士ですから!」
「……じゃあ、はいろっか」
「はい!」
持ってきた荷物から服の替えとシャンプーとトリートメントを持っていく。髪だけは自前のを使わないと何が起こるか分からないからね。
先輩は自室に着替えを取りに行っているようだった。ワクワクしながら待つ。先輩とのお風呂は初めてだし、先輩の……を見るのも初めてだ。なんだか緊張する。
「おまたせ、お風呂場はこっちにあるんだ」
先輩はそう言いながら、案内してくれて、脱衣所に着いた。先輩は自分から脱ぎだそうとはしていなくて、私も先輩の前で大胆に脱ぐのはちょっとなあと思ってしまって、なんとも言えない沈黙が流れてしまった。
「……やっぱり別々にする?」
「い、いえ! 入りましょう! そして先輩、失礼します!」
先輩の体を抱き寄せて、唇を奪う。先輩の困惑とした表情が広がっているのが分かったけど、口は離さない。舌を先輩の唇に当てると、先輩も舌を伸ばしてくれる。
……あ、歯磨きまだしてなかった。
それは先輩も気づいてるとは思うけど、そのまま舌を絡め続けた。どのぐらい時間が経ったか分からない。先輩と一緒に荒れた息を一緒に吐いた。
「……歯、磨いてなかったね」
先輩の顔は赤い。きっと私もだろう。
「ごめんなさい……」
「先に、歯磨きしちゃおっか」
黙って頷いて、洗面台で歯磨きをした。
「歯磨きも終わったし、お風呂だね」
「せ、先輩。先輩から先に入っていたた、頂けないでしょうか! あとから入っていきますので!」
思いっきり噛んでしまった。が、勢いで乗り切れた……と思う。
「じゃあ、先に浴槽に浸かってるね」
先輩が着替えている間は、脱衣所の外に出ておく。自分の胸や足を軽く見る。女性でも相手となる女性の体はやっぱり気になることだろうし、私はそんな胸大きくないし……先輩は胸大きそうだし、肌も綺麗だろうし、見せても良いものかなあと思えてくる。
ぶら下がっている胸を今から揉んでも大きくならないだろうけど、揉んでみる。柔らかいけど、手のひらサイズである。もうちょっとどうにかならないかなあと思う。
「結美ー? 入っても大丈夫だよー」
浴槽のほうから先輩の声が聞こえてきた。私も覚悟を決めて、浴槽のほうに入っていくことにしよう。するすると服を脱いで、ハンドタオルで体を隠しながら入っていく。体を洗うために使うものだし、隠すためだけじゃないし、うん。
「し、失礼しまーす」
浴槽へのドアをガチャリとあけて恐る恐る入っていく。先輩は髪を軽くまとめて入っていた。
「シャンプーは……って全部持ってきてるんだ」
「いえ! ボディソープだけは持ってこれなかったので、借りてもいいでしょうか!」
無駄に声が大きくなってしまう。
「そこの白い容器に入ってるのがそうだよ」
「ありがとうございます!」
「背中、流すよ」
「えっ」
先輩は浴槽をあがっていて、私の後ろに回りこんでいた。
「いえいえ! 悪いですし先輩寒くなっちゃうんで、大丈夫ですよ」
「遠慮しなくてもいいの。それに私がしたいし、されたいだけだから。終わったら私の背中も洗ってね」
先輩にゴシゴシと背中をタオルで洗われ始めてしまった。自分のタオルで、前のほうをささっと洗ってしまう。
「先輩、体は洗い終わったので変わりますよ」
「その前に……えいっ」
「ちょ!?」
先輩は私の胸を後ろから掴んでいた。ふにふにと柔らかく触られている。
「胸は私の勝ちかな……」
「小さく呟いてもこれだけ近ければ聞こえますからね、先輩……」
「ふふっ、ごめんね」
「ほら、先輩の番ですよ。みっちり背中は洗いますから!」
「お願いするね」
先輩が前に座ると、肩から腰に掛けてまでじっくり眺める。しばらく洗った時に囁く一言は決まった。
「先輩」
「なにー?」
「ウェストは私のほうが細いですね」
これは決まった! と言わんばかりのしたり顔で宣言する。
「うん、結美は細すぎるぐらいだからね。さすがにそれに勝ってたら私倒れちゃうよ」
あっけなく躱されていた。というか私のほうにダメージが来るというブーメランだった。
「……そんな……この攻撃が通用しないなんて……」
「結美はねー。肌がつやつやなのが綺麗で羨ましいよ。ずっと触ってたくなるもち肌みたい」
「先輩は胸も大きいですし、スタイルもぴしっとしてますし、顔だって整ってますし、勉強もできるじゃないですか……」
「そう言ってくれるのは嬉しいよ」
先輩に振り向き様にキスされる。
「勉強は、頑張らないとね」
私の成績は先輩が上位だとすれば平凡である。
「うう……今は勉強のことはいいじゃないですかあ……」
「結美が言い出したことでしょっ。体も洗い終わったし、髪洗っちゃおう?」
「そうですね……先輩のうちは家族みんな同じトリートメント使ってるんですか?」
トリートメントの容器は一つしかなかった。
「うん、そうだよ。結美のところは個人個人で違うんだ」
「そうですねー。髪は自分で選んだもの使わないと、色々とひどいことになったりしまして……」
「それはそれで見てみたいかも……」
「やめてくださいっ。起きたらワカメみたいにうにょうにょしてる姿なんて見られたくないですっ!」
「結美はストレートでサラサラだもんね~」
「先輩だってサラサラじゃないですか、それに適度にふわっとしてて羨ましいですよ。私は海藻みたいになるか、ピシーっとするしか選択肢ないですからね」
「そう?」
「そうですっ」
お風呂場の中でもいつもみたいな会話ができるぐらいには慣れてきた。髪も洗い終わって、先輩と一緒に浴槽に入る。先輩のお風呂の浴槽はだいぶ大きく、私が入ってもずいぶんと余裕があった。
「やっぱり浴槽は落ち着くね」
「そうですねえ……命が蘇る感じですよね……」
先輩とは向い合って、まったりとしている。先輩の胸は水面でゆらゆらと揺らいでいた。これが胸が浮くというヤツなのだろうか。風船のようにぷかぷか浮かぶわけではないけど、確かにこれは浮くと表現するに値する気がする。
というか、先輩の胸の形綺麗だなあ……。
「結美」
「えっ、なんですか先輩」
「結美はさ、私と最初に会った時のこと覚えてる?」
「それは当然ですよ! 私にとっては劇的な出来事でしたからね!」
「そんなに?」
「些細なことかもしれませんけど、沙那先輩を初めて知った時ですからね!」
「困っている一年生を助けただけだったのが、こうなるとは思わなかったなあって思って」
「助けて頂いたのは、とても嬉しかったですし、なにより先輩に興味が出まして……」
「告白された時は驚いたけど、結美といるの楽しかったからね」
「先輩後輩だけの関係じゃこの気持ちに嘘を吐くことでしたから」
「……好きだよ、結美」
自然にキスをする。離れて、見つめ合って、もう一度。
「私もです、沙那、さん……」
浴槽に張られているお湯が揺れている。お湯が跳ねて、私達の体に掛かる。素肌と素肌が口だけじゃなく触れ合ってると、なんだかいつもと違う気がする。
「結美の体、あったかいね」
「それは沙那さんもですよ……んっ」
舌と舌とが触れ合う音が背徳的だった。先輩の姿も、この気持ちよさも。先輩の胸を柔らかく揉んでいた。それに答えるように先輩も私の胸を触る。
このまま行くと、止まられそうにない。
「結美……」
とろんとした瞳で先輩に見つめられると、止まらなくてもいいのかなって思えてくる。
「先輩、私は……」
「……私は結美だったらなにされてもいいと思ってるよ」
「先輩は、どうなんですか?」
会話をしながらでも、キスは止まらない。
「私は、結美がいいなら……してみたいとは思うよ」
「したくないわけじゃ、ないですけど……」
「……どっち?」
「その質問しながら、触ってくるのはズルいですよ……」
「……ごめんね」
先輩はそう言うと、すっと手をおろして、私を見つめる。
「いえ……でも高校を卒業するまでは駄目です。辞めときましょう」
「うん。結美がそうするなら」
「子供ができるわけじゃないけど、その一線はまだ越えないで置いたほうがいいと思うんです……」
「そうだね。ごめんね、結美に任せてばっかりで」
「いいんですよ。私は沙那さんにも頼ってますし、頼りになってますからね」
「そう?」
「そうですよ、ギブアンドテイクです! 対等です! いえ、先輩なので敬いますけど!」
一人でツッコミしつつ、笑ってみせる。暗いムードにはしたくなかった。
「結美ってそんなに私のこと敬ってたっけ?」
「う、敬ってますよ?」
「そこで疑問形になるってことは、自覚があるってことじゃないかなあ?」
「もー! そんなこと言わなくたっていいじゃないですかっ!」
「あはは、やっぱり結美といると楽しいよ」
「わ、私のほうが楽しいって思ってますし!」
謎の張り合いをしてしまう。自然と笑みが溢れる。そして黙ってキスをした。
「あがろっか」
「そうですね」
お風呂から上がったあとは、先輩と同じベッドでまったりとしていた。今はこのぐらいでいいのだ。今の幸せは今でしか無いし、未来には未来の幸せがある。
「先輩、今日も愛してますよ」
「……結美は急にそう言うの好きだよね」
「だって、先輩が少し動揺して可愛いですから」
「私も結美を愛してるよ」
日付が変わる瞬間、キスをする。キスで終わって、キスで始まる。それだけでいい。
私の一日は昨日も幸せだった。きっと、ゆるやかに続いていく。
ご拝読ありがとうございました。




