伝説の女
翻訳の腕輪が何故できたのか。
3代前の『王の盾』の話です。
「わたしが少年(?)になった日」読了で。
一軒の家の中で妙齢の女が二人、酒を酌み交わしていた。
一人は『魔女』と呼ばれる赤髪の女。
もう一人は『王の盾』と呼ばれる黒髪の女だ。
「ちょっと聞いてるの!?アデリア!」
「聞いている。絡み酒は良くないぞ。」
「そういうことじゃないのよ。翻訳機よ。ほ・ん・や・く・き!」
黒髪の女の態度は誰が見ても絡み酒にしか見えない。
「言葉を訳す道具を作れってことだろ。で、幾ら出す?」
「ちょっとあんた、がめついのよ!私がお金持ってないことくらい知ってるでしょ!?」
「そんなの、王に頼めば幾らでも出してくれるだろ。」
魔女は空になったグラスにまたなみなみと酒を注いだ。
その様子をじとっとした目で見て彼女は答える。
「あいつ、何て言ったと思う?「お前はもう言葉を習得しているから、そんな物いらないだろ」って言ったのよ!?今後の『王の盾』のためにもいるんだっつーの。それくらい分かれよ!」
魔女はにやりと笑った。
「それが本音じゃないだろ?」
「・・・・・。」
見詰め合う二人。
根負けした彼女は本音を告白した。
「そうよ。あの田舎大臣のせいよ。あの男、こっちに嫌味を言ってくるんだけど、訛りが酷くて聞き取れないの。でもね、でもね、嫌味を言ってるってのだけは分かるのよ!」
彼女は「きーっ、悔しい!」とスルメイカを噛んだ。
「ふむ、古代魔術の方式を用いれば『王の盾』の力に影響を受けにくいかもしれないから、出来ないことは無いが。」
「出来るの!?」
「ただし『王の盾』の研究に付き合ってくれたら、な。」
「やるやる。研究手伝う!」
こうして、魔女アデリアと3代前の『王の盾』の協力の下、翻訳機能の付いた腕輪は完成した。
後日、『王の盾』の居室から
「ざまー見なさい!」
という雄たけびに近い叫び声が聞こえたそうだ。
3代前の『王の盾』はOLのイメージ。