鍵
「14・バイト、時々特訓 その3」読了推奨。
<訓練初日>
ドンドンドンッ
家の扉が叩かれる。
「ししょー。お客さんですよー!」
寝ぼけ眼で師匠を呼ぶわたし。さっき時計を見たら6時30分だった。
(こんなに早い時間から、一体誰?)
「ヤーマーダー!さっさと出て来い!」
(なんか聞き覚えのある声だな・・・。)
「お前の客だろ。早く出て行って黙らせて来い!」
と師匠が部屋のドアを少し開け、枕をわたしに投げつけて来た。
それは、寝ぼけたわたしの頭にクリティカルヒットする。
師匠も朝に弱いのでいらついているので、枕とはいえ破壊力は抜群だ。
枕の縫い目から羽毛がハラリと舞った。
「はいはーい、ただいま。」
と扉を開けたら、ディー団長が腕組みをして仁王立ちしていた。
「遅い!」
その後わたしは1時間、正座させられ説教を受けることとなる。
「精神が弛んでいるから寝坊することになるんだ。気を引き締めるんだ。その弛んだ精神を」
グーグー
「って寝るなー!」
<訓練3日目>
(何でこの人、わたしの部屋にいるんだろう?)
これが朝一番でたたき起こされたわたしが思ったことだ。
なので素直に口に出して言ってみた。
「なんで、わたしの部屋にディー団長がいるんですか?」
よく見るとディー団長の手には鍵が握られている。
(誰だ、鍵を渡した人は。)
「アデリア様が私に預けてくれたんだ。毎朝、怒鳴り声をあげられては近所迷惑だ、私の睡眠の邪魔をするな、と仰ってね。」
(やっぱり、貴女でしたか、師匠。)
外では小鳥がチチッと鳴き、わずかに明けた陽の光がカーテンの隙間から差し込んでくる。
「そして師匠は安らかな眠りを続けるのでした。」
「ん?何か言ったか?」
「いいえ、なんでもありません。さあ、部屋から出て行ってください。着替えます。」
そしてわたしは嫌々訓練に連れ出されるのでした。