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10年目の誓い

作者: 月見草

「いってきます」

アパートのドアを開けると、日差しが町を明るく照らしていた。まだ5月というのに、少し暑い。今頃から暑さが増すのはさすがにきつい。昼から夕方には窓を開けて丁度いいくらいだ。ここは暑くなりやすい。築25年を越える我が家は気温に左右されやすいのだ。


高校を卒業し、ここに暮らし始めて早10年を過ぎた。困難な道を乗り越え、生活もだいぶ安定した。それで前に一度、もっといい部屋に住もうかと提案したことがある。汐もだいぶ大きくなった。俺の両腕に抱かれていた娘は、今や小学4年生になった。もうそろそろ、父親から離れたがる歳だろう。少しづつ大人びていく娘を寂しく思いつつ、俺は娘に自分の部屋を持たせてやろうかと考えていた。マイホーム、とは言わない。借家でもいいからと考えていた。


だが、渚は断った。「ここは私たちの原点です。ここから、私たちは歩んでいきました。だからまだ、このままでいたいんです。それに、しおちゃんはまだ朋也くんに甘えていたいでしょうから」それが渚の回答だった。俺も、急ぐ必要はないとそのまま保留にした。俺自身は部屋の広さに不自由していない。むしろ家族との距離が近いから嬉しいくらいだ。ただ、あまりに近いと娘の教育上悪いのではないか?それが気がかりだった。


渚も汐も、ここでの暮らしに不満は無い。だけどこのままでいられるだろうか?今は少女の汐も、女性の階段を登っていく。成長して多感なころに父親との壁が薄いというのはどうかと思っていた。今の家では親と大した距離をとれない。俺も中学からずっと、家に帰るとすぐ自分の部屋にこもっていた。汐にもそんな場所が必要な気がしていた。幸い、貯蓄ならある。渚はまたバイトやパートをしているし、俺もそんなに金を使わないから貯金はまあまああった。


広い家に住む俺たちを想像し、明るい希望と一抹の寂しさを感じつつ、職場へと向かう。外から見たアパートの外観は、過ぎ去った年月以上に古ぼけて見えた。いつか、ここにきて「懐かしい」と昔を振り返る時がくるのだろうか?働き始めたころの自分、渚との同棲、汐の誕生、七五三、入学…ここにはそれが詰まっている。写真では残せない思い出が、家主と共にある。すっと決断を下せる要素に欠けた今の状況にやきもきしながら、馴れたいつもの道を通って行った。


「おはようございます」

「おはよう」

事務所のドアを開けると、いつも通りの挨拶が返ってきた。芳野さんは相変わらず朝が早い。すでに作業着に着替えた芳野さんを待たせないよう、俺もすぐにロッカーへ向かった。

「あ、おはようございます!」

「ああ、おはよう」

ロッカーに入ると、新入りの子と出会った。まだあまり話してはいない。俺や芳野さんとは違う区域を担当しているせいか、顔をあまり合わせない。人づてにはいいやつだと聞いた。俺はよく知らないが、こうしてみるとなかなか面構えがいい。

ロッカーを開け、作業着に着替えだす。若い後輩を見ていると、ふと自分が新入りだったころを思い出した。あのころの俺は、今の自分を見たらなんて言うだろう?俺は相変わらず配電工だが、もう芳野さんと肩を並べて仕事する間柄になった。芳野さんには相変わらず敬語だが、たまに飲みに行って愚痴を語り合うこともある。いい仕事の相棒として、立派にやれている。少しそれが誇らしく思えた。


「親方、お疲れさまでした!」

「はい、お疲れ様」

仕事を終え、帰路に就く。少し暗くなり始めた夕暮れの道を、一人歩いていた。今はまだ日が少し山の向こうに見えるが、30分しないうちに立ち退いてしまうだろう。今日は少し早く仕事が終わった。たまには早く顔を見せてやろう。玄関の近くにある換気扇からは、おいしそうなにおいが漂っている。じきご飯が出来る頃合いだろう。

「ただいま」

「え?朋也くん?どうしたの?」

「仕事が早く終わったんだ。ご飯、出来てる?」

「もうすぐですけど…しおちゃんがまだ帰ってきてないんです」

「遊びに行っているのか?場所は?」

「いつものところです」

「わかった。迎えに行ってくる」

「はい、わかりました」

いつものところ。それだけ聞けば十分だった。特に焦ることもなく目的地に向かう。あそこならば安心だ。誰より頼れるパワフルな人がいる。




「よっしゃー!最終回の裏ツーアウト!きっちり締めるぞー!」

住宅街の一角に、元気のいい声がこだまする。ここはずっと昔のままだ。公園があって、子供がいて、子供と全力で遊ぶ大人がいる。遊ぶことと言えば大半が野球だ。ここで野球して、野球部に入ったやつも数多くいる。そしてまた、ここでその息子や娘が野球をしている人もいるくらいだ。

そして野球を仕切る人も変わっていない。この公園の目の前にいる、古河パンの店主、通称あっきーだ。もうすぐ50歳に手が届こうとしているが、年老いた感じは一切しない。変わったと言えば…禁煙をしたことぐらいだろうか。おっさんは禁煙する気などさらさら無かったが、軽い肺炎を起こした時に、渚と汐に「長生きしてください!」って言われたらあっさり止めちまった。父親にしてみれば、愛娘と孫に言われたら相当な説得力だったのだろう。それ以外は全く変わっちゃいない。


試合は5対4。後攻のチームが負けた状態でツーアウト。ランナーは2、3塁。2塁にはおっさんがいた。逆転の望みをつなごうとしているこの状況で、一人の子が打席に立つ。

「これで終わると思うなよ!俺の優秀な遺伝子を継いだ孫、打ち取れるもんならやってみやがれってんだ!」

おっさんの声で気付いた。汐だ!ボーイッシュな服装でヘルメット被っていたから気付かなかった。英語でロゴが打たれた、シンプルなデザインの白いTシャツを、淡いブルーの長そでのシャツの上から着ている。下はラフな緑色のカーゴ。男の子と混じっても違和感を感じない出で立ちに、親の俺でもすぐに気づいてやれなかった。思えばずいぶん健康に育ってくれた。小さい頃はたまに病気をして心配をかけたが、今では野球が好きな活発な子になってくれた。


肩幅ほどに足を開くと、打席の後ろぎりぎりでバットを構える。グリップの中間ほどを握り、右打席に立つ姿が凛々しく見えた。相手ピッチャーがゆっくりと振りかぶる。初球は少しボール気味、外角低めだった。初球からフルスイングした汐のバットがボールの上をかすり、一塁線に切れた。それだけで場がどよめく。相手も小学生、大した速さではないが汐には重荷だろう。スイングが少し遅い。二球目、大きく外れワンバウンドしてしまった。三球目、真ん中低めのストレートを振った。空振り、追い込まれた。1ボール2ストライク。四球目、今度は高めに外れた。相手も少し疲れているのだろうか、制球力が甘い。それを待っているのだろうか、当の汐はいやに落ち着いている。


迎えた五球目、それはやってきた。絶好の棒球、真ん中寄りの遅いストレート。迷いなく汐は振りぬいた。捉えた球は右中間を破った。3塁ランナーがホームインし、一気におっさんが走り抜ける!ホームまで一気に突っ込む気だ。センターがボールを捕球する。おっさんは3塁を蹴ったところだ。センターの子が一か八か、キャッチャーめがけて送球する。大して広くない公園だ、距離もそんなにない。投げた球はホームベースめがけて返ってくる。

「うおりゃあああ!」

頭からおっさんが突っ込んでいった。勢い任せのヘッドスライディング。キャッチャーの後ろからホームベースを触ろうとする。ほぼ同時にキャッチャーが足にタッチしようとする。

「セーフ!」

キャッチャーのグラブは空を切った。おっさんの速さに対応できなかったのだ。一切触れることなくホームを触ってみせた、文句のつけられない判定だった。

「いよっしゃあああ!」

「あっきーすげえ!」

「はっはっは!さすがわが孫!やってくれるぜぇ!」

今日のヒーローとなった汐に、チームメイトが集まる。汐は少し恥ずかしげな顔をしていた。


「そんじゃあ整列!互いに、礼!」

「ありがとうございました!」

「よし!そんじゃあお前ら、気をつけて帰れよ~」

「は~い」

「あっきーまた明日!」

一気に子供たちがバラバラに散っていく。野球道具を片づけるおっさんに付いていく汐をようやく見つけた。

「汐~!」

「あ、お父さん!」

「なんだボウズ、今頃来たのか?せっかく汐が大活躍したってのに…。ビデオに残したらプレミアもののことだったんだぞ?何せ…」

「サヨナラヒット、打ったんだろ?」

「見てたの?」

「ああ、ちゃーんとな。カッコよかったぞ!」

「うん!」

照れながら笑う汐の肩を、軽くたたいてやる。よくやったという俺なりのサインだ。

「何だ見てたのかよ…ちっ、俺だけの秘蔵の思い出にしてやろうと思ったのに」

「残念だったな、汐のことなら俺の方が詳しい。俺と汐との思い出だ」

「何言ってんだ、俺の方が上だ」

こういう会話も変わっちゃいない。むしろ前より元気になった気がする。おっさんにしてみれば、汐は幼いころの渚に見えるのかもしれない。昔の渚そっくりの顔つきで、渚より運動が得意な汐。それが楽しくてたまらないのだろう。

「じゃあ、汐。帰ろうか。ご飯出来てるって」

「うん」

「そうか。おい、渚に伝えといてくれ。たまには家に来い。飯ぐらい食わせてやるってよ」

「何だ、さびしいのか?」

「いや、そんなわけじゃないさ。たまにはいいかと思ってよ。パンも作っていることだしな」

「相変わらずか?」

「ああ。変わっちゃいないさ。買いに来る面子も、売上げも、早苗のパンが余ることも変わっちゃいない!」

「おっさん、後ろ…」

「え?あ!」

もはや恒例のことだろう。おっさんの後ろにはいつもの人が立っていた。

「私のパンは…私のパンは…相変わらず売れ残っているんですね~!!」

「んがぐっ!俺は、大好きだ~!」

涙目になり走り去る早苗さんを、おっさんがパンくわえて追いかける。早苗さんも年をとった感じがしない。見た目もそうだが、その独特な感性も変わってはいなかった。今日売れ残ったのは…“新感覚!和風醤油パン”だそうだ。売れ残るのが当然だろうなあ…と、心の中でつぶやいた。




すっかり日も落ちた道を、汐と手をつないで帰る。こうやって帰るのも久しぶりだ。ほぼ毎日バットを握っているが、握り返す小さな手は柔らかかった。道の街灯がだんだん灯り始めていく。白い無機質な光に照らされた娘は、少し大人びて見えた。帰る間、野球の試合の話をしていた。誰が打って点が入ったとか、おっさんがダイビングキャッチしてカッコよかったとか。汐はまだ興奮が冷めやらないようだった。

家に帰ると、渚が出迎えてくれた。少し遅くなったことを心配していたが、訳を話すと一緒になって喜んでくれた。さっそく夕食にすると、汐はいつも以上によく食べた。食べながら野球の結果を話す汐を、楽しそうに渚は聞いていた。

「ごちそうさまでした」

「ごちそうさまでした!」

「はい、お粗末さまでした。しおちゃん、早くお風呂行った方がいいです。汗かいたでしょう?」

「うん!」

「朋也くんも一緒に行ってきてはどうですか?」

「ああ、そうだな」

風呂場に行くと、汐にシャワーをかけてやる。まず汐が体を洗い、髪を洗い出すと俺が体を洗う。湯につかった汐は、のんびりと歌いだした。小さい頃から歌っていた、岡崎家の曲。

「だんご、だんご、だんご、だんご、だんご、大家族…」

娘の歌を聴きながら、俺も髪を洗う。洗うと俺も湯船につかった。二人分の体積で、多少湯がこぼれた。

「なあ、汐…?」

「なあに?」

「ここから出たいって、思うか?」

二人だけの時間、思い切って聞いてみた。いきなりこんなことを聞かれて、当の汐は目を丸くしたまましばらく押し黙っている。

「あ、いやその…何ていうか。今よりおっきな家に引っ越したいって思うか?そう聞いてるんだ。転校する訳じゃない、家が変わるだけだよ」

「なんで?」

「え?」

まっすぐな目で、汐が問い返した。喜ぶわけでもない、落胆するわけでもない。ただまっすぐに聞いてきた。

「あ、いやその…ほら、汐もだいぶ大きくなっただろ?それで、今の家じゃあ狭いかなあって。それで、貯金ならちゃんとあるし、買うんじゃなくて借りるんだったら、もっと広い家に住めるなあと思って…」

「いいよ」

「え?」

「今のままでいい」

「狭く、ないか?」

「大丈夫。ここがいい」

「そっか…」

それっきり、二人とも黙ってしまった。てっきり、少しは食いついてくると思っていたが、あっさりと否定されてしまった。2階はあるの?とか、庭とかあるの?私のお部屋とかあるの?というような質問が返ってくると思っていたから、なんだか拍子ぬけしてしまった。


風呂からあがると、食器を洗い終えた渚が入れ替わりで入っていった。体をふき、二人でTVを見ていた。畳に寝そべる俺と、座布団に座る汐。昔は寝そべる俺に寄り添っていたが、それも少なくなった。渚が風呂から上がるころには、汐はもう半分夢の中だった。もうくたくたなのだろう。何とか起こしてやると、重いまぶたで歯を磨き、早く寝てしまった。汐の座っていた座布団に、渚が座る。ひととおり髪を乾かし終えた渚に向かい合うように座った。

「汐に、聞いてみた」

「家のこと、ですか?」

「ああ。渚の言うとおりだった。あっさりと断られちまった」

「そうでしたか…」

「汐は、まだまだ俺に甘えたいのかな?」

「え?」

「いやさ、少しづつだけど、汐はこれからどんどん女になっていく。そしたら俺の手元を離れて行くんだ。まだ早いけど、少しづつ離れていく」

「はい」

「だから、今頃が丁度いいかなあ…って考えていたんだけど」

「それは、まだ早いですよ。じっくりでいいと思います。しおちゃんはしおちゃんですから」

「そうかな?昔に比べて、俺との距離がだんだん開いていると思うぞ?」

「それは、しおちゃんが成長しようとしているからですよ。だんだん一人を求めていく」

「ああ」

「でも、まだまだ未熟だから多少なりとも親に甘えたくなるんです。朋也くん。朋也くんが遅く帰ってきた日は、しおちゃんは早く寝ないんですよ?」

「え、そうなのか?」

「はい。野球で疲れていても、朋也くんを待ってます。早く帰ってきてほしいとは言いませんけどね」

「そうだったのか…」

「だから、今のままでいいと思います。広い家だと朋也くんと多く触れ合えることができなくなるでしょう?」

「そうだな…。ごめん、気が早すぎたかもしれない。女の子は成長が早い、なんて言うもんだから、俺も色々考えちゃってさ」

「いえ、私もそうでしたから」

「そう、なのか?」

「見えないところで女の子は大人になっていくんです。わがままを言わなくなる、甘えたいのに甘えない。しおちゃんは私より少し早いですけどね」

「そうか…」

言われてみれば、俺もそんなだったかもしれない。思えばなんで、あんなに親父とケンカしたか覚えちゃいない。汐は汐なりに、成長しているのだ。なら、親が横からああだこうだしてやる必要は無いかも知れない。

「わかった。渚、ありがとう」

「いえ…。私たちも、もう寝ましょうか?」

「そうだな。じゃあ、この貯金は未来のためとしておくか」

「そうですね…朋也くんは、何か欲しいものはありませんか?」

「うーん…思いつかないな。渚は?」

「私も別に、欲しいものとかは…」

「行きたい所とか、ないか?」

「今は無いですね。突然そう言われても、思いつけませんし。今日はもう寝ちゃいましょう。考え出すと眠れないです」

「うん、そうだな」

立ち上がり、布団を敷くとすぐに横になった。だが俺はすぐ眠れなかった。振り返ってみれば、俺は自分のためにロクに金を使っていない。かといえ、今すぐ欲しいものと言われてピンとくるものは無かった。服は一通り、冠婚葬礼すべて対応できる。車も買う気はしなかった。こうしてみるとずいぶん平凡というか、地味な奴だなと自分がおかしく思えた。横に目をやると、渚はもう眠っていた。昔と変わらぬ、安らかな寝顔。初めて見た時は、何かこうこそばゆいというか、だけど幸せな気分だった。どんどん昔のことが思い返されていく。そういえばあの時は月の光がまぶしかった。渚は真っ赤になって、俺にお願い事を言った。赤ちゃんが欲しいと。

(…そうだ、一つある!昔やりたかった願い事!ないがしろにしてしまったことが!)







5日後の休日。俺は3人で出掛けた。二人には行き先を告げず、ただついてきて欲しいと言った。

「ねえ、お父さん。どこいくの?」

「ちょっと提案があるんだ」

「提案?なんですか?」

「ああ、ここだ」

「ここって…?」

ついた先は、広い庭園。遠くでは、幸せに満ちた新郎新婦がライスシャワーを浴びていた。数少ない、この町の式場。いつか来たいと思っていて、下見はしたけど金が無くて、結局あきらめたはずの場所。

「あのさ、渚。いろいろ考えたんだけど…今ある貯金で、やりたいことができたんだ」

「…はい」

もう考えはわかったのだろう。涙があふれそうになる渚に、考えてきた言葉を贈る。告白した時のような、むずがゆい緊張感を噛みしめつつ、真っ直ぐに見つめる。

「10年もかかって、今さらかもしれないけど。俺、渚と結婚式がしたい!結婚式やって、みんなに祝福されたい。ウェディングドレス着た、渚が見たい!だから俺と…式を、やらないか?」

「……ありがとう。朋也くん…」

両目をてのひらで覆いつつ、うなづいた。指の間からにじんでくる涙が、落ちて地面にシミを作っていく。

「…汐も、それでいいか?」

「うん!私もお母さんのドレス見たい!」

「ありがとう、しおちゃん…」

汐を抱きしめると、静かに渚は泣いていた。俺はただ、そんな渚についてやっていた。




1か月後、ようやく式は行われた。行うといっても、身内のみのこじんまりした式だが、不満は無かった。おっさんに早苗さん、親父に婆さん。芳野さんに公子さん、風子ちゃん。杏に椋、宮沢に智代。遠いから無理かと思ったが、ことみに春原も来てくれた。

みんなが見守る中、式は着々と進んでいく。ついに、最後の誓いが交わされる。ステンドグラス越しに降り注ぐ日の光の下に、俺と渚が呼ばれた。神父が淡々と聖書を読み上げていく。

「新郎岡崎朋也。あなたはここに居る岡崎渚を、病めるときも、健やかなる時も、富めるときも貧しき時も、妻として愛し、敬い慈しむ事を誓いますか?」

「誓います」

「新婦岡崎渚。あなたはここに居る岡崎朋也を、病めるときも、健やかなる時も、富めるときも貧しき時も、夫として愛し、敬い慈しむ事を誓いますか?」

「誓います」

「では、誓いのキスを」

向き合った渚のべ-ルを、ゆっくりと上げる。向かい合った渚は、とても綺麗だった。美しくて、また恋い焦がれた。


二人の顔が近づいていく。俺はまた新たに誓った。一つは俺と一緒にいてくれた事への感謝を忘れないという誓い。二つ目はこれからも二人で歩んでいくことへの誓い。最後は、渚を最後まで守り通すという誓いを込めて。


誓いは確かに、二人の間に交わされた。



読了ありがとうございます。月見草です。

初のCLANNAD二次創作です。数か月前に見て感動し、書いてみたいと思っていました。ようやく形に出来ましたね。


私としては一応、これに納得しているつもりです。初めは結婚式やるために朋也が頑張って貯金して…という展開を考えていました。

でも、朋也は家族のために金を使うタイプで、自分のことや遊びには金を使いそうにないなーと考えていったらこれが自然と思いました。

これから思春期を迎える少女の心境を、男の大学生が考えてみたんですけど、いかがでしたか?初の試みなので自信がありません。

妹とかもいないので、まっさらな状態から考えたので少し無理があったかもしれません。突っ込みたい点があったらどんどん書いてください。


では、読了ありがとうございました!


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― 新着の感想 ―
[良い点] クラナドの世界観がよく出ている。 キャラがほぼ思い通りである [一言] 久しぶりにクラナドアフターストーリーを見直して、SSを探してたらたどり着きました。 何年たってもクラナドは最高です。…
[良い点] クラナドを題材にした事 トモヤをよく理解出来てるなぁと素直に思えたところ 他のキャラのイメージも崩壊しておらず安定してる雰囲気を感じられた [気になる点] セリフが多い 風景描写が足りない…
2014/01/24 13:02 ヒッポロ系にゃぽ~ん
[良い点] 我が子を見守る父親の温もり、幸せな家族を見ました。CLANNADの二次創作、とても面白かったです。感動的な結婚式でした。 [一言] やはり月見草さんの小説は面白いです。次も楽しみにしていま…
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