第25話 鳥ダンジョンを攻略しよう
鳥ダンジョンの中は大草原だった。
やたら広いのだ。
そして鳥ダンジョンは魔物がそろそろ溢れそうな状況だという。
初めて来たから、アタシじゃあ見ても分からないのだけど。空を埋め尽くす鳥の大群みたいな分かりやすい状況じゃあないから余計にね。
「というわけで、おびき寄せて一網打尽にするわよ」
「どうやっておびき寄せるのだ?」
「餌を用意すればいいんじゃないかしら?
ちょうど解体前の素材がたくさんあるし、雑に砕くのが得意な人がいるし。
てことで、ほら、これ砕いてちょうだい」
オークとミノタウロスを1体ずつ、収納魔法から取り出した。
それをマックスに殴らせる。
それぞれ1発でバラバラに砕け散り、いい感じに撒き散らされた。
少し待つと、たちまち空を埋め尽くすほどの鳥の大群が集まってきた。
「「ギャアアアー!」」
いろんな鳥の声が混じって、とんでもなく騒がしい。
人間が大勢で声を上げると「ワアアアー!」て感じになるけど、鳥の場合は音程の違いなのか「ギャアアアー!」て感じになるわね。
「……! ……!」
ルナに指示を出すけど、自分の耳にすら全く聞こえない。
それでも従魔契約の効果でお互いの感情や位置が分かるから、ルナはアタシが言いたいことが分かったみたい。
「ギャオオオーン!」
薙ぎ払うように放ったブレスで、鳥の大群が切り裂かれた。
いいぞ、もっとやれ。
こら! マックスは動くな! じっとしてなさい!
◇
「やれやれ……やっと片付いたわね」
「空中戦の練習どころじゃないな。すごい数だった」
「これをあと19回繰り返すんですね。
あの……その……空中戦の練習はまた今度にしますか?」
「ボスまで大群ってことは無いでしょうから、そこで練習しましょ」
「それはいいが、エノキは対空攻撃がないのか?
今もじっとしていただけだったが」
「アタシは対空攻撃がないんじゃなくて、範囲攻撃がないのよ。
神官だから回復と防御なら広範囲のやつがあるけどね」
対空なら、飛んで戦うか、小石を投げてもいい。
ひとつかみの砂利をまとめて投げれば範囲攻撃ができるけど、適度な大きさの砂利ってあんまり「どこにでもある」ってわけには行かないのよね。いい感じの砂利がある川岸とかに行く機会があったら大量に確保しておこうと思ってるけど、まだその機会がないわ。
「風魔法には範囲攻撃がありますよ?
あの……その……使わないんですか?」
「まだ飛行魔法しか練習してないんだもの。まともに使えないわよ」
「なら、やっぱり私が拍手で――」
「はぁ?」
「ちょっ! 待っ! 叩くな! あれなら連発もできるし便利だと思っただけだ」
「被害が大きいのよ、被害が。
てゆーか、ルナが範囲攻撃を使えるんだったら使いなさいな」
風魔法はルナからコピーしたものだから、ルナにも使える道理。
「あの……その……魔力が……」
「返すわよ。
あと次の階層まで連れって」
魔力を返して、ルナのサイズを大きくする。
ルナに乗って次の階層までひとっ飛びね。
◇
マックスが言っていた通り、草原のほかに森やら砂漠やら色々な地形があった。
共通するのは、空があって太陽が見えているということ。
露天型とはよく言ったものね。
「……それにしても、こんなものまであるなんて」
目の前に広がるのは海。
大海原だ。
海岸沿いに海鳥の魔物が多数いる。
鳥系の魔物は、物理攻撃か風魔法で攻撃してくることが多いけど、海鳥の魔物は水魔法を使う。
「ちょっと珍しいけど、それだけだな。
魚系の魔物が出ないんだから、むしろ安全なほうだ」
「魚……!
豚ダンジョンに牛ダンジョンに鳥ダンジョンまであるんだから、魚ダンジョンもありそうよね?」
「あるぞ」
「やっぱり! もしかして、おいしい魚が取れたり?」
「そうだな。毒をもつ魔物もいるが、基本的には食べて美味しい魔物ばかりだ」
「次はそこへ行くわよ!」
魚魚魚ァ! ひゃっほーう! 魚大好きなのよぉ!
刺し身、焼き魚、煮魚、アラ汁や骨の唐揚げなんてのも良いわね。
はっ!? 鳥ダンジョンに蛾の魔物も出るってことは、魚ダンジョンにはカニとかも出るのかしら!?
「いや……あの……強敵だからな?
水中だと動きが鈍るし、引きずり込まれると呼吸もできないし、泳ぎながらじゃあ踏ん張れないし……」
アドンさんに相談してお米をちょっと分けてもらおうかしら。
海鮮丼とかお寿司とか……ぐふふふ……!
海苔とかワサビとか探さないといけないわね。醤油は牛丼の味付けにも使うはずだから、それもアドンさんに相談ね。
「おい……おーい……戻ってこい」
白身魚のフライとか、サバの味噌煮とかもいいわねぇ。
そしたら、タルタルソースの材料とか味噌とかも探さないと。
忙しくなってきたわぁ! うふふふ!
「ダメだこりゃ……ルナ、しばらく休憩にしよう。
お茶と、何か適当なお菓子でも出してくれ」
「ではこちらを。
あの……その……大丈夫でしょうか?」
「大丈夫じゃなくても放って置くしかない。
エノキはもうダメだ。
まさかあんなに魚が好きだとは……」




