第23話 物資を運ぼう
ミートピアよ、アタシは帰ってきた!
まずは冒険者ギルドへ報告ね。
「またやったな! いいぞ、もっとやれ!」
支部長が大喜び。
400年ぶりの快挙、ダンジョンをクリアした奴が、この街を拠点にしている。
しかも2つめをクリアした。
鼻も高くなるでしょうね。
「次は鳥ダンジョンに行くわ」
「豚ダンジョンのときと同じように、ここでも牛ダンジョンの素材を出すから、解体を頼む」
「任せておけ!
その後すぐ出発か?」
「そうねぇ……急ぐ理由もないけど、他に用事もないものね」
「それなら頼まれてほしい仕事がある」
「どんな仕事かしら?」
「物資の運搬だ。大量に運ぶ必要があるが、そのための馬車を手配するのが難航していてな。
車体のメンテナンスやら馬の世話やらで馬車ってのは手間もお金もかかるから、必要以上に持ってるところなんて無いんだ。
だから、こうやって急に必要になったときには毎回困るわけだが……収納魔法が使えるなら、簡単だろ? しかも大量に素材を入れてるし、そのまま次のダンジョンにも行こうとしているんだから、まだまだ容量に余裕がある。だろ?」
収納魔法をアテにされたら、マックスは出番がない。
たちまち興味を失った様子で、アタシがどうするのか傍観モードに入ったわね。
「まあ、そうね。できるかどうかで言えば、できるわね。
でも、何をどこへ運ぶのかしら?」
「鳥ダンジョンの街へ、鳥ダンジョンの魔物を討伐するための罠とかバリケードとかに使う資材だな。
知っての通り、鳥ダンジョンの魔物は鳥――ほとんどが空を飛ぶ敵だ。戦える奴は限られるんで、鳥ダンジョンは挑戦者の数が少ない。
すると何が起きるか?
魔物が間引かれなくて、ダンジョンから溢れちまうんだ」
適者生存というか弱肉強食というか、そのへんシビアよね、この業界って。
そうなると「触らぬ神に祟りなし」理論が展開されるわけで、得意な相手ばかりと戦う冒険者だって珍しくない。多くの冒険者が苦手とする鳥ダンジョンでは、弱肉強食の「強」が居なくなって「弱」が増えるのは当たり前。
しかも400年もの間、ダンジョンをクリアした記録がない。ダンジョン内の魔物は増え放題で、何度も溢れたでしょうね。それともダンジョン内で「共食い」が起きて意外とあんまり溢れないのかしら?
「そろそろ危ないってんで、周辺の街と合同で対策する事になったわけだ。もちろんお前たちがこれから殲滅してくれるなら大歓迎だが、それだけをアテにして何もしないってわけにもいかん。
そんなわけで、行くついでに運んでほしい」
特定の冒険者に頼ることなく、ギルドはギルドで頑張ってますよ、とアピールしないといけないのね。
もしかしたら領地軍と合同でやるのかも。その兼ね合いがあって、というのなら、領主のメンツとして動いてますよアピールしたいのはよく分かる。
となると、今回の仕事はあちこちに恩を売るいい機会ね。急に躍進すると「出る杭は打たれる」的なアレで、こっちに非がなくても妬まれたりしてトラブルになるのはよくある話。その点恩ある相手となれば、かなりまで抑えられるはず。
「了解したわ」
てことで、さっそく物資の受け取りに向かう。
解体場の一角に積み上げられた木箱の山――中身はロープ20m50本、木製バリケード(組み立て式)20基、杭200本、投網30枚、鉤付き重り60個、大型の盾10枚、防護マスクとゴーグル20セット、油壺50個――大型の馬車で5〜6台分てところかしら。よく使われる中型だと10台分ぐらいかしらね。
「全部入るか?」
「これぐらいなら、偽装しなくても本当にルナの収納魔法に入りそうね」
「任せてください。
あの……その……大丈夫です」
大丈夫なら任せましょ。
アタシのほうが大容量だけど、便利な運び屋とか隠し金庫みたいに使われる気はない。バレたら絶対に人間金庫として使いたがる連中が湧いて出るから、あくまで従魔のドラゴンが使う魔法という偽装をしている。
ルナに収納魔法を使ってもらって、そこに重なるようにアタシが収納魔法を使うという方法なのだけど、バレないように魔法を重ねるってけっこう繊細な作業で神経使うのよね。
だから野菜や調味料なんかの「ちょこちょこ使いたいもの」はルナに預けてある。アタシの収納魔法には、倒した魔物とか宝箱の中身とか非常用の備えとか、あんまり頻繁に出さなくていいものを入れてあるわ。
「じゃあ頼んだぞ」
「ええ。すぐ出発するわ」
てことで、アタシたちは鳥ダンジョンの街へ。
◇
「おお! こんなに運んでくれたのか! 助かった!
どこも馬車の確保に難航して、間に合うかどうかヒヤヒヤしてたんだ!」
鳥ダンジョンの街。
冒険者ギルドの支部長は、両手を上げて歓迎してくれた。
「防護マスクとゴーグルだけ20セットしかないけど、いいのかしら?」
他の物資と比べて、明らかにそれだけ数が少ない。
本当に足りるのか心配になって、アタシは聞いてみた。
「問題ない。使える冒険者が20人ぐらいしか居ないからな」
「そもそも何に使うんだ?」
マックスが尋ねた。
「高速飛行するのにマスクとゴーグルは必須よ。
無いと風圧でまともに呼吸もできないし、まぶたがめくれちゃって、ちょっとした小石か何か飛んできた時に眼球が傷つくわ」
「いや、その『高速飛行する』ってのが、冒険者にできるのか?
エノキみたいにドラゴンに乗って飛ぶやつなんて、他に居ないだろ」
「あー……」
そのへんどうなの? と支部長を見ると、にっこり笑ってうなずかれた。
「ドラゴンに乗る冒険者は、ちょっと知らないな。その小さいドラゴンにどうやって乗るのか興味深いところだが……他にも人を乗せて飛べる魔物はいくつか存在する。たとえばヒポグリフとかペガサスとかな。
それと、マスクやゴーグルが必要なのは『飛んでいる間』だけとも限らん。対空攻撃ができる冒険者の目を保護するのは必須なんだ。糞とか毒の鱗粉とか落ちてくるからな」
「鱗粉……なるほど。蝶みたいな魔物もいるのね」
「蝶なんて可愛らしいもんじゃない。あれは蛾だ」
なんとなく、大怪獣と戦う大怪獣の映像が思い出されるわね。
モ〇ラ~や♪ モ〇ラ~♪




