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第19話 牛ダンジョンに挑む準備をしよう

「いらっしゃいませー。何名様ですか?」


「6人よ」


「あちらのテーブル席へどうぞ。

 ご注文がお決まりになりましたらお声がけください」


「大盛り、ネギだく、ギョク。

 あんたたちは何にする?」


 一通り注文を終えて、待っている間に店内を観察。

 新築のようにピッカピカの店内には、時間が良かったのか、他の客は見当たらない。


「はい、お待ちどおさまです。大盛りネギだくギョクのお客様」


「アタシよ。ありがとう」


 馴染み深い牛丼の香りが鼻を刺激する。

 さっさとかき込みたいところだけど、今回の目的は食事じゃあない。

 注文の品が出揃ったところで、アタシは店主に声をかけた。


「バランさんのお兄さんのアドンさんかしら?」


「はい? ええ、そうですが……」


「やっぱり。

 アタシ榎。Aランク冒険者よ。こっちはメンバーのマックスと、従魔のルナ。

 あと今回臨時でご一緒してる別パーティーの面々よ。

 豚ダンジョンの街ではバランさんのサンドイッチ屋にお世話になったわ。バランさんから聞いて来たのだけど、屋台だと聞いてたのにお店を持ったのね。おめでとう」


「それはどうもご贔屓に、ありがとうございます。

 弟は元気にしておりましたか?」


「ええ、それはもう。毎日大繁盛で忙しそうだったわ。

 あちらもすぐにお店を持てるんじゃあないかしら」


「結構なことで。

 開店準備に忙しくて、このところ手紙も出してやれませんでしたので、弟はまだ知らずにいたんですね。今度また手紙を出すことにします」


 店を持ったばかりだったのね。

 それは道理で、聞いていたのと違うはずだわ。


「この街ではこちらにお世話になるでしょうね。

 故郷にも牛丼屋はあったから、よく朝食を食べに行ってたのよね。この遠い異国の地で同じものが食べられるなんて……バランさんの話芸もそうだったけど、あなたたちって本当にアタシの心にぶっ刺さるわね」


「それはどうも、恐れ入ります。

 どうぞうちもご贔屓に願います」


「ええ、よろしく」


 ちょうど他の客が入ってきて、アドンさんはその対応へ。

 ひとまず挨拶はこれで十分といったところね。


「「…………」」


 ガツガツガツガツ……。

 アタシが話してる横で、5人と1匹は牛丼に夢中になっていた。

 アタシもさっさとかき込みましょう。



 ◇



 牛丼屋を出て、冒険者ギルドへ。

 前回豚ダンジョンの街での経験を踏まえて、事前に解体の準備をお願いすることにした。


「豚ダジョンはクリアできたから、牛ダンジョンでもいいところまで行くと思うのだけど、解体場の準備をお願いできるかしら? 手が空いているなら、豚ダンジョンの素材を先に渡しておきたいのだけど」


「あなたたちが、あの……!

 少々お待ちください! 支部長を呼んでまいります!」


 どうも情報が届いていたようで、受付嬢は慌てて席を離れた。

 それから支部長室へ呼ばれて、アタシは同じ事をもう1度言った。

 支部長は少し困ったような顔をして口を開く。


「こっちでもクリアしてくれるんじゃあないかと期待はしているが、ここは天下の牛ダンジョンの街だ。解体場が『手が空いている』なんて事はねぇよ。

 だが、先に声をかけてくれた事には感謝する。解体場の連中の勤務シフトを調整して、増員できるようにしておこう。全く余裕がないわけでもねぇから、豚ダンジョンの素材も少しは引き受けられる。

 とにかく歓迎するぜ。せいぜい暴れてくれよ、英雄殿」


 ニヤッと笑って片手を差し出す支部長。


「任せてちょうだい」


 その手を握り返して、アタシはうなずいた。

 それから解体場へ。オーク伍長からオーク曹長までの素材をお願いしておいた。

 そのあと市場へ繰り出して野菜と調味料を買い込み、これで準備完了。

 その日は宿を取って早めに眠り、明日から牛ダンジョンへ挑むことにした。



 ◇



「さあ行くわよ!」


 翌朝。

 アタシたちは、いよいよ牛ダンジョンへ向かった。

 防壁で囲まれた広場。

 その出入り口たるゲートで入場料を支払って、ゲートをくぐると――


「ああ……こうなってるのね」


 吊橋があった。

 牛ダンジョンの周囲は、広場などではなく、谷のように深く掘られていた。

 空堀というやつだ。

 これで万一のときは吊橋を落としてしまえば、実質的に防衛はそれだけで完了するだろう。


「あわわわわ……」


「ま、ま、毎回ここはよォ……」


「しがみつけ……手がちぎれてもしがみつけ……」


「冗談じゃないわよォーう……!」


 吊橋だからそれなりに揺れる。

 それに、空堀というにはあまりにも深すぎる。よくもまあ、こんなに深く掘ったわね。日本一高いバンジージャンプの橋や、東京タワーの展望台みたいな高さだわ。

 これって、いったん吊橋を落としてしまったら、どうやって架け直すのかしら?

 高いところが苦手なSランクの4人は、手すりのロープにしがみつくようにしてプルプル震えながら渡っていった。


「高ーい! 楽しー!」


「マックス。わざと揺らすのは、やめて差し上げなさい」

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