第13話 成果を確認しよう
オーク皇帝を倒すと、天井から光の粒が降り注いだ。
まるでスポットライトね。
その照らされた先――床に宝箱が現れた。
いえ、現れたというより、まるで最初からそこにあったかのように、気付いたときにはすでに存在していたわ。
「出たぞ! クリア報酬だ!」
マックスが期待を込めて宝箱を開けた。
そこにあったのは、雫のような形の何か。
見ただけでは何に使うのか、どう使うのかも分からないわね。
「何かしら、これ?」
「……さあ?」
「どこでどう調べればいいのかしらね?」
「……さあ?」
「ルナは何か分かる?」
「あの……その……さっぱり分かりません。すみません」
「……クリア報酬が何の役にも立たない謎の塊?
そんな事あるのかしら?」
「ないと思う。
……思うが、どう役立てればいいのかさっぱりだ」
「じゃあ、とりあえず保管して、何か分かるまで待ちましょうか」
ひとまず「雫型の何か」を収納魔法へ。
あとオーク皇帝の死体も収納魔法へ。
「ちょっとした疑問だけど、上位の魔物ほど美味しいとかあるのかしら?」
「概ねその傾向はあるぞ。
好き嫌いは人の好みによるが、上位の魔物ほど脂の乗りがよく、風味豊かで、コクがある。つまり美味い」
「サッパリした味が好きな人にはちょっと、って事ね。
それなら楽しみだわ」
「うむ。オーク皇帝がどれほどの味なのか……じゅるり」
「あら? 初挑戦?」
やたら詳しいから、すでに経験があるのかと思ったわ。
「うむ。過去にも挑戦したことがあるが、そのときはオーク大佐まで倒して撤退した。オーク少将を相手に突き進むのは無理だったからな」
誰でも最初から強いわけではない、ってことね。
「努力したのね」
「そうだな」
アタシたちは帰ることにした。
とりあえずのクリア報酬は、クリア報酬が入っていた「宝箱」ね。
黄金と宝石で装飾されたそれは、それ自体がひとつの財宝だわ。
◇
「おめでとうございます!」
冒険者ギルド。
クリア報酬の宝箱を見せて成果を報告すると、受付嬢は驚きつつも祝福してくれた。
「ダンジョンをクリアするなんて、数百年ぶりの快挙です!
これは支部長に報告しなくては! 支部長! 支部長ー!」
受付嬢は奥の部屋へ。
それから間もなく支部長が出てきて、アタシたちは別室へ。
根掘り葉掘り聞かれたわ。
ダンジョンのどの階層に何が出るとか、その弱点だの、攻撃パターンだの……。
まあ、全部「知らない」で通したけどね。実際知らないし。
「そんな事があるか?」
「そう言われても、見かけるなりマックスが突っ込んでワンパンだもの。
相手がどんな動きをするかなんて、見る暇もないわよ」
「凄いことだが、それはそれで困ったな……」
「参考にならなくてごめんなさいね」
ワンパンで倒せる程度の魔物なのか、と勘違いされて無謀な挑戦をするバカが出てしまいかねない。
相手の強さを察知する能力なんて、野良犬でも持っているのだけど……残念ながら人間はそのあたり麻痺してるアホがけっこう居るのよね。
まあ、そういうアホは社会不適合なことが多いから、居ないほうが風通しがよくなるのだけど。そうも言えないわよね、倫理的に。
「それと、大量に解体をお願いしたいのだけど大丈夫かしら?」
「どのぐらいだ?」
「オークとその上位種いろいろ詰め合わせね。
少なくとも100体。下はただのオークから、上はオーク皇帝まであるわよ」
「総出でかかっても、1ヶ月はかかるぞ。
実際のところ、総出でかかるのは無理だが」
「他の冒険者の持ち込み分もあるものね。無理もないわ」
「理解してくれて助かる。
全部終わるまでに3ヶ月は見てくれ」
「アタシたちがこの街に滞在するのは1週間が限度だわ。
先を急ぐわけでもないけど、さすがに豚肉ばかりじゃあ飽きるもの。
解体は、できるだけの量でいいわ」
「ほかは腐らせる気か? それはもったいないぞ」
「収納魔法があるから大丈夫よ。
そのためにこの子がいるもの」
アタシはルナを撫でて言った。
実際はルナではなくアタシが収納しているのだけど、それは言わない。便利すぎて利用価値が高くなりすぎるもの。いろんな勢力がこぞってアタシを取り込もうとするでしょうね。面倒くさいわ。
その点ドラゴンが相手なら、小さいとはいえ機嫌を損ねたらどうなるか分からない怖さがある。もとのサイズに戻せばなおさらね。
猫サイズとはいえドラゴン。支部長は「そんな事もできるか」と納得した。
「私たちがほしいのは肉だけだ。
ほかは買い取りに出すから、好きにするといい」
マックスが言った。
ソファーに深く腰掛けて、その目はもうこれから食べたい豚肉料理を見ているようね。
「ありがたいんだか、ありがたくないんだか……。
豚ダンジョンの街としては、微妙だな」
豚肉こそが特産品だものね。
上位種の素材はいい稼ぎになるとは思うけど、素直に喜ぶにはちょっとね。
「とにかく解体場へ素材を出してもらおう」
支部長の案内で、解体場へ。
冒険者ギルドの建物が大きいのは、この解体場があるからだ。
そこで1週間分の素材を引き渡した。
「査定には明日までかかる。
買取額の支払いは、明日また来てくれ」
そういうことになった。
それじゃあ、これから1週間、豚ダンジョンの街で食べ歩きツアーといきましょうか。




