声と少年
世界中でただ1人だけ15歳から19歳まで月の声を聞くことができる。
その声はどんな音よりも美しく、澄みわたっているという。
しかし、それを聞いた人間はそれを空耳と間違えたり、耳がおかしくなったといって、聞こえないようにしている。
だか、その声を聞けたのなら、聞こえないフリをしない方がいい。月は独り輝いていて、とても寂しいものだから。
ある満月の晩、とある一軒家でパーティーが開かれていた。
「誕生日おめでとう」
テーブルの周りにいる人達は笑顔で少年を祝っている。
少年の名前は日奈多。今日で、15歳になる。
日奈多は皆にお礼を言って、ろうそくの火を吹き消す。
そして、ディナーを食べ、その後のケーキを食べて日奈多はベランダへ出る。
「退屈だな」
日奈多は1人溢した。
それは、ある意味で本心だった。毎年毎年誕生日でやる事は同じ、ドラマも何にもない唯のパーティー。日奈多はそれにもう飽きていた。
ーー何か起きてくれないかなーー
そう思った時、不意に声が聞こえた。
いや、正式には歌といえばよかったのだろうか。どちらにせよ、その声はあらゆる音よりも美しく、澄んで、そして切なく聞こえた。
ーー聞こえているのは貴方だけ、私の歌を聞いていてーー
日奈多は辺りを見渡した。しかし、日奈多の周りには誰もいない。それでも、日奈多の耳にはしっかりと聞こえていた。
ーーいつか、貴方と歌いたい。だからしっかりと聞いていてーー
満月の空の下、少年の耳に聞こえた声は、少年を大きくさせる一歩を踏み出させる。
初めまして、線律 春也です。
詩や小説とかがんばって書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。